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ラグビー コラム 2020年9月7日

【ハイライト動画あり】ラグビー王国・超一流選手の競演 オールブラックスのトライアルマッチは劇的結末 南島の新星がスーパープレーで決めた!

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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インターアイランドマッチ 北島vs.南島

コロナ禍で無観客試合となっても、ニュージーランドの精鋭たちの魅せるプレーは健在だった。何気なくスペースに放たれたパスがつながり、あっというまにトライが生れたかと思えば、互いに一歩も引かない激しい肉弾戦もあり、思わず声の出るスーパープレーが続出する。8年ぶりに復活した伝統の一戦は、同国代表オールブラックスの選考試合だったのだが、選手たちがラグビーをする喜びを表現し、互いにリスペクトする者同士の清々しい戦いになった。

9月5日、ニュージーランド北島ウェリントン(スカイスタジアム)にて、午後7時10分(現地時間)キックオフ。南島SOリッチー・モウンガのキックをキャッチした北島WTBケイリブ・クラークが一気に南島陣へ入る快走を見せ、いきなりオールブラックス入りを猛アピール。勢いに乗る北島は、前半3分、ラインアウトからの連続攻撃で、SOボーデン・バレットがインゴールへグラバーキック(地面を転がるキック)、走り込んだCTBリーコ・イオアネが跳ね上がったボールをキャッチしてそのまま先制トライをあげる。

この時、インゴール内でタックルに入った南島FBジョーディー・バレットに一瞬怒りの表情を見せたリーコだが、すぐに笑顔でバレットの頭を撫でた。7分、南島もPRネポ・ラウララが密集サイドの隙をついてトライし、7-7の同点。ジョーディー・バレットがPGを追加して、10-7となった18分、北島の圧巻のトライが生まれた。

南島陣中盤の右ラインアウトからの連続攻撃で左方向へ攻め、左タッチライン際をWTBケイリブ・クラークが抜け出す。内側にサポートしたリーコがパスを受け、さらに右へパス。パスを受けたのは、SHのTJ・ペレナラだ。ペレナラはタッチライン側にステップを切ってディフェンダーを引き付けてスペースを作り、そこに走り込んだFBダミアン・マッケンジーにパス。鮮やかなトライで、10-14と逆転する。

その後も、北島のFLアーディー・サヴェア、南島のLOサム・ホワイトロックらオールブラックスの経験豊富な選手たちが実力を見せつけ、まだオールブラックスのキャップのない北島のFLアキラ・イオアネ、NO8ホスキンス・ソトゥトゥ、南島のFLトム・クリスティー、NO8トム・サンダースらがオフロードパスやジャッカルを決めて代表入りをアピール。映像で試合を見る世界中のラグビーファンの熱狂が目に見えるような好プレーが次々に展開された。

前半31分、ジョーディー・バレットのトライで、南島が17-14と再び逆転するも、後半6分、ソトゥトゥのオフロードパスをマッケンジーがついないで、交代出場のSHアーロン・スミスがトライ。17-21と逆転する。激しい攻防が続いた17分、北島の連続攻撃でパスが乱れ、ハーフウェイライン付近で、クラークがタッチラインの外に出そうなボールをなんとかフィールドに戻す。攻撃を継続させるためのプレーだったが、ここに走り込んだのは、南島のWTBウィル・ジョーダンだった。あっという間に約50mを駆け抜ける独走トライ。スーパーラグビー「アオテアロア」のトライ王が得点への鋭い嗅覚を見せつけた。

もう1トライを加えた南島が、31-21とリードを広げると、北島もリーコ、HOアッシュ・ディクソンがトライを重ねて、31-35と再びリードを奪う。後半33分には南島のカウンターアタックのボールをターンオーバーした北島が自陣から次々に難しいパスをつなぎ、南島陣深く攻め込むも、ここは南島LOサム・ホワイトロックがジャッカル。反則を誘ってピンチを防いだ。白熱の攻防は観戦者を十分に楽しませていたが、最後にもう一つ、スーパープレーが待っていた。

試合終了間際のことだ。南島がチャンスをつかみ、北島ゴール直前のラインアウトから攻め、北島の反則を誘う。このまま南島の攻撃が成就すれば笛はならず、途切れた場合は南島にPKが与えられる場面だ。そんなアドバンテージが出ている中で、南島SOジョシュ・イオアネが右のタッチライン方向へ思い切ってキックパス。これに走り込んだジョーダンは、北島のミッチェル・ハントと競り合いながら両手を伸ばしてボールをキャッチ。そのまま決勝トライをあげた。ゴールも決まって、38-35。ハイレベルの戦いは劇的決着で終了した。

勝った南島には、この試合のために作られたマオリの伝説を象ったトロフィー、88年間行方不明になりながら、直前に発見された「Loving cup」が贈られた。その後、両チームが肩を組んで円陣になり健闘を称え合う。一週間の延期、場所の変更、無観客試合への変更など、Covid-19に翻弄されながらも試合をやり遂げた満足感、感謝もあっただろう。同国のラグビー関係者ファンの結束を強め、感染症との戦いに対する決意を表明する円陣にも見えた。

オールブラックス

翌朝、オールブラックス35名が発表になった。初選出は7名。怪我などでこの試合に出ていなかった選手も含まれている。PRアレックス・ホッジマン(ブルーズ)、LOトゥポウ・ヴァアイ(チーフス)、LOクイントン・ストレンジ(クルセイダーズ)、FLカレン・グレイス(クルセイダーズ)、NO8ホスキンス・ソトゥトゥ(ブルーズ)、WTBケイリブ・クラーク(ブルーズ)、WTBウィル・ジョーダン(クルセイダーズ)。また、オールブラックスのキャップは保持していないが、代表経験のあるHOアサフォ・アウムア(ハリケーンズ)、FLアキラ・イオアネ(ブルーズ)も選ばれた。今回の試合でアピールしたFLトム・クリスティー、NO8トム・サンダースらが選考から漏れ、チーフスのボールハンター、FLラクラン・ボーシャーが試合に出るチャンスすら与えられなかったことに、ニュージーランドの選手層の分厚さを痛感した人は多かっただろう。

【ハイライト】ニュージーランドラグビー インターアイランドマッチ2020 【オールブラックス選考試合!】

北島 vs. 南島

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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