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ラグビー コラム 2020年8月11日

【ハイライト動画あり】コロナ禍でも強さ変わらず スーパーラグビー王者クルセイダーズ、 NZ版「アオテアロア」でも優勝

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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クルセイダーズは、25年の歴史を刻むスーパーラグビーで10度王者となり、今年は4連覇がかかっていた。しかし、Covid-19の影響でスーパーラグビー2020は中止。7月に入って感染者数がいったんゼロになったニュージーランドでは、国内5チームだけの大会「アオテアロア」が始まった。観客も制限なく入場できる戦いは世界のラグビー界の希望となる。7月13日の開幕戦以降、5チームによるホーム&アウェイの総当たり戦は質の高い攻防が繰り広げられた。そして、8月9日、クルセイダーズは、第9節で勝てば優勝という大一番を迎える。

相手は同じ南島の好敵手ハイランダーズ。前売りチケットは売り切れ、本拠地クライストチャーチのオレンジセオリースタジアムには、17,541人の観客が集った。クルセイダーズは次週、アウェイでの最終戦(対ブルーズ)を残しており、敗れても優勝の可能性がなくなるわけではない。しかし、前節はハリケーンズに敗れ、ホームでの連敗は許されない。ホームのファンの前でトロフィーを掲げることが至上命令だった。

気温13度、快晴。ハイランダーズのキックオフで試合は始まった。さっそく、クルセイダーズが自陣からボールをつなぐ。何度かの連続攻撃のあと、22mライン付近でハイランダーズがクルセイダーズボールのラックを乗り越えてボールを奪った。右タッチライン際をハイランダーズWTBジョシュ・マッケイが前進。ゴールライン迫ったラックから、SHアーロン・スミスは左横に走り込んできたCTBパテレシオ・トムキンソンではなく、その外側に走り込んだFLシャノン・フリゼルにパスを送る。開始1分にも満たない先制トライだった。

クルセイダーズがトライを返したのは前半13分だった。自陣10mライン左のラインアウトからの連続攻撃で、最後はSHブリン・ホールが2選手の前を通す、素早いパスを右タッチライン際のWTBセブ・リースに送った。大きくゲインしたリースは、素早くサポートに走り込んだホールにパスを出し、WTBジョージ・ブリッジがつないで、SOリッチー・モウンガがトライをあげた。ゴールも決まって7-7の同点。

その後、一進一退の攻防が続いたが、クルセイダーズの反則がやや多くなる。前半22分、クルセイダーズのディフェンスラインのオフサイドで得たPKから、ハイランダーズのSOジョシュ・イオアネがPGを決める。2分後、今度はクルセイダーズLOサム・ホワイトロックのパスをWTBジョナ・ナレキがインターセプト。約70m、追いすがるリースを振り切って、左コーナーに飛び込み、7-17とリードを広げた。しかし、クルセイダーズも粘り強いディフェンスで踏ん張り、モウンガが2PGを決めて、13-17とする。

【ハイライト】 スーパーラグビー2020 アオテアロア第9節

クルセイダーズ vs. ハイランダーズ

後半はクルセイダーズが攻める時間が多くなった。5分、モウンガが個人技で抜け出し、最後はSHブリン・ホールがゴールラインに迫るが、ハイランダーズのWTBマッケイがあきらめずにトライ寸前でホールが持つボールを叩き、ノックオンを誘う。芝を叩いて悔しがるホール。13分には、ハイランダーズCTBマイケル・コリンズがトライし、13-22と点差が広がる。痛恨のミスと失トライに、スタジアムには重苦しい空気が漂った。

しかし、後半20分から抜群の得点力を発揮してきたクルセイダーズはこの日も健在だった。交代出場のFLシオネ・ハヴィリがディフェンス突破を連発してチームの勢いを引き出すと、後半21分、CTBジャック・グッドヒューが3人のディフェンダーを引きつけてオフロードパス。FBウィル・ジョーダン、ブリッジにパスがわたってトライ。ゴールも決まり、20-22と2点差に迫る。3分後、交代出場のLOルーク・ロマノが自陣からの攻撃ラインに参加してタックルされつつモウンガに片手でパスを出すと、ファンブルしながらボールを確保したモウンガが一気に相手陣へ。ブリッジのトライを導いた。今季何度も見てきた逆転劇で、25-22。34分には、CTBブレンダン・エノーがトライを追加して、勝利を決定づけた。この結果、クルセイダーズは、6勝1敗、勝ち点28とし、2位のブルーズ(5勝2敗、勝ち点22)に6点差をつけ、8月16日の最終戦を待たず優勝が確定した。

「最後の20分は消耗しきっていたが、よく巻き返してくれた。大型選手数名が力を発揮し、ディフェンスで働き、相手陣に攻め込む機会を作り出した事を特に評価している」(スコット・ロバートソンヘッドコーチ)。我慢強くチャンスを待ち、相手の運動量が落ちてくる後半20分過ぎにとどめを刺す。戦法の理解度が高く、シンプルにボールを動かす戦術を正確に遂行できるクルセイダーズだからこその勝利だった。歓喜に包まれるスタジアム。ピッチに登場したたくさんのラグビーキッズに囲まれ、コーディー・テイラーキャプテンは優勝トロフィーを天高くさし上げた。

アオテアロアは、8月15日、16日、最終節が行われる。クルセイダーズはブルーズと対戦。有終の美を飾ることができるのか、それともブルーズがホームのイーデンパークで意地を見せるのだろうか。


文:村上晃一

【クルセイダーズ優勝セレモニー】

スーパーラグビー2020アオテアロア勝利のハカ

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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