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「スーパーラグビーAU」首位攻防戦は、オーストラリアの覇権をめぐって互いの意地がぶつかり合い、激しい肉弾戦になった。新型コロナウイルス感染症は現在、オーストラリアでも拡大傾向にある。比較的感染者の少ないクインズランド州はシドニーやその周辺地域への移動を制限。クインズランドのブリスベンが本拠地のレッズの選手たちは特別な許可を得てキャンベラ入りしていた。そのうえ、キャンベラは気温6度で、ブリスベンとの寒暖差は10度ほどあり、レッズにとってはタフな環境での戦いだった。コロナ禍での制限で観客は1500人。ホームのブランビーズはスーパーラグビー25周年を記念した先住民族に敬意を示すデザインのジャージーをまとっていた。
キャンベラでの6年ぶりの勝利を狙うレッズは、立ち上がりから闘志あふれるタックルを連発し、ボール争奪戦への執拗なプレッシャーをかけ続けた。しかし、その闘志が裏目に出てハイタックルなどの反則を犯してしまう。前半5分、33分と、ブランビーズはレッズの反則で得たPKからタッチキックでゴール前のラインアウトを獲得。モールを押し込んでゴールラインを越えるというパターンでHOフォラウ・ファインガが2トライし、SOベイリー・キュンツェルが2本ともゴールを決めて、14-0とリードする。
飽くなきタックルで対抗するレッズは、前半38分、ようやくSOジェームズ・オコナーがPGを決めて14-3と差を詰める。その後のブランビーズの猛攻をしのいで逆襲し、自陣から一気につないで交代出場のWTBジョーダン・ペタイヤがトライ。3点差に詰めて前半終了かと思いきや、TMO(映像判定)にてトライはキャンセル。逆襲を仕掛ける直前、ブランビーズWTBトム・ライトに対して、レッズのLOルカーン・サラカイア=ロトのハイタックルがあったという判定だった。ライトがノックオンした後だっただけに痛恨の反則だった。
後半2分、レッズはペタイヤのオフロードパスでNO8ハリー・ウィルソンがトライ。14-10とすると、規律を保って反則を減らし、5分、オコナーの内返しのパスを走り込んでキャッチしたWTBフィリポ・ダウングヌが抜け出し、最後はFLアンガス・スコットヤングがトライし、14-17と逆転。10分にオコナーがPGを追加して、14-20とする。
ここからは互いにチャンスを反則やミスでつぶす展開が続いた。スコアが動いたのは、後半35分のことだった。それまで90%を超えるタックル成功率だったレッズの動きがやや鈍る。味方のノックオンしたボールを前にいたオコナーが拾ってしまうオフサイドでブランビーズにPKを与えると、ブランビーズが伝家の宝刀を抜いた。PKからタッチキック、ラインアウトからもモールでトライをきめ、判で押したような3トライ目をあげたのだ。交代出場のFBマッケンジー・ハンセンのゴールは決まらず、19-20の1点差となる。
残り時間は3分ほど。ブランビーズが攻め込むも、レッズの交代出場のFLフレイザー・マクレイトが値千金のジャッカル。反則を誘い、これでほぼ勝敗は決したかと思いきや、レッズがいったんキープしたボールをブランビーズが再獲得して最後の攻撃に出る。PGでも逆転される点差の中で絶対に反則を避けなくてはならないレッズだったが、マクレイトが勢い余ってボール争奪戦で反則を犯してしまう。ボールを出そうとしたブランビーズのSHアイザック・ファインズを倒してしまう反則だった。ヒーローになるはずだったマクレイトの表情が切ない。
レッズの選手たちは天を仰いだ。残り時間はない。40m以上あるPGが入るかどうかで勝敗は決する。重要なPGはトライ後のゴールを外したばかりのハンセンに託された。直前に蹴っていたのが良かったのかもしれない。ハンセンが思い切って足を振り抜くと、ボールはまっすぐゴールポストの間に吸い込まれていった。歓喜のブランビーズ。スコアは、22-20。ブランビーズは4戦全勝(勝ち点18)となり、レッズは今季初黒星(2勝1分1敗、勝ち点11)。キャンベラでの6年ぶりの勝利も手のひらからこぼれ落ちた。
文:村上晃一
【ハイライト】スーパーラグビー2020 オーストラリア 第5節
ブランビーズ vs. レッズ
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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