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ラグビー コラム 2020年8月7日

【 実況!台所のアスリート】元ブリリアンのコージ・トクダ、 愛するアメフト普及のため現役復帰。 体重増の秘策は「夜のヘルシー丼」

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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お笑い芸人のブルゾンちえみとユニットを組んで活動した元ブリリアンのコージことコージ・トクダ(32)が、アメリカンフットボールのXリーグに所属する「みらいふ福岡SUNS(サンズ)」に加入した。発表されたのは今年3月のこと。コージ・トクダは高校、大学でアメリカンフットボールに打ち込み、法政大学時代は大学日本一決定戦「甲子園ボウル」に3度出場した。なぜ復帰するのか。10年のブランクは問題ないのか。昨年のラグビーワールドカップ前に放送されたドラマ「ノーサイド・ゲーム」への出演が彼の心に変化をもたらしたのか。さまざまな疑問に答えてくれた。今回、コージ・トクダが腕を振るった料理「やわらかむね肉のヘルシー丼」はアメフト復帰の心強い味方でもある。


──昨年のノーサイド・ゲーム出演、ユニットの解散、そしてアメリカンフットボール復帰。これらは計画的に進んだことなのですか。

「計画的ではありません。ただ、30歳を越えたあたりからアメリカンフットボールをやりたいという気持ちはずっと持っていました」

──やり残したことがあるということですか。

「アメフトに対して何かできることがあるのではないかと思っていて、最後にできることが復帰だったのです。復帰するとなれば、年齢的に今がデッドラインだと感じたので」

──ノーサイド・ゲームへの出演が決まった経緯を教えていただけますか。

「オーディションを受ける人を大々的に募集していました。ラグビーの経験者や、それに似たスポーツの経験者を求めますという条件があったので、オーディションを受けました」

──それまでラグビーを見たことはあったのですか。

「2015年のラグビーワールドカップで日本代表が南アフリカ代表に勝ったのを見たくらいです。アメフトに打ち込んでいるときは、ラグビーをライバル的に見ていました。よくある話で、『アメフトをやっています』と話すと、10秒後には『ラグビーってどんなスポーツなんですか』と聞かれる。いつかは、アメフトはアメフトとして認識されるようになってほしいと思っていました。最近は『ラグビーじゃないほうね』って言われる。それも悔しいです」

──ノーサイド・ゲームに出て刺激を受けたことはありましたか。

「アメフト復帰には、いくつかの要因があるのですが、ノーサイド・ゲームに出演したことは最初のきっかけかもしれません。あのドラマに出て、同じマイナースポーツで汗を流してきた仲間がどんと先に行ってしまって置いてきぼりをくらった感覚になりました。もう一つは、ラグビーの方々が積み重ねてきた努力を目の当たりにしたということです。アメフトもラグビーのように人気を出せるのではないかという希望も見えました」

──スポーツの「力(ちから)」を感じる部分もありましたか。

「僕はラグビーの深い内容まで知らなかったのですが、ドラマの中でみんなに教えてもらってプレーしてみると、自分が犠牲になっても次の選手にボールを渡して前に出てもらう。そういう点は日本人に向いていると思いました。みんな家族なんですよね。それはアメフト以上だと感じました」

──仲良くなった選手もいたようですね。

「全員と仲良くなりました。現役のラグビー選手でありながら演技をしている人も数名いたし、浜畑譲役をした廣瀬俊朗さん、キャプテン役の高橋光臣さん、落語家の林家たま平などです。僕が『アメフトを始めます』と宣言した時には、廣瀬さんがTwitterで『応援しているよ』というコメントをくれました。お礼を伝えたら、『なんでもするから、なんでも言ってな』とメッセージが来た。めちゃくちゃ嬉しかったし、かっこいいと思いました。ラグビーとは違うスポーツなのに、それでも仲間がやるなら応援するということですから。心の支えになりました。ラグビーのノーサイドの精神とか、敵味方関係なく観客席に座るなど学ぶところはいっぱいありました。僕自身に身に着いたことが一番大きかったかもしれません。アメフトも良い部分は取り入れたらいいと思っています」

──ノーサイド・ゲームでは、ラグビートップリーグのパナソニックワイルドナイツの現役選手とぶつかりあっていましたね。

「ラグビー未経験者だから力は抜いてくれたかもしれません。僕は本気でした。肩はあざだらけになりましたね。でも、気持ちよかったです。芯に入ればきれいに倒れてくれる。その感覚は経験しました。どんな大きい人も軽く倒せるポイントがある。僕はタックルが大好きなんです」

実況!台所のアスリート ~コージ・トクダ~

社会人アメリカンフットボールXリーグ ハイライト

──今は身体づくりに専念されているようですね。

「2月にアメフト復帰を宣言したのですが、体重が8~9㎏増えています。コンタクトをやり始めるのは8月からの予定ですが、それまでの下地作りは完璧にしておきたいと思います。めちゃくちゃ食べて、めちゃくちゃ体動かして、という繰り返しです」

──今回の「夜のアスリート飯」。あの料理は何か見本があるのですか。

「イメージは、すき家の『牛丼ライト』です。ダイエットの時によく食べていました。御飯の代わりに豆腐が一丁入っていて、その上にキャベツ、牛肉が乗っている。それを鶏肉バージョンにしました。イタリアンのお店でアルバイトしていたことがあるので、調理や包丁さばきなどはそこで覚えました」

──鶏肉を柔らかくする方法は自分で工夫したのですか。

「家の近くでよく行っているご飯屋さんの鶏のむね肉がめちゃくちゃ柔らかいんです。どうしてこんなに柔らかくできるのかと思って、シェフに聞いてみました。すると、とにかく時間をかけてゆっくりと煮るということでした。やってみたら本当に柔らかくなりました。すぐに食べたくなるけど、少し待てば美味しい物が待っているということなんですよ」

──炭水化物を抜いて、増量できるのですか。

「夜ご飯で炭水化物をしっかり摂ったうえでの夜食ですから。炭水化物を重ねるのは身体に負荷がかかります。寝る前は炭水化物より、たんぱく質を摂りたいという料理です」

──Xリーグは10月開幕予定です。それまでに体重を94kgにしたいということですね。

「大学時代、一番動けたときが、91、92kgくらいでした。社会人はさらに体が大きいので、94、95kgくらいあったほうがいいのかな、と。僕はディフェンスエンド(DE)というポジションで、体重は重いほど良いのですが、走れないと意味がない。トレーナーの人とは、そのぎりぎりまで行こうと話しています」

──DEは、ディフェンスのときにフィールドに出てくるのですね。

「そうです。ラグビーのドラマでトライの気持ち良さを覚えてしまって、アメフトでもタッチダウンしたいと思ったのですが、やっぱり慣れているポジションが良いですから」

──アメフトをやり始めたきっかけを教えてください。

「僕は中学まで野球をやっていて、高校では心機一転ギター部に入ろうと思ったんです。そういうのがあるって聞いていたので。ところが、どこの教室を探しても、ギター部が見つからなかった。毎回、帰ろうと思うと、アメフト部の大きな人に『キャッチボールだけやって行こうぜ』って声をかけらる。そのうち、アメフトやってみるか、力比べ好きだし、腕相撲も好きだからという気持ちになっていきました。なかなか出会わないスポーツでしょう? 大学と合わせて7年やりました」

──アメフトの面白さを教えてください。

「ラグビーはみんなボールを中心に見ますよね。ボールを持った人にしかタックルできないから。アメフトは、ボールがないところが面白いです。ボールがないところでも、本気で一対一の勝負をしている。どこを見ても美味しいスポーツだと思います。アメフト経験者はボールを見ずに、自分の興味のあるところだけを見て楽しんでいますね」

──Xリーグでのコージさんの目標を聞かせてください。

「お客さんを満席にしたいのですが、無観客で開催となれば、試合中、どう活躍するかということになりますよね。僕らDEの一番大きなプレーは、クオーターバック(QB)サックです。QBがボールを持っているときにタックルする。それをかまして、あいつ復活したと思われたい。1試合目がめちゃくちゃ大事ですから、何かの見出しになるようなスーパープレーをかましたいです。『復帰したらしいですね』で終わらせたら僕の負けです」

──10年のブランクがありますが、大丈夫ですか。

「みんなに無理だと言われます。だからこそ、かましたい。トレーニングした感覚だけでいくと、まだ全然いけると思っています。実際に人と対峙した時に脳が反応するかどうかという不安はありますが、昔より探求心がある。コンスタントに良いプレーができると思います」

──その先の大きな目標はありますか。

「2、3年、35歳くらいまでプレーしたいと思っています。いま、チームはX1 AREAというカテゴリーに属していて、その上にX1 SUPERがあります。そこにチームを上げて、決勝戦は東京ドームで行われますから、そこでプレーしたいですね」

──引退後のことは考えていますか。

「俳優の仕事で生きて行くイメージをしています。アメフトと並行して俳優の活動もしますが、いまはアメフトを一番大事に考えています」

──どんな役者さんを目指しているのですか。

「アスリート系で、アメリカで言えばドウェイン・ジョンソンですね。日本の俳優さんは綺麗な人が多いでしょう? 一人くらいデカいのがいてもいいと思っています」

──最後に福岡のチームを選んだ理由を聞かせてください。

「受け入れてくれるチームはいくつかありました。でも、僕の最終目標はアメフト界を盛り上げることです。既存の強いチームは、いろんなものが構築されています。福岡は監督も若く、新しいことをやっていこうという理念だったのが大きかった。とにかく、アメフトを盛り上げたいので、頑張ります!」


文:村上晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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