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【ハイライト動画あり】王者クルセイダーズ、全勝対決を制す。 ブルーズの規律の乱れを見逃さず、勝負どころで加速。 リッチー・モウンガは、2ゴール、4PGを完璧に決めた。
村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一7月11日(土)、ニュージーランド南島クライストチャーチのオレンジセオリー・スタジアムは、好勝負の予感に胸躍らせる観客で埋め尽くされた。NZ版スーパーラグビー「アオテアロア」第5節に実現した宿命のライバルの全勝対決だった。互いに3連勝も、クルセイダーズはホームゲームで2016年から35戦無敗(1引き分けあり)、ブルーズにも11連勝中だ。しかし、今季のブルーズはかつてクルセイダーズでプレーしたレオン・マクドナルドヘッドコーチ(HC)の下、攻守に組織化された戦いを続けている。ブルーズ入りしたダン・カーターが古巣との対戦に出場することはなかったが、それでも同国代表オールブラックスの精鋭を揃えた両チームの戦いに期待感はふくらんだ。
午後7時5分(日本時間:午後4時5分)、クルセイダーズSOリッチー・モウンガのキックオフで試合は始まった。前半5分、ブルーズはゴール前のスクラムから注目のNO8ホスキンス・ソトゥトゥが単独のサイドアタックでインゴールに入る。しかし、ここはクルセイダーズのディフェンダーが複数でボールの下に手を入れてトライを防いだ。10分、再び攻め込んだブルーズは、FW陣の連続攻撃でディフェンスを集め、最後はSOオテレ・ブラックが右タッチライン際で待っていたWTBマーク・テレアにロングパスを送ってトライを演出した。
先制トライをあげたテレアは、立ち上がりから素早く前に出るタックルを連発してクルセイダーズのチャンスの芽を摘んだ。ブルーズのプレッシャーに苦しむクルセイダーズは、モウンガがPKからのタッチキックをミスするなど、らしくない反則、ミスが多かった。それでも前半は2PGを返して、6-7と1点差で折り返す。
後半も先にスコアしたのはブルーズ。5分、SOブラックがPGを決めて、スコアは6-10となる。もどかしい展開でホームのファンを静かにさせていたクルセイダーズが勝負強さを発揮したのはここからだった。9分、モウンガのPGで9-10とすると、WTBセヴ・リースに代わって、今季好調のウィル・ジョーダンを投入。12分、ゴールラインを背負ったスクラムで反則をとられ、一瞬動きを止めた隙に速攻を受け、ブルーズのCTBリーコ・イオアネにトライを奪われてしまう。だが、このトライがクルセイダーズに闘志に火をつけた。
9-15とされたトライ後のゴールキックをCTBブレンドン・エノーがチャージして追加点を許さない。直後のキックオフではモウンガが10mラインにようやく届くようなキックを転がし、自ら確保して攻め込む。トライには至らなかったが、この失点後の一連のプレーが流れを変えた。
後半20分、ブルーズのテレアが激しく前に出てくると、モウンガがパスのタイミングを遅らせ、テレアの背中越しにパス。タッチライン際でボールをキャッチしたWTBジョージ・ブリッジはタックルをかわしながら前に出ると、右方向へ長いリターンパス。これをサポートした交代出場のSHミッチェル・ドラモンドがキャッチしてインゴールに飛び込んだ。ゴールも決まって、16-15とついに逆転する。さらにクルセイダーズはペースアップし、25分、モウンガがPGを追加して19-15とした。
仕上げは35分だった。ブルーズのゴール前で右に左に大きくボールを動かし、脳震とうのチェックでいったん外に出て戻ってきたジョーダンが今大会5つ目のトライをあげる。ブルーズは足が止まり、最後はディフェンスに立ち遅れて、ジョーダンの走るコースを空けてしまった。クルセイダーズは、ブルーズのチャンスメーカー、ボーデン・バレットに仕事をさせず、我慢の末、一気に畳みかけた。すべての選手がそのタイミングを共有しているようだった。
最終スコアは、26-15。SOリッチー・モウンガは6回のプレースキックを100%成功させただけではなく、ボールを持って12回突進し、8回のディフェンス突破で62mをゲイン。勝利に大きく貢献した。ものの見事な逆転勝利で4連勝。このチームに黒星をつけるのは至難の業だ。クルセイダーズは、次節はお休み。ブルーズは、ウェリントンに乗り込み、ボーデン・バレットが昨季までプレーしたハリケーンズと対戦する。クルセイダーズとブルーズの再戦は、アオテアロア最終戦(8月16日、オークランド・イーデンパーク)だ。果たして、その試合は優勝決定戦になるのだろうか。
文:村上晃一
【ハイライト】 スーパーラグビー2020 アオテアロア第5節
クルセイダーズ vs. ブルーズ
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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