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ニュージーランド(NZ)版スーパーラグビー「アオテアロア」は2週目に入り、開幕週は試合がなった王者クルセイダーズが6月21日、ウェリントンのスカイスタジアムでハリケーンズとの初戦に臨んだ。3年連続でスーパーラグビーを制し、今年も新型コロナウイルスで中断されるまではNZカンファレンスの首位。その質の高いプレーは少しも色あせていなかった。キャプテンのスコット・バレットは怪我で欠場したが、理詰めの攻めで5トライを奪い、39-25で快勝したのだ。
先制トライはハリケーンズボールのラインアウトから始まった。クルセイダーズ陣中盤のラインアウトのスローイングが乱れると、このボールをクルセイダーズが確保。左に右にボールを動かし、PRジョー・ムーディーがディフェンスを突破。サポートしたSOリッチー・モウンガがタックルされる寸前にパス。パスは後ろに流れていったんは地面に落ちたが、FLビリー・ハーモンが難なく拾い上げ、FLカレン・グレイス、WTBセヴ・リースとつなぎながら一気にハリケーンズ陣深く攻め込み、右タッチライン沿いのリースから内側にサポートしていたHOコーディー・テイラーにパスが回る。
クルセイダーズのサポートは分厚く、テイラーは左にも右にもパスができる状況。ディフェンダーの動きを見ながら再びリースにパスを送ると、リースは快足を飛ばしてハリケーンズのTJ・ペレナラを振り切り、右コーナーに飛び込んだ。キックオフから約1分の早業トライ。相手ボールを奪っての攻撃で、囮のランナーが次々に走り込み、抜け出した選手へのサポートも分厚く、さまざまな選択肢が持てる状況を作る。ボールを持たない選手も常に仕事をするクルセイダーズの特徴が如実に表れた先制点だった。
前半14分、SHブリン・ホールがインゴールへ正確なグラバーキック(地面を転がるキック)を蹴り込み、CTBブライドン・エノーがトライを追加。しかし、前半のクルセイダーズは、ボール争奪戦のルールを厳格に適応する「アオテアロア」のレフリングにアジャストできず、オフサイドなどの反則を繰り返してしまう。そのたび、ハリケーンズはSOジャクソン・ガーデンバショップがPGを決め、スコアは拮抗した。
前半30分、ガーデンバショップのドロップゴールが決まり、12-12の同点。盛り上がるスタジアムで王者が素早く動いた。直後のキックオフで、ハリケーンズが配置に着く間も与えないほどの早さでボールを大きく蹴り込んだのだ。ハリケーンズが大きく蹴り返すと、これを待っていたかのように、FBウィル・ジョーダンが自陣から持って走り、ハイパントを上げる。ハリケーンズがキャッチできずにこぼれたボールをPRジョー・ムーディーが拾い上げ、パスを受けたジョーダンがゴールに迫り、タックルをされながらCTBジャック・グッドヒューにオフロードパスをつないで瞬く間にトライをあげた。刻々と変化する状況のなかで全選手が先を読んで機能し、失点直後に突き放す。王者たる理由を見せつけるようなトライだった。
後半4分、チームとして同じ反則を繰り返し、グッドヒューがシンビン(10分間の一時退場)になったが、以降は反則も減り、粘り強いディフェンスで耐えた。23分、ハリケーンズの交代出場HOアサフォ・アウムアのトライ、ガーデンバショップのゴールで25-25の同点に追いつかれたが、慌てることなく、その後は2トライを奪っての快勝だった。
スーパーラグビー2020 アオテアロア 第2節
ハリケーンズ vs クルセイダーズ ハイライト
クルセイダーズは来週、地元クライストチャーチでチーフスを迎え撃つ。連勝で勢いをつけたいところだ。2015年までクルセイダーズでプレーしたダン・カーターがブルーズに加入。まだ出場はないが、ブルーズは連勝スタートを切っている。両チームは第5節(7月11日)、クライストチャーチで顔を合わせる。全勝対決に期待が膨らむが、もし、ダン・カーターが出場したとき、スタジアムはどんな雰囲気になるのだろう。楽しみが幾重にも広がるスーパーラグビー「アオテアロア」である。
文:村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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