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6月13日、世界最高峰のエンターテインメントラグビー「スーパーラグビー」が帰ってくる。ラグビー王国ニュージーランド(NZ)は、新型コロナウイルス感染症拡大をいち早く抑え込み、国民の生活も日常を取り戻しつつある。世界に先駆けてプロラグビーも再開だ。スーパーラグビーはNZのほかオーストラリア、南アフリカ、アルゼンチン、日本(サンウルブズ)が参加してのプロリーグだが、今回はNZ国内の5チームによるホーム&アウェイの総当たり戦だ。オーストラリア版スーパーラグビーも7月開幕を目指しているが、確実に再開が決まったのはNZのみだ。
三連覇中のクルセイダーズはじめ、NZのスーパーラグビーチームには、同国代表オールブラックスのスター選手が散らばっており見どころ満載だ。NZ南島クライストチャートを本拠地とするクルセイダーズは、今季よりLOスコット・バレットがキャプテンとして先頭に立つ。ブルーズのボーデン・バレットの弟で、ハリケーンズのFBジョーディー・バレットの兄。ラグビーワールドカップ(RWC)日本大会では3兄弟で出場する快挙を達成した。スコット・バレットはコンタクトの激しさ、抜群の運動量が魅力だ。
スコット・バレット(クルセイダーズ)
クルセイダーズにはSOリッチー・モウンガ、WTBセヴ・リース、CTBジャック・グッドヒューなどオールブラックスの精鋭が揃うが、今季デビューのFLトム・クリスティー(185㎝、103㎏、22歳)は、新型コロナウイルスで中断されるまでの6試合で106タックルとリーグ全選手のなかで唯一三桁タックルを記録。成功率も96%という驚異的なタックラー。20歳以下のNZ代表キャプテン経験もあり、今後楽しみな逸材だ。
NZの首都ウェリントンを本拠地とするハリケーンズは、オールブラックスのSHでもあるTJ・ペレナラが卓越した統率力と戦術眼でチームを引っ張る。突破力あるFLアーディ―・サヴェア、CTBンガニ・ラウマペ、ヴィンス・アソなど攻撃的な選手が多く、アオテアロアでも観客を魅了してくれるだろう。
TJ・ペレナラ(ハリケーンズ)
2015年から3年間リーチ マイケルが所属したチーフスは、オールブラックスの新キャプテンとなったFLサム・ケインがチームの顔だ。リーチは「チームが一番しんどいときに体を張る選手」と評する。SHブラッド・ウェバー、SOアーロン・クルーデンのハーフ団がチームを操るが、観客を楽しませてくれるのはFBダミアン・マッケンジー。前十字靭帯断裂の大怪我でRWC日本大会は欠場。もし出場していたらオールブラックスが優勝していたかもしれないと言われるほどの才能である。日本にファンも多く、必見の選手だ。
そのチーフスと開幕戦で対戦するハイランダーズは、南島ダニーデンがホーム。元クルセイダーズのアーロン・メイジャーがヘッドコーチ(HC)を務め、サンウルブズの初代HCマーク・ハメット、日本代表の頭脳とも言えるトニー・ブラウンの2人がアシスタントコーチを務める。オールブラックスで92キャップを誇るSHアーロン・スミスが看板選手で、パワフルなFLシャノン・フリゼル、走力あるHOリーアム・コルトンマンらオールブラックスもいる。しかし、選手層が薄く、やや地味な印象はぬぐえない。そこに変幻自在のランニングスキルを誇るネヘ・ミルナースカッダーが加入することになり話題を集めている。華のある選手の加入で攻撃のバリエーションも増えそうだ。
アーロン・スミス(ハイランダーズ)
最後に紹介するブルーズは、NZ最大の都市オークランドがホーム。ハリケーンズの顔だったボーデン・バレットが移籍してファンを驚かせた。これに加え、リーグ再開の直前になって日本の神戸製鋼コベルコスティーラーズでも活躍したダン・カーターの加入が発表された。神戸製鋼を退団し引退をささやかれていたが、クルセイダーズ時代のチームメイトであるレオン・マクドナルドHCに声をかけられ、その経験を若い選手に伝えるために参加を決めた。「ラグビーが恋しくなった」というコメントもファンを喜ばせている。カーターは、スーパーラグビー史上最多の「1708点」を記録しており、史上3位はボーデン・バレットの1247点だ。この2人がどういう形で共演を果たすのか注目される。
ダン・カーター(神戸製鋼⇒ブルーズ)
ブルーズには、この他にもオールブラックスのWTBリーコ・イオアネ、RWC日本大会で5試合に出場したLOパトリック・トゥイプロテゥ、今季7試合で5トライをあげたWTBマーク・テレア(186㎝、94㎏、23歳)がいる。今後が楽しみなトライゲッターだ。RWC日本大会で活躍した選手に加え、RWC2023での活躍が期待される選手も多く、どの試合も観る者を楽しませてくれるだろう。アオテアロアは、6月13日(土)、ハイランダーズ対チーフス(ダニーデン)で幕を開ける。
文:村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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