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駐車場リレーでトレーニング!ラグビー 田中史朗×バドミントン 奥原希望 コロナに負けるな!困難突破トーク競技を超えてONE TEAM編(ラグビー日本代表 田中史朗×バドミントン日本代表 奥原希望×ラグビージャーナリスト 村上晃一)
J SPORTSプロデューサーコラム by 杉山友輝(J SPORTSプロデューサー)バドミントン界でもラグビーの面白さが話題に!
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、試合の中止が続くスポーツ界。昨年のラグビーワールドカップで日本代表としてベスト8進出に貢献した田中選手と、バドミントン女子シングルスプレイヤーとして世界トップクラスの活躍を続ける奥原選手が困難突破トークに登場。二人が現在直面している困難とこれから、そしてそれぞれの競技の魅力を語ります!(この収録は5月26日に行われました)
「妻からのバドミントンニュースで奥原選手のことも知っていました」と話す田中選手
村上:本日は世界トップアスリートのお二人をお迎えしております。早速、自己紹介をお願いします。
田中:キヤノンイーグルス所属 田中史朗です。今日は短い時間になりますが、よろしくお願いします。
村上:田中選手はラグビーワールドカップでの大活躍、そして涙の記者会見でも有名になりましたね。
奥原:バドミントン日本代表、太陽ホールディングス所属 奥原希望です。よろしくお願いします。
村上:奥原選手はリオ五輪 女子シングルスで銅メダル。バドミントン世界選手権2017でも同種目で金メダルに輝き、素晴らしい成績を残しましたね。
そして、私はJ SPORTSのラグビー中継で解説を担当している、ラグビージャーナリスト 村上晃一です。よろしくお願いします。
村上:お二人はお会いするのは初めてですか? 奥原選手、田中選手の奥様が元バドミントン選手だったということは知っていますか。
奥原:田中選手にお会いしたことはないですね。奥様(旧姓:作山選手)と一緒にプレーさせてもらったことはないのですが、作山選手の旦那様というところから知りました。ラグビーワールドカップ日本大会のときに初めてラグビーを見ました。バドミントン界でもラグビーはこんなに面白いんだ!と話題になり、どの競技も知れば知るほど面白いということを改めて感じ、バドミントンもラグビーのようにどんどん知ってもらえたらいいなと選手たちと話していました。
田中:妻がバドミントンのいろんなニュースを話してくれるので、奥原さんのことも知っていました。
代表選手の練習場所も家の中、ガレージ、人のいない公園…
「一人で公園に行ってバドミントンの練習をしていました」と話す奥原選手
村上:さて、困難突破トークということで、今お二人が直面されている「困難」について聞かせていただきたいのですが、田中選手はどうですか。トップリーグが中止になって試合が出来ない状況が続いていますよね。
田中:ラグビーだけでなく、スポーツ全般が中止ということで、すごくしんどいですね。家で出来ることをしっかりやってるんですけど、出来ることが限られているので、グラウンドでラグビーボールを持って走りたいと毎日思っています。
村上:奥原選手は3月中旬の全英オープンを最後にすべての大会が延期・中止となり、急遽、海外から帰国されましたが、その時の状況や心境を教えてください。
奥原:全英オープンからそのまま日本には帰らず、約50日の海外遠征の予定でしたが、少しずつコロナの状況が悪化していき、全英オープンのみの1週間の遠征で帰国しました。まだその時はそこまで深刻に捉えられていなかったんですけど、帰国してから2週間の自宅待機を言い渡されて、初めて事の重大さを感じました。競技ができないことより、今自分のやらないといけないことを考えなければならないと思いました。
村上:田中選手は今どんな練習をしていますか。
田中:クラブハウスも閉鎖されていますし、チームで集まることもできないので、トップの練習はできないですけど、家の中やガレージ、人がいない公園で出来ることをしています。ひとりでボールを壁にあててパスをしたり、子供たちとパス練習をしています。
奥原:私も田中選手と同じですね。バドミントンは室内競技で窓も締め切って密閉空間になるので、練習ができない厳しい状況です。家で出来ることをしたり、一人で公園に行ってバドミントンをしたり。近くにバドミントンが出来る友達がいないので、誰かと打つこともないですね。
「なんとかなる精神」でどんなときもやり続ける
村上:東京五輪延期が決まった時、奥原選手はどんな気持ちでしたか。まだ出場権は決まってないですよね。
奥原:全英オープンが終わって、自宅待機になった頃から五輪開催は厳しいのではないかと少しずつ覚悟していたので、正式に開催延期が決まった時はすんなり受け入れられました。最近、やっとこの先のスケジュールが出たんですけど、それも確定事項ではなく、五輪の選考基準もまだ誰も知らされていない状況です。
村上:不安ですよね。
奥原:楽観的というか「なんとかなる精神」なので、今出来ることをどんな時も変わらず、やり続けるしかないのかなと思っています。
村上:田中選手、今の話を聞いてどうですか。五輪延期についてはどうでしょうか。
田中:楽観的に考えられるのは凄いな、器の大きい方だなと感じますね。やっぱり日本全体が盛り上がる大会なので五輪は開催してほしかったですけど、一番大切なのは「命」なので仕方がないと思います。
村上:全国高校選抜、インターハイ等、高校生の大会が中止になっていますが、高校生たちのスポーツができなくなっているこの状況を奥原選手はどう感じていますか。
奥原:選抜とインターハイと春・夏両方が中止という状況に直面した学生たちは、目標を見失い、すべてが真っ白になってしまい、やり場のない感情と葛藤していると思います。周りにいる指導者がそれを理解しようとすることは出来ても、理解しきれないところはありますよね。なんとかしてあげたいけど、新たな目標を見つけて、また少しずつ前を向いて進んでいってくれるのを待つしかないですね。私自身も前向きになってもらえるよう、ブログでメッセージを発信していますけど、学生たちの気持ちを分かりきれないのも悔しいですね。なんとか乗り越えてほしいです。
田中:高校卒業後も競技を続ける選手たちは、これを糧にレベルアップしようという想いになるかもしれないけど、高校で競技生活を終える選手たちはしんどいですよね。僕たちがどんな言葉をかけても「また頑張ろう!」という気持ちにはなれないと思いますし、高校3年間、最後の大会のために頑張ってきたことを考えると辛いですね。でも、人生においてここがゴールではないですし、この悔しさを今後の人生に活かしていってほしいですね。
村上:田中選手が高校生の時に、もし目の前の大会が中止になっていたらどうなっていましたか。
田中:泣いてましたね。でも、将来的にもラグビーをしようと思っていたので、ここでダメでも大学、社会人でしっかり結果を出せるよう「今ここで落ちたらあかん」と自分に言い聞かせていたと思います。
SNSで今こそ子供たちに届ける!
YouTubeを通して子供たちにメッセージを伝えていきたいと話す奥原選手
村上:ここからは「こんな時だからこそ出来たこと」など、ポジティブな話を聞かせてください。
奥原:私事になりますが、この度、情報発信のひとつとしてYouTubeにて「奥原希望 のんちゃんねる」を開設しました。現役選手がメッセージを発信するということは特別なことですし、以前からそれを子供たちに発信していきたいと思っていて、短い競技人生の中でできることを考えたうちのひとつがYouTubeだったんです。
いつから始めるかはずっと考えていたんですけど、ちょうど遠征が中止になったこのタイミングで始めました。おうちトレーニングだったり、公園でのトレーニングをアップしています。今後はアスリートとの対談やコラボも考えています。
村上:田中選手はこの時期だから出来たことや取り組めたことはありますか。
田中:インスタグラムで「#ふみチャレンジ」(@sh_fumi)というのをやっていて、家でしかできないことや、家にいながらワクワクドキドキできる企画をやっています。1回目はラグビーボールを指でまわすチャレンジ、2回目は自分の好きなプレイヤーの似顔絵を書く企画をやりました。SNSで送ることは簡単だけど、親や友達と話しながらポストに投函するまでを楽しんでもらいたくて、あえてハガキで参加にしました。僕はリーチ マイケルを書きましたけど、僕より子供たちのほうが上手ですね。
トレーニングは家族みんなで駐車場リレー
家族で二組にわかれてリレーをしたという田中選手
村上:おうちで出来るオススメの過ごし方やトレーニング方法を教えてください。
奥原:私は部屋の電気だけで生活することが苦手で、海外遠征中も含め、日ごろから朝起きたら必ずカーテンを開けて、太陽光を浴びて、時間のリズムを太陽の光で感じて過ごしています。
皆さんおうち時間がいつもより長いと思うので、なかなか太陽の光を浴びることなく一日を終えることもあると思いますが、太陽の光を浴びることで生活リズムが整い、増える栄養素もあると思うので、散歩やジョギングをして太陽の光を感じてみてください。
田中:今までは日本代表やチームの活動で、なかなか家族で過ごすことも少なかったので、家族でトレーニングをしています。駐車場でリレーをしたり、動画を見ながらトレーニングをしています。
村上:リレー!?
田中:子供2人と妻と2組に分かれて、15m、20mと短い距離ですけど、物置の周りを3周回って競っています。
村上:気分転換はできていますか。
田中:子供たちを公園や駐車場で自転車に乗せて、それを追いかけて鬼ごっこのようなことをやってます。子供たちがすごく喜ぶので、それを見ているのがリフレッシュになりますね。
奥原:これだけ日本にいることも、自分の家で過ごすこともないので、この機会に自分の家を楽しもうと思いつつ、一人暮らしだと寂しくなるので、友達とオンラインでゲームをしながら、携帯でテレビ電話をしたりしています。楽しいですし、リフレッシュにもなりますね。あとは自炊や部屋の掃除もしますね。
小柄であることの強みとは?
奥原:私は身長が小さいのですが、田中選手は小柄なことを長所だと思っていますか。それとも弱点だと思っていますか。
田中:若い頃はネガティブに捉えていました。それでも成長出来ているなら良いけど、そう思っていることで気持ちが落ちて、パフォーマンスが下がるなら、そんなことは考えない方がいいですよね。小柄でも結果を残しているスポーツ選手は世界にたくさんいますし、「小さくても出来る!」、「大きい選手には負けない!」という負けん気を出してやってきました。逆に、自分が活躍すれば、小柄な子供たちにも夢や希望を与えられると思っています。
村上:奥原選手は体が小さいことをどう感じていましたか。
奥原:私も自分の良さだと思っています。バドミントンはシャトルの下に入って打つので、小さいほうがシャトルの下にもぐりやすいですしね。
田中:バドミントンをやっていて、一番楽しいことと、しんどいことを教えてください。
奥原:ここ数年、大会スケジュールが過密になってきて、年間250日以上は代表のスケジュールが入っていて、家にも日本にもいられないので、代表の活動をすればするほど、日本が好きになりますね。以前にも増して、日本に帰りたいなと思いますし、海外に行っているからこそ、日本の良さが分かりますね。
バドミントンの楽しいところはプレー中です。小柄な分、一発のスマッシュで決めるよりラリーをしながら相手の長所を引き出して、相手が得意とする土俵でやりあっていくとプレッシャーもかけられるので、メンタル面も含めた駆け引きをして勝負するのが好きです。駆け引きがうまくいく時はもちろん、うまくいかない時は次の対策を練りながら頭をつかって試合をする、両方楽しいですね。
田中:すごいですね。僕は相手の嫌がるところを突いて、嫌がったところでトライを取る感じなんですが、相手の土俵に上がって自分を高めて打ち勝つというのは自信がなければできないことですよね。トップアスリートですね。
村上:田中選手にとって、ラグビーは何が一番楽しくて、何が一番苦しいですか。
田中:練習は苦しいですね。この歳になっても練習はすごく大事だと感じています。今までしんどいことをやってきたからこそ、ワールドカップの時も代表に選んでもらえたし、しんどかったからこそ涙も出ましたね。
子供たちにもしんどいことをしないと、上に行くチャンスは少なくなるよと伝えたいです。ラグビーそのものも楽しいですし、子供たちと接することが楽しいです。
「団体戦の時の自分は怖いですね(笑)」
笑顔で話す3人
村上:奥原選手は一人でプレーすることが多いと思いますが、ラグビーのようにチームでプレーすることがうらやましいと思うこともありますか。
奥原:チームプレーは個人では感じられないものがあると思いますが、私は個人競技向きの性格なので、全く思わないです(笑)。
バドミントンも団体戦はありますが、団体戦と言っても、コートに立つのは一人。良くなるのも悪くなるのも自分次第、その責任感を背負って戦う方が好きですね。コートの中ではアスリートとして完璧を目指してしまうので、チームメイトのミスを責めてしまうかもしれないです。団体戦の時の自分は怖いです(笑)。
村上:田中選手はみんなでプレーすることが嫌になることはありますか。
田中:今はないですね。ワンチームですね。ミスしても誰かがカバーすればいいという考え。若い頃はひとりで戦ってるような気持ちになっていたこともありましたが、コーチに「お前がミスをすれば、誰かがサポートしないといけないからミスはしないようにしろ。それがチームとして生きてくる」と言われてから、自分が良いプレーをすれば味方が楽になるし、ミスをすれば味方がしんどくなるというのを意識しながらずっとプレーしてきました。チームプレーは楽しいですね。
コロナ終息後、食べに行きたいモノは?
両選手ともコロナウイルスの終息後は外食に行きたいと話す
村上:コロナウイルスが終息したら何をしたいですか。競技と個人と両方教えてください。
奥原:バドミントンを早くしたいです。ファンの皆さんから温かい言葉をたくさんいただいて、支えていただいているので、私からも言葉を届けたいと思って発信してきましたが、一日も早くコートの中で元気で走り回っている姿をお見せしたいです。
田中:やりたいことだらけですね。ラグビーはもちろん、外食もしたいですし。僕もファンの方が温かい言葉をかけてくださったので、普及活動にも参加したいですね。特に、この期間中は子供たちもすごくストレスが溜まったと思うので、この現役期間中に自分が学んできたことを子供たちに伝えたり、何かプレゼントをしたりして、いつも以上の笑顔になってもらえるよう行動したいです。
村上:まず何を食べにいきたいですか。
田中:いつも行っている居酒屋に行って、大将やお店の方と喋って一緒に食べたり飲んだりしたいですね。
奥原:やっぱり焼肉ですね。自宅では和食メインになるのでお肉が食べたいです。
村上:今後、注目してほしいところを教えてください。
田中:今年36歳になりますが、レギュラーを勝ち取って、ファンの皆さんにベストなパフォーマンス、年齢関係なく出来ること、全力を尽くしてがんばってる姿を見てもらいたいです。
奥原:東京五輪が1年延期になって、新たな自分になれる、成長できる時間が出来たと前向きに考えています。
9月に試合再開の予定ですが、進化しているなと感じてもらえるよう上を目指していきたいです。
村上:最後にスポーツファンに向けてメッセージをお願いします。
奥原:スポーツはやる人、見る人に分かれると思いますが、どちらにとっても苦しい状況だと思います。
必ず終息する日はくるので今を乗り越えた先には明るい未来が待っていることを信じて、みんなで助け合って頑張っていきましょう。
田中:緊急事態宣言は解除されましたが、完全に終息したわけではないので、我慢は続きますが、家で出来ることを楽しんで、終息した際にみんなで笑顔になれるよう頑張って乗り越えましょう。
村上:本日はありがとうございました!
文:J SPORTS 杉山友輝
杉山友輝(J SPORTSプロデューサー)
若手のADを見るとすぐに「メシくってるか?」という昭和臭いプロデューサー。担当競技は卓球・ラリー・ゴルフ。毎日自らで作ったカスピ海ヨーグルトを食べるのが健康法。ニックネームはスギP。
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