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2019年のラグビーワールドカップを振り返ると、多くの人に見てほしい試合、プレーが多すぎて困るほどだ。日本代表を軸にして楽しめたプール戦、準々決勝を経て、勝ち残ったベスト4の闘いも長く語り継ぐべき内容だった。
準決勝の第1試合は、10月26日(土)、横浜国際総合競技場にて行われ、世界を驚かせる試合展開になった。ラグビー発祥の母国イングランドを率いるのは、エディー・ジョーンズヘッドコーチ。2017年5月、京都迎賓館で組み合わせが決まったとき、強豪ひしめくプールCに入りながら、「優勝までの道筋が見えました」と言い切った。プール戦を1位通過し、準々決勝を突破すれば、準決勝でニュージーランド(オールブラックス)と戦うことが濃厚だった。オールブラックスが図抜けた強さを誇るからこそターゲットを絞ることができるのだが、オールブラックスに勝つ準備はここから始まっていたのだ。
準決勝オールブラックスのハカ。イングランドが逆V字の隊形で受けた
そして、迎えた試合開始直前。オールブラックスのハカに対抗し、イングランドは相手を包み込むような逆V字の隊形を作った。ジョーンズHCは、RWC2003でオーストラリア代表を率いたときも準決勝でオールブラックスを倒している。「彼らにいつもと違うと考えさせる」。それが勝利をたぐりよせるのだ。ハカをいつもと違う隊形で受け、キックオフはキッカーをスイッチして蹴る。そして、立ち上がりは2003年のオーストラリアと同じように、凄まじい勢いで連続攻撃を仕掛けた。約1分半でCTBマヌ・トゥイランギが先制トライをあげる。流れは完全にイングランドへ傾いた。それでもオールブラックスが本来の攻撃力を発揮すればあっという間に逆転する。攻めるオールブラックスに激しいタックルを見舞い続けるイングランド。見ごたえは十分だ。
準決勝第2試合は、南アフリカ優位の声に反してウェールズが健闘する。闘将アラン=ウイン・ジョーンズが体を張り、SOダン・ビガー、FBリー・ハーフペニーら経験豊富な選手たちが活躍し、結束力の強さを見せるウェールズ。ハイパントの応酬になるが、緊張感ある空中戦を観客も固唾をのんで見守る。ラグビーの多様なプレースタイルの一面を見せた戦いでもあった。南アフリカのSOハンドレ・ポラード、CTBダミアン・デアレンディら日本でのプレー経験ある選手たちの活躍が嬉しい。
敗れたウェールズは、11月1日、オールブラックスとの3位決定戦に臨んだ。モチベーションの難しい試合のなかで、満身創痍のウェールズは力尽き、オールブラックスが快勝する。2トライを決めたWTBベン・スミス、巧みにBKラインを操るCTBライアン・クロッティのベテラン2人。彼らをなぜ準決勝に起用しなかったのかとオールブラックスファンの恨み節が聞こえる。新陳代謝を繰り返し、常勝軍団を維持しなくてはならない王者ならではの事情も垣間見える。
ガットランド ヘッドコーチ、アラン=ウイン・ジョーンズ主将が率いる
ウェールズ代表は4位で大会を終えた
決勝戦は、11月2日、横浜国際総合競技場で行われ、同会場史上最多の7万103人の大観衆で埋め尽くされた。オールブラックスを破って勢いづくイングランドの前に南アフリカが立ちはだかる。黒人のキャプテン、シヤ・コリシが先頭に立つ南アフリカはさまざまな人種、民族からなるチームだ。長らく人種問題を抱える南アフリカ共和国で彼らは英雄であり希望だ。
スクラムで圧力をかけ、力強いディフェンスでイングランドの勢いを止め、SOハンドレ・ポラードの4PGで前半を12-6とリードする。後半はBKの個人技が観客を楽しませた。身長170㎝のWTBチェスリン・コルビがスピードの緩急でイングランドの大男たちを抜き去るトライは圧巻だ。優勝トロフィー「エリスカップ」を掲げるコリシキャプテン。その両脇に、コルビとファフ・デクラークという小さな巨人が並んだ。体格も肌の色も宗教も政治的信条も異なる選手たちが一つなって勝ち取ったカップは、ひときわ輝いて見えた。
決勝戦を見終わると、つくづく良い大会だったと実感する。録画を見返すときは、試合だけではなく、ぜひ、表彰式までじっくりと楽しんでもらいたい。
優勝トロフィー「エリスカップ」を掲げるシヤ・コリシキャプテンと南アフリカ代表
文:村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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