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世界で最初にプロラグビーを再開させるのは、やはりラグビー王国ニュージーランド(NZ)だった。同国代表オールブラックスは、すべての国との対戦成績で勝ち越す唯一のチームで、ラグビーワールドカップでは優勝3回。1996年に開幕した世界最高峰のプロラグビーリーグ「スーパーラグビー」でも2019年までの24年間でNZ勢が17回優勝している。文字通り、ラグビーの最強国であり、多くの国民がラグビーを心から愛する国である。
もちろん、ラグビーが再開できたのはNZ政府が、新型コロナウイルス感染症に迅速な対応をしたからだ。3月26日から4週間は警戒レベルを「レベル4」に引き上げて都市封鎖。感染を抑え込み、4月27日にはアーダーン首相が「コロナとの闘いに勝った」と勝利宣言。5月11には警戒レベルを「レベル2」に下げ、14日からは小売店、ショッピングモール、カフェ、レストラン、映画館、ジム、公園などの公共スペースが再開されることに。ラグビーやネットボールといったプロスポーツも条件付きで開催が可能になった。
さっそく発表されたのが、「NZ国内版スーパーラグビー・アオテアロア」の開催である。「アオテアロア」は同国の先住民族マオリの言語で「ニュージーランド」を表し、「長く白い雲のたなびく国」という意味がある。今年のスーパーラグビーは第7節(3月13日、14日、15日)を最後に中断したが、勝ち点などは引き継がない。スーパーラグビーのNZカンファレンスの5チーム(クルセイダーズ、ブルーズ、チーフス、ハリケーンズ、ハイランダーズ)が、10週間にわたりホーム&アウェイの総当たり戦で優勝を争う。
6月13日(土)に開幕し、土曜日は日本時間の午後2時5分、日曜日は午後0時5分から1試合ずつ。毎週、1チームは休むことになる。スーパーラグビーで4連覇を目指していたクルセイダーズのスコット・ロバートソンヘッドコーチは「再びプレーする準備が始まることに興奮している」と喜びながらも、国民の健康と安全を守るために政府のガイドラインに従って準備する旨も冷静に語っている。観客、選手、スタッフなどの安全に配慮し、全20試合は無観客で行われる予定だ。
ファンはテレビでの観戦ということになるが、日本ではJ SPORTSが放送する。
スーパーラグビー第7節までのNZカンファレンスの順位は、1位クルセイダーズ、2位ブルーズ、3位チーフス、4位ハリケーンズ、5位ハイランダーズ。スーパーラグビーが中断されて以降、チーム練習はできておらず、各チームは約1カ月という短い準備で体調管理を徹底しながらチームを仕上げることになる。いかに効率よくトレーニングできるか、コーチ陣の手腕が大きく影響しそうだ。
王者クルセイダーズは、LOスコット・バレット、SOリッチー・モウンガ、CTBジャック・グッドヒュー、WTBセヴ・リースほかオールブラックスがずらり。オールブラックスのキャプテンに決まったサム・ケインは、チーフスのキャプテンでもある。今季好調だったブルーズには、オールブラックスのトライゲッター、リーコ・イオアネがいる。ハリケーンズは、SHのTJ・ペレナラが抜群の存在感でチームを引っ張る。「アオテアロア」の開幕が発表された後、日本でも人気の高いオールブラックスのWTB/FBネヘ・ミルナースカッダーが移籍先のフランスから帰国し、ハイランダーズ入りすることが発表されNZファンを喜ばせた。今季不振だったハイランダーズを活性化することができるのだろうか。
6月13日の開幕カードはハイランダーズ対チーフス(ダニーデン)、14日はブルーズ対ハリケーンズ(オークランド)が相対する。クルセイダーズはお休み。NZラグビーは、フィールドを縦横無尽に走り回るハイテンポのプレーが魅力だ。日本のファンにとってはトップリーグでプレーした馴染みの選手も多く、親しみを持って楽しめるだろう。日本ではまだラグビーが行われていない。ラグビーが観られる幸せをかみしめつつ、躍動感のあるスピーディーなプレーを堪能したい。
文:村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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