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日本ラグビーと伝統国ウェールズの関係は深い。日本が世界のその名を知らしめたのは、1968年のオールブラックスジュニア(23歳以下ニュージーランド代表)戦勝利。1971年のイングランド代表との3-6の死闘だった。この戦いぶりが評価され、日本代表は1973年、ウェールズラグビー協会から招待を受ける。そして、史上初のウェールズ・イングランド・フランス遠征が行われた。このときはウェールズに大敗したが、1975年には当時、黄金時代だったウェールズが来日。伝説のSHガレス・エドワーズ、WTBジェラルド・デービスらが卓越した個人技を披露し、日本のラグビーファンを魅了した。
日本代表も1983年のウェールズ遠征ではテストマッチで大接戦を繰り広げ、キャプテンのSO松尾雄治が現地で高い評価を受ける。現在、日本では圧倒的にオールブラックス人気が高いが、70年代、80年代前半、ウェールズは日本の海外ラグビーファンの中では一番人気を誇っていた。
そのウェールズとの名勝負は既述の試合も含めて複数あるが、2000年代に入ってからではこの2試合だろう。2001年、まだトップリーグが始まる前のサントリーが単独チームでウェールズを破った試合。そして、2013年、エディー・ジョーンズヘッドコーチ、廣瀬俊朗キャプテン体制の日本代表が勝利した試合である。ともに舞台は秩父宮ラグビー場(東京都港区)だった。
JSPORTSは「日本ラグビー名勝負!」と題し、4月6日に「テストマッチ2013 ウェールズ代表来日ツアー 日本 vs. ウェールズ」、7日に「2001 ラグビーウェールズ代表来日試合 サントリー vs. ウェールズXV」を放送する。
2001年2月25日、国立競技場で行われた日本選手権決勝でサントリーは神戸製鋼と27-27の引き分け両者優勝。5年ぶり2度目の日本選手権制覇を成し遂げる。監督は5年前にもチームを頂点に導いた土田雅人。キャプテンは大久保直弥(現サンウルブズヘッドコーチ)だった。土田監督は、2001年度の目標をジャパンセブンズ、東日本社会人リーグ、全国社会人大会、日本選手権という4冠とし、春のターゲットをウェールズ戦勝利に置いていた。
土田監督は明確な目標を立て、周到な準備をする指導者だ。この時は国内シーズン終了後の3月は選手を休ませ、4月はセブンズ(7人制ラグビー)のメンバー以外は、ボールを持たせずに走り込みと体作りに時間を費やした。そして、日本が蒸し暑い6月3日の秩父宮ラグビー場でウェールズをへとへとに疲れさせたのだ。前半3分の先制トライは、23歳のFB小野澤宏時だった。PR長谷川慎、HO坂田正彰、FL大久保直弥、NO8斉藤祐也、SH田中澄憲、SO沢木敬介、WTB栗原徹と、いまや指導者、解説者となっている錚々たるメンバーだ。ホームユニオンと呼ばれる英4か国(イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド)から日本の単独クラブが勝つのは史上初の快挙。日本のチームがウェールズに勝つのも初のことだった。後半投入されるSH永友洋司の正確無比のパスワークは必見だ。
サントリーの勝利から12年後、日本代表がウェールズに勝つときがやってきた。2012年に日本代表ヘッドコーチに就任したエディー・ジョーンズは、2015年のラグビーワールドカップに向け、日本代表を徹底的に鍛え上げる。6月8日、東大阪市の近鉄花園ラグビー場で行われた第1戦では、関西ラグビー協会の坂田好弘会長が大阪で行われるあらゆる試合の時間をずらし、この試合を観戦するように要請。花園のスタンドは、20,152人の観衆で埋め尽くされた。18-22で惜敗したが、関東ラグビー協会もこれに呼応して各チームに練習時間などをずらすよう呼びかけ、6月15日、秩父宮ラグビー場は21,062人観客が集った。まさに関係者、ファンが一体となって日本代表を後押ししたわけだ。
大観衆のサポートを受け、日本代表はウェールズから歴史的勝利をもぎとる。前半は6-3の日本代表リードで後半へ。いったんは逆転されたが、日本代表はCTBクレイグ・ウイングのトライで再逆転すると、後半19分、FLマイケル・ブロードハーストがトライ。FB五郎丸歩のゴールも決まって、20-8と突き放した。ノーサイドの瞬間、2011年までキャプテンを務めたNO8菊谷崇が廣瀬俊朗キャプテンを抱き上げたシーンは感動的だった。
ウェールズはこの時期、主力のほとんどがブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ(ホームユニオン代表)の遠征に参加しており、戦力が落ちていたことは確かだが、この勝利は日本の選手、ファンに自信を植え付けるのに十分な効果があった。以降、日本代表は着実にレベルアップしていく。2019年ラグビーワールドカップの日本代表の快進撃を語る上でも見ておきたい試合だ。
文:村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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