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日本ラグビー最高峰のジャパンラグビートップリーグ2020が、1月12日、開幕した。ラグビーワールドカップ(RWC)での日本代表の快進撃以降、ラグビー熱の高まりは誰もが感じていた。しかし、トップリーグの観客はどうなのか。心配する関係者も少なくなかったが、実際には全6会場で、92,347人の観衆が集った(2試合開催の場所は2試合目の観客数で計算)。昨季は約6万人で、豊田スタジアムが31,332人と数字をかせいだため、実際には倍増した感がある。各会場では入場の長蛇の列ができ、帰りの駅も大混雑。このあたり入退場、駅と会場のアクセスをいかにスムーズにしていくかについて課題はあるが、試合内容はどの会場でも観客を楽しませるものだった。
特に目立ったのは日本代表選手をはじめとしたRWC戦士の活躍だ。神戸総合運動公園ユニバー記念競技場は、23,004人の大観衆が集った。王者・神戸製鋼コベルコスティーラーズは日本代表CTBラファエレ ティモシーがRWCでも見せた曲芸的パスを連発。FB山中亮平もスピーディーな突破からWTB山下楽平のトライを導くなど観客を沸かせた。対するキヤノンイーグルスも、日本代表SO田村優が正確なプレースキック、キックパスを披露した。試合は、50-16と神戸製鋼の快勝。新加入のニュージーランド代表LOブロディ・レタリックは、204cm、121kgという巨漢ながらボールを持っての突進、タックル、ボール争奪戦で圧力をかけるなど、攻守に運動量豊富に動き回り、世界最高LOの評価を裏付けた。
秩父宮ラグビー場は満員札止めの21,562人が客席を埋めた。試合は東芝ブレイブルーパスがサントリーサンゴリアスに、26-19で勝利。日本代表のリーチ マイケルはNO8で先発し、ボールを持つたび「リ~~チ!」の掛け声が沸き上がった。オールブラックスのFLマット・トッドの機動力、拓殖大出身のFLシオネ・ラベマイの突進力も光った。サントリーは前半の終盤にFL西川征克が危険なプレーでレッドカードを受け、約65分間14人で戦った。その中でも7点差の敗戦のボーナス点「1」を獲得したのが上出来かもしれない。
サントリーで光り輝いたのは、FB松島幸太朗だ。トライを奪われそうなピンチに一人で2人のコースを抑え、最後は力強いタックルでタッチに押し出したシーンは自信にあふれていた。観客を驚かせ、楽しませたのが後半7分の股下からのパスだ。新加入のCTBサム・ケレビの突進から、SH流大、CTB梶村祐介、松島とパスが回ると、迫りくるタックラーとの間合いから股下からのパスを決断。しっかりボールを持って、股下から思い切り手を振ると、約15mを矢のようにボールが飛び、左タッチライン際のWTBテビタ・リーへ。パススピードが速かったことでディフェンダーが届かず、リーがインゴールへ走り込んだ。これほど速く、飛距離があり、正確な股下パスは見たことがない。これからも松島幸太朗を見続けたい。そう思ったファンは多かっただろう。同会場の第一試合では、NTTコミュニケーションズシャイニングアークスが日野レッドドルフィンズに逆転勝ち。攻守が目まぐるしく入れ替わる面白い展開だった。
東芝ブレイブルーパス vs. サントリーサンゴリアス ハイライト
ジャパンラグビー トップリーグ2020 第1節
RWCの日本代表に最多の6人を送り出したパナソニック ワイルドナイツは、熊谷ラグビー場でクボタスピアーズと対戦した。前半21分、日本代表WTB福岡堅樹が左タッチライン際を瞬時の加速とステップで駆け抜け、3人のタックラーを抜き去ったトライは観客の度肝を抜いた。HO堀江翔太も交代出場で登場し、タックルをかわす得意のスピンとオフロードパスでトライを導き格違いのプレーぶり。ルーキーのWTB竹山晃暉も正確なプレースキックで、34-11の勝利に貢献した。
静岡県磐田市のヤマハスタジアムで行われたヤマハ発動機ジュビロとトヨタ自動車ヴェルブリッツの一戦は予想に違わぬ接戦になった。トヨタ自動車はPR木津悠輔、FL姫野和樹、SH茂野海人の日本代表に、ニュージーランド代表のNO8キアラン・リード、南アフリカ代表FBウィリー・ルルーが揃う豪華メンバーだったが、31-29という僅差勝負をものにしたのは、ヤマハ発動機だった。日本代表のスクラムコーチ長谷川慎が復帰したヤマハのスクラムはぐいぐいと前に出て、前半11分にペナルティートライを獲得するなど、常に圧力をかけ続けた。SH矢富勇毅、FB五郎丸歩の元日本代表選手も健在で、強力スクラムは今後も各チームを苦しめそうだ。
筆者は東大阪市花園ラグビー場でJ SPORTSの解説を担当した。第一試合では、Honda HEATが28-5でリコーブラックラムズに快勝。開始早々に日本代表WTBレメキ ロマノ ラヴァがカウンターアタックからトライし、PR具智元が南アフリカ代表LOのRG・スナイマンのパワフルな突進をサポートしてトライとRWC戦士が気を吐いた。第二試合では、NTTドコモレッドハリケーンズが三菱重工相模原ダイナボアーズに31-24と競り勝ったが、ドコモの新戦力で身長2mのFLローレンス・エラスマスの抜群の運動量が光った。また、巨漢選手のぶつかり合いのなかで、ドコモのSH秦一平が後半登場し、身長153cm、体重53kgというリーグ最小のサイズで俊敏に動き回りディフェンスを翻弄した。
福岡のレベルファイブスタジアムでは、宗像サニックスブルースがNECグリーンロケッツに24-18で勝利している。開幕節は観客の入り、試合内容ともに好スタート。RWC戦士の質の高いパフォーマンスは頼もしいが、代表選手以外にも個性的な選手は多く、トップリーグは見るたびに興味が膨らむ選手であふれている。ファンをさらに増やすため、運営側には来場者の意見に耳を傾け、快適な観戦環境を作っていく臨機応変な対応が求められる。
文:村上晃一
リコーブラックラムズ vs. Honda HEAT ハイライト
ジャパンラグビー トップリーグ2020 第1節
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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