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ラグビー コラム 2019年12月24日

王者・明大に健闘の関西学院大も 順当に大学選手権ベスト4が出揃う

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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天理大CTBシオサイア・フィフィタ

流通経済大の守備網を突破する天理大CTBシオサイア・フィフィタ

2019年度の大学王者はどのチームなのか。12月21日に行われた全国大学選手権準々決勝を勝ち抜き、準決勝進出を決めたのは、明大、早大、東海大、天理大の4チームとなった。それぞれ、関東大学対抗戦の1、2位、関東大学リーグ戦1位、関西大学Aリーグ1位のチームという順当な勝ち上がりだが、準々決勝では思わぬ苦戦を強いられたチームもあり、勝ち上がって勢いのあるチームを、シード校が待ち受けるトーナメントの難しさも再認識させられた。

大いに観客席を沸かせた準々決勝を振り返ってみよう。東大阪市花園ラグビー場での第1試合でスピーディーな攻撃を披露したのは早大だった。強力FWでプレッシャーをかけようとする日大に対し、前半4分、CTB長田智希のトライで先制すると、13分、自陣のゴール前まで攻め込まれたマイボールスクラムから左オープン攻撃。BKラインはインゴールに立っていた状態からの展開でFB河瀬諒介が快走してハーフウェーライン付近までボールを運び、最後はWTB古賀由教が左タッチライン際を駆け抜けてトライ。日大のディフェンスをパス、キック、ランを織り交ぜながら翻弄し着々と加点した。日大は再三のチャンスを得点に結びつけられず、モールを押し込んでのNO8シオネ・ハラシリのトライほか2トライに留まった。それでも6大会ぶりの出場で準々決勝進出の日大は、新たな歴史創造に一歩踏み出したといえるだろう。

第2試合は関西王者の天理大が流通経済大のアグレッシブな攻撃に苦しめられた。前半12分までに、CTBシオサイア・フィフィタ、HO北條耕太のトライで12-0とリードしたものの、初戦の緊張感からかミスを連発。15分には流経大LOタマ・カペネにディフェンスを破られ、HO松田一真にトライを奪われる。続く19分には、流経大のパスの乱れにディフェンスが飛び出したところをFB河野竣太にすれ違うように突破され、WTBイノケ・ブルアにトライを許した。その後も、短いパスに対して縦に走り込んでくる流経大の攻撃に何度もディフェンスを破られ苦しい展開になった。

苦境を救ったのは、ディフェンスの修正能力の高さと、フィフィタの爆発的な突破力だった。前半25分のラインアウトからのサインプレーは圧巻。HO北條のパスにトップスピードで走り込み、流経大のタックラーを弾き飛ばしてトライ。24-28でリードされていた後半11分にも、連続攻撃のあとフィフィタがゴールライン直前でボールを受けて3人のタックラーのど真ん中に突っ込んでトライをあげた。この逆転以降は天理大の一方的な展開となる。ハットトリック(3トライ)のフィフィタは試合後、「きのう誕生日なんで、ハットトリックとったろうと思ってた」と関西弁でコメント。天理大の小松節夫監督は「縦に切ってくるアタックが素晴らしかった」と流経大の攻撃を称賛。敗れたしたが流経大も今後の強化に自信になる貴重な経験を積んだ。

関西学院大vs明治大

関西学院大の勢いのあるディフェンスに苦しんだ王者・明治大

花園と同時刻に秩父宮ラグビー場で行われた第1試合は、東海大が筑波大をノートライに抑えて勝利した。眼窩底骨折で戦線離脱していたCTB眞野泰地キャプテンがゴーグルをつけて好タックルを連発。的確な指示で組織ディフェンスを機能させ、7-3と4点リードの後半13分には、ターンオーバーから眞野がディフェンス背後にグラバーキック、これをSO丸山凛太朗が追いかけてキャッチし右コーナーに飛び込んだ。泥臭くタックルし続けて勝ち残ってきた筑波大もチームの結束力を感じさせた。来季も楽しみなチームだ。

ベスト4に勝ち上がったチームでもっとも苦しんだのが王者・明大だった。SO山沢京平ら主力を怪我などで欠く明大は、関西学院大の勢いのあるディフェンスに前に出ることができなかった。前半7分、1年生SO齊藤誉哉がディフェンスを破り、WTB矢野湧大にパスを送って先制トライをあげたが、10分、関西学院大に攻めこまれ、SO房本泰治のパスに走り込んだCTB山本悠大のトライで7-5と逆転される。一進一退の攻防が続いたが、12-7の5点リードで迎えた後半27分、早明戦から絶好調のLO箸本龍雅が大幅ゲインで起点になると、最後はWTB山﨑洋之が右コーナーにトライして19-7とし、勝利を濃厚にした。関西学院大も敗色濃厚の中、試合終了間際に4年生のSH山内俊央がトライ。高校日本代表など代表歴のある選手は少ないが、全員が献身的に体を張ってプレーする関西学院大の健闘が光る好ゲームだった。

準決勝は年明け、1月2日、秩父宮ラグビー場で行われる。今年のラグビーワールドカップは素晴らしいパフォーマンスを見せたチームが次の試合では調子を落として敗れるパターンが連続した。果たして大学選手権はどうか。4チームの間に大きな実力差はない。苦しみながらも、それぞれの特徴を生かして準々決勝を突破した。予断を許さない2試合になる。

文:村上 晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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