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流経大 イノケ・ブルア
王座奪還を狙った帝京大が3回戦で姿を消した。ベスト8の座を巡る熾烈な戦いを振り返ろう。第56回全国大学選手権3回戦は、12月15日(日)、東大阪市花園ラグビー場、県営熊谷ラグビー場で行われた。
熊谷での第1試合に登場した帝京大はキャプテンのFL本郷泰司、切り札のWTB尾崎泰雅ら主力数名が欠場。本来はFBの奥村翔をSOで起用し、FBに2年生の小村健太を起用するやや経験の浅い布陣だった。風下に立った前半のキックオフでは、伸びるキックをキャッチミスし、直後に流経大HO松田一真に先制トライを許す苦しい立ち上がり。スクラムでは圧力をかけ、FWの力強い突破もあったが、ディフェンスは甘く、簡単にトライを獲られるシーンが続いた。
先制トライで勢いづいた流経大は、フィジー出身のWTBイノケ・ブルアが右タッチライン際を大幅にゲインして攻め込むと、最後はFL粥塚諒がトライ。強風の風上に立ちながらキックは極力使わずにボールをキープして攻め続けた。9分、帝京大NO8リッチモンド・トンガタマにトライを返されたが、14分、帝京大ゴール前のスクラムからの攻撃で粥塚が2本目のトライを決めて、19-7とする。しかし、自陣からボールをつないだ際にパスミスが起き、これを帝京大CTBニコラス・マクカランに拾われてトライされると劣勢となった。27分には、帝京大SO奥村のPGで19-20と逆転される。34分には自陣からの攻撃でミスが起き、これを帝京大CTB李承信に拾われ、WTB木村朋也の爆発的な加速でタックルを外されて突き放される。
その後は一進一退の攻防となったが、31-39と8点のリードを奪われていた後半29分、ハーフウェイライン付近でSO柳田翔吾がディフェンスを突破し、WTBブルアがトライして38-39とすると、33分、ブルアの右タッチライン際での突進をサポートしたFB河野峻太がインゴールに飛び込み、43-39と逆転。残りの時間は自陣でひたすらボールキープして逃げ切った。ブルアを右の大外で走らせ、ディフェンスを集めて左オープン展開。CTBヴィリアメ・タカヤワがトライするなど、パワフルなランナーを効果的に走らせる会心の勝利だった。帝京大が初戦で敗れるのは、2006年度以来13年ぶり。勝った流経大は、準々決勝で関西王者の天理大と対戦する。WTBブルアは天理大に脅威を与える存在だ。
【ハイライト】帝京大学×流通経済大学 ラグビー全国大学選手権19/20 3回戦
京産大 大西監督
熊谷の第2試合では、関東大学リーグ戦1部2位の日本大と、関西大学Aリーグ4位の京都産業大が対戦。47シーズン目の指揮で今季が最後となる大西健監督率いる京産大は、開始早々トライゲッターのWTB堀田礼恩が右コーナーに先制トライ。好スタートを切ったが、日大のLOデビタ・オト、NO8シオネ・ハラシリに連続トライを奪われる。24分、SO山内凌雅のキックチャージからLO伊藤鐘平がトライして12-12としたが、31分、スクラムを猛プッシュしたが日大CTB齊藤芳徳に走られリードされると、その後、一度もリードできないまま敗れた。前半終了間際に攻め込みながらインゴールにボールを押さえられず、時間切れとなったのは痛恨。一方、日大は、粘り強く守り、突破力ある選手を効率よく走らせ、チームの結束力の強さを見せつけた。準々決勝では関東大学対抗戦2位の早稲田大に挑む。
花園の第1試合も拮抗した。1回戦、2回戦と大勝してきた朝日大の挑戦に注目が集まったが、関西3位の関西学院大が地力を見せる。前半3分、WTB本山泰地のトライで先制。16分、自陣からの攻撃中に朝日大CTB又吉恒太にパスをインターセプトされてトライを返されたが、27分、モールを押し込んでHO竹内海斗がトライしてリード。鍛え上げたスクラムで反則を誘い、ゴール前のラインアウトからモールを押し込む堅実な攻撃で主導権を握った。朝日大もWTBフィティスフィア・ティモの次々にタックラーをかわして突進するなど攻撃力の高さを見せたが勝利には届かなかった。関西学大は12月21日、秩父宮ラグビー場で連覇を狙う王者・明治大と対戦する。鍛え上げたスクラム、モールがどこまで通じるか。
第2試合は、関西2位の同志社大が関東対抗戦4位の筑波大を迎え撃った。同志社大は開始早々、FL堀部直壮が抜け出して筑波陣深く入るなど観客を沸かせたが、筑波大の粘り強いディフェンスの前に得点できない。逆に筑波大は前半12分、FB松永貫汰が同志社大のディフェンスの乱れを突いて突破し、最後のディフェンダーをショートパントでかわし、自らインゴールでボールを押さえる技ありトライ。16分にはWTB仁熊秀斗がトライして流れをつかんだ。同志社大も後半11分、FWでじわじわとゴールに迫り、40フェイズを越える連続攻撃でNO8服部綾がトライし、12-17と5点差に迫ったが、その後は筑波大のフラットなパスの連続でトライを許すなどコンタクト局面で後手を踏み、突き放された。勝った筑波大は、12月21日の準々決勝で関東リーグ戦優勝の東海大と戦う。筑波大の泥臭く、粘り強いプレーは東海大も苦しめるかもしれない。
文:村上 晃一
【ハイライト】日本大学×京都産業大学 ラグビー全国大学選手権19/20 3回戦
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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