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ラグビー コラム 2019年11月1日

最強のフィジカル・バトルを制するのは? 母国イングランドが、南アフリカの鉄壁防御に挑む ラグビーワールドカップ2019 イングランド vs. 南アフリカ 

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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イングランドvs.南アフリカ

初の日本開催となったラグビーワールドカップが、いよいよファイナルを迎える。頂上決戦の舞台に勝ち上がったのは、ラグビー発祥の母国イングランドと、最強のフィジカルを誇る南アフリカ。両チームは2007年のフランス大会でも決勝で対戦しており、このときは、15-6というノートライのPG合戦で南アフリカが勝っている。

当時、南アフリカのヘッドコーチは、現在トヨタ自動車ヴェルブリッツを率いるジェイク・ホワイト、そして、テクニカルアドバイザーはエディー・ジョーンズだった。12年の時を経て、イングランドのヘッドコーチとして、南アフリカと相対することになったわけだ。果たして、ジョーンズHCは今回も勝者になるのだろうか。南アフリカの優勝メンバーで今回も出場するのは、リザーブに入るフランソワ・ステイン(191cm、111kg、32歳)のみ。2007年当時、ステインは20歳で12番を背負い、PG1本を決めている。

マロ・イトジェ

準決勝で15本のタックルを決めたLOマロ・イトジェ

10月26日の準決勝でニュージーランドを破ったイングランドの戦いぶりは見事だった。ニュージーランドの攻撃を前に出る緻密なディフェンスで止め切り、スクラム、ラインアウトでもプレッシャーをかけた。15本のタックルを決めたLOマロ・イトジェ(195cm、115kg、25歳)、タックル16本のFLサム・アンダーヒル(186cm、106kg、23歳)、ボール争奪戦で粘り強く戦ったFLトム・カリー(185cm、106kg、21歳)ら若い選手たちが躍動し、チームに勢いを与えた。そして、ニュージーランドのハカを微笑みながら見据えたキャプテンのCTBオーウェン・ファレル(188cm、92kg、28歳)も体を張ったタックルを連発した。勢いはイングランドにあるように思える。

ファフ・デクラーク

絶好調のSHファフ・デクラーク

しかし、南アフリカのディフェンスは鉄壁だ。準決勝ではイングランドと同等のフィジカルの強さがあるウェールズの縦突進を跳ね返し、力づくではゴールラインを割らせなかった。スクラムも強力で、長身揃いのラインアウトは安定している。SOハンドレ・ポラード(189cm、98kg、25歳)のプレースキックは試合を重ねるごとに正確性を増し、活力あふれるプレーでチームをけん引するSHファフ・デクラーク(172cm、88kg、28歳)は絶好調。準決勝で唯一のトライをあげたCTBダミアン・デアリエンディ(189cm、101kg、27歳)の攻守にわたる力強いプレーはイングランドには脅威だろう。

イングランドのCTBマヌ・トゥイランギ(185cm、112kg、28歳)は、南アフリカのフィジカルの強さについて、こう語っている。「彼らは大きい。我々は攻めないといけない。彼らが攻めてくるのを待ってはいられないし、さもなければ長い1日になる」。もし、南アフリカにボールを支配され防戦一方になれば勝つのは難しいということだ。「攻めなければ」という言葉には、ディフェンスでも前に出続けることが含まれる。イングランドは立ち上がりからアグレッシブに前に出る。南アフリカはデクラークの防御背後への戦略的キックを軸に前進を図るだろう。ニュージーランド戦では突き刺さり続けたイングランドのタックルも、空中戦では威力を発揮できない。南アフリカのキックをイングランドの選手たちがミスなく処理し、切り返すことができるのか。

スクラム、ラインアウトの優劣はどうか。イングランドの若いFW陣が、エベン・エツベス(204cm、119kg、28歳)、ルード・デヤハー(205cm、122kg、26歳)、ピーター=ステフ・デュトイ(200cm、115kg、27歳)ら巨漢選手が並ぶ壁に、どのように挑むのか。エディー・ジョーンズHCは「フィジカルで圧倒したい」と話す。どちらが勝っても不思議のない僅差勝負になるはずだ。勝負を分けるのは、PG、あるいはドロップゴールの3点なのかもしれない。

11月2日、横浜国際総合競技場にて、午後6時キックオフ。レフリーは、フランス人とした初めて決勝戦の笛を任されたジェローム・ガルゼス。イングランドが勝てば2度目、南アフリカなら3度目の頂点だ。最強のフィジカル・バトルをお見逃しなく。

文:村上 晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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