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ラグビー コラム 2019年10月20日

オールブラックス強し!アイルランドの4強入りの夢を砕く。ラグビーワールドカップ日本大会・準々決勝 ニュージーランド vs. アイルランド レビュー

ラグビーレポート by 多羅 正崇
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「言い訳はないし、思い浮かばない」

2013年からアイルランドを率い、在任期間中に2度(2016、2018)オールブラックスを破ったジョー・シュミットHCは、試合後の記者会見で淡々と語った。

ついに始まったラグビーワールドカップ(W杯)の決勝トーナメントは、10月19日(土)、東京スタジアムで、ニュージーランド(NZ)×アイルランドの準々決勝を行った。

過去にW杯でベスト4に進出したことがないアイルランド。しかし「オールブラックス」ことNZ代表との直近3試合の対戦成績は2勝1敗。相性はけっして悪くなかった。

NZは試合前、マオリ族の伝統舞踊「ハカ」で、通常の「カマテ」ではなく、選手が特別と認めた試合で行われる「カパオパンゴ」が披露された。

するとハカの最中、観客席のアイルランド・サポ-ターが合唱で対抗。異様な雰囲気のなか、負けられない決戦はスタートした。


この日はオールブラックスの高い防御力が光った。

NZの前半のタックル成功率は、なんと99%(75回タックルして1回失敗)。1試合でも92%(アイルランドは82%)の成功率を誇った。

アイルランドは武器であるセットピース(スクラムとラインアウト)の獲得率が100%で安定していたが、敵陣でことごとくミスをして攻撃が継続しない。勝負所でのタッチキックのミスもあった。

逆にこのミスを突いたのがオールブラックスだった。

「オールブラックスがなんとかトライをした、という状況に持ち込む必要があったが、私たちのミスから得点を与えてしまった」(アイルランド・シュミットHC)

前半6分にSOリッチー・モウンガのPG(ペナルティーゴール)で先制したNZは、同14、20分にSHアーロン・スミスが連続トライ。いずれもゴール目前のラックから、手薄なラック脇を突いて仕留めた。

大舞台でミスが続くアイルランドに対し、NZはミスが少なく確実にチャンスをものにした。

前半32分には鋭いランを何度も披露していたWTBセブ・リースが、アイルランドの10番ジョナサン・セクストンへビッグヒット。

ボールがこぼれ、蹴り返した楕円球をFBボーデン・バリットが追いかけ、ドリブルでゴール目前へ進めて難なくトライ。相手のミスをトライに繋げる必殺カウンターが決まった。

アイルランドは前半終了間際のチャンスで、この日ジャッカルも見せたFLピーター・オマーニーが、ラックで寝転んだ相手へのコンタクトが反則に。

チャンスは潰えて、前半はNZリードの22-0で折り返した。

後半もNZペースは変わらなかった。同8分にゴール前でオフロードパスを受けたHOコディ・テイラーが後半初トライ。

DFのラインスピードを上げ、アイルランドからスペースと判断力を奪うNZは、さらに後半21分、SOモウンガのクロスキックからチャンスとなり、途中出場のFLマット・トッドがインゴールへ。ついにスコアは34-0になった。

約70分間無得点だったアイルランドだが、後半29分に念願の初トライ。ゴール目前の左スクラムから、CTBロビー・ヘンショーが防御内側の間隙をすり抜けた。34-7

NZは後半33分、FLアーディー・サヴェアの豪快なジャッカルからトライを生み出すが、アイルランドも同36分にゴール目前でFW攻撃。

ここでNZのFLトッドが反則でトライを防いだとしてシンビン(10分間の一時退出)となり、アイルランドにペナルティトライ(7点)が与えられる。41-14


残り3分で3トライ目を目指したアイルランドだが、SOセクストンに代わり投入されたジョーイ・カーベリーが不調。

判断ミスからピンチとなり、最後はFBバリットから、実弟で途中出場のジョーディー・バレットが右隅でダメ押しトライ。

祖父が亡くなったばかりで「今日は祖父のためにもいいプレーがしたかった」(FBバリット)と誓った舞台で、バリット兄弟の連係トライが最後に決まった。

完敗を喫したアイルランド。試合後には今大会での代表引退を宣言していたHOロリーベスト主将へ、両軍による花道が作られた。

代表123キャップの鉄人は「これからはサポーターとして緑のユニホームを着る」と試合後に赤い目で語った。

今大会でのHC退任を宣言していたアイルランドのシュミットHC。

欧州6か国対抗戦「シックス・ネーションズ」で優勝した2018年がチームのピークだったと囁かれていたが、指揮官もそれを認める旨の発言をした。

「シーズンを通じて調子が上がらず、残念だった。去年は素晴らしかったが、今回は調子の山を越えてしまった」

そしてアイルランドのHCを辞めることについては、「選手に感謝したい。サポーターの変わらぬ支援にも感謝したい。ロリー(・ベスト)と前任キャプテンのポール・オコンネルのリーダーシップは素晴らしかった。私の誇りだ」と語った。

圧倒的な強さで準決勝へ駒を進めたオールブラックス。

スティーブ・ハンセンHCは約70分間完封したディフェンスを勝因のひとつに挙げた。

「DFは大きい部分を占めています。ディフェンスはこのような試合の50%を占める。精神的な部分では90%を占めると思う。規律を守ること、相手を罰するようなタックルをしてエラーを誘うことです」

準決勝で対戦することになったイングランドについては「明日まで考えません」と発言を控えた。闘志を内に秘め、オールブラックスは次なるビッグゲームへふたたび歩き出す。

文:多羅 正崇

多羅正崇

多羅 正崇

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。

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