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ラグビー コラム 2019年10月13日

約60分間14名で戦ったアイルランド 総合力を見せつける7トライの快勝で準々決勝進出 ラグビーワールドカップ2019 アイルランド vs. サモア

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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日本代表の順位にも影響する戦いとして注目度が集まったプールAのアイルランド対サモアは、10月12日、福岡県の東平尾公園博多の森球技場で行われた。2勝1敗の勝ち点11で、暫定2位のアイルランドは、4トライ以上のボーナス点を獲得して5点を追加すれば、勝ち点16となり決勝トーナメントが決まるという戦いだった。一方のサモアは、すでにプール戦での敗退が決まっていた。試合はモチベーションの高さがそのまま反映される内容になった。


午後7時45分、サモアボールのキックオフで試合は始まった。前半3分、アイルランドは、サモアゴールに迫ったラインアウトからモールを押し込み、キャプテンのHOローリー・ベストが先制トライをあげる。SOジョナサン・セクストンのゴールも決まって、7-0。その直後、サモアのHOセイララ・ラムが危険なタックルでシンビン(10分間の一時退場)となる。8分、再びゴール前のラインアウトを得たアイルランドは、モールを押しきれないとみるや、左へ順目にボールをつなぎ、最後は、PRタイグ・ファーロンが125kgの巨体でタックルを弾きながらトライ。セクストンのゴールも決まって、14-0とする。

13分の時点でアイルランドのボール保持率は90%と、サモアに付け入るスキを与えずに攻め続けた。20分、FBジョーダン・ラーマ―がディフェンスを突破し、右手一本でセクストンにパス。セクストンがインゴール右中間に躍りこんで早くも3トライ目をあげる。スコアは、21-0。サモアもアイルランドのミスに乗じて攻め込み、NO8ジャック・ラムがトライし、21-5。そして、28分、アイルランドにとって試練の時が訪れる。


CTBバンディ・アキが、タックルの際に相手の顔面に肩をヒットさせたとしてレッドカード(退場処分)を受けたのだ。アイルランドのミスで転々とするボールに対して走り込んできたサモアのSOウルパノ・セウテニの体勢が少し低かったため、やや高めだったタックルが顎に入った。故意ではないとしても顔に肩がヒットすればレッドカードだ。このあとの約60分をアイルランドは14人で戦うことになった。


数的優位を利用しようと、サモアはパスでボールを動かしながら攻めたがミスを連発。トライまで攻め切ることができない。逆にアイルランドは、38分、サモアゴール前左隅のスクラムを得る。押し込むのかと思いきや、右から左へ走り込んできたセクストンにSHコナー・マレーがパスすると、サモアのディフェンスを振り切ってトライ。目標だった4トライを前半のうちに決めた。スクラムに集中したサモアをあざ笑うかのようなセクストンの技ありトライだった。


後半40分も14人で戦うアイルランドだが、強力FWを軸に数的不利を感じさせない戦いぶり。後半7分には、サモアゴール前のスクラムで反則を誘い、PKからの速攻でゴールラインに迫る。最後は右タッチライン際のFBラーマーヘSHマレーが矢を射るようなスピードあるパスを送りトライ。難しいゴールをセクストンが決め、33-5として、ほぼ勝利を決めた。後半なかばには、マレーに代えてSHルーク・マグラー、セクストンに代えてSOジョーイ・カーベリーとHB団を入れ替える余裕も見せ、7トライを奪う快勝。スクラム、ラインアウトの安定感、フィジカルの強さ、すべての面でサモアを上回り、決勝トーナメントに弾みをつけた。


キャプテンのローリー・ベストは日本代表に敗れたあと持ち直したことについて、次のようにコメントした。「敗戦後、(勝ち点で)10ポイントあれば(1次リーグを)通過できると分かっていたので選手たちは気合を入れていました」。バンディ・アキのレッドカードについては、「過去にもレッドカードで1人少なくなったことはあったし、今回も最終的にはパニックに陥らず対応できた」と語った。


プールA4位で大会を去ることになったサモアのジャック・ラムキャプテンは、潔く、感謝の気持ちを述べた。「日本のすべての人に感謝したい。素晴らしいホスト国だ。母国から来てくれたサモアのファンにもありがとうと言いたい。ベストを尽くせたと思う」。

文:村上 晃一

【ハイライト】アイルランド vs. サモア ラグビーワールドカップ2019 プールA

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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