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オールブラックス、9トライの猛攻 バレット3兄弟は、史上初の「兄弟ハットトリック」 ラグビーワールドカップ2019 ニュージーランド vs. カナダ
村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一バレット3兄弟。左からジョーディー・バレット、スコット・バレット、ボーデン・バレット
大分県でのラグビーワールドカップ初試合となったニュージーランド(オールブラックス)対カナダは、10月2日、大分スポーツ公園総合競技場で行われた。午後7時15分のキックオフ直前、オールブラックスの気迫あふれるハカが、34,411人の大観衆の心をわしづかみにした。湿度が高く、蒸し暑さが支配するフィールドで、オールブラックスは立ち上がりから徹底的に攻める姿勢を貫いた。
キックオフはカナダ陣10mラインを少し越える短距離で蹴り上げ、競り合ってボールを確保して連続攻撃を仕掛ける。4分、カナダゴール直前のスクラムでは、一気に押し込み、カナダの反則を誘ってペナルティートライを獲得。7-0とリードする。8分、今度はSOリッチー・モウンガのキックパスをキャッチしたWTBジョーディー・バレットが丁寧にボールをキャッチしてトライ。16分、CTBソニー=ビル・ウィリアムズ(SBW)が個人技でタックラーをかわして右手をインゴールに伸ばして3本目のトライ。モウンガのゴールも決まって、21-0とする。
その後のオールブラックスは、ハンドリングエラーが多く、パスがつながらなくなる。指先や前腕が汗で濡れ、ボールが滑りやすいのだ。決勝トーンメントであればパスを少なくするなど対策を立てただろう。しかし、この日のオールブラックスは難しい状況の中で縦横無尽にボールをつなぐスピーディーなラグビーにチャレンジした。前半20分過ぎ、ミスボールをカナダSHゴードン・マクローリーに拾われ、SOピーター・ネルソンにゴールラインに迫られたが、ここは、FBボーデン・バレットが懸命に戻ってタックルし、全員の素早いバッキングアップで守り切った。
31分、LOスコット・バレットがディフェンスを完全に崩し切った状況でインゴールに飛び込みながらノックオン。弟に続いてのトライを逃したが、35分、SBWがインゴールに地面を這うグラバーキックを蹴り込み、走り込んだ兄ボーデン・バレットがトライ。ボーナス点を獲得する4トライ目を決めて前半を終えた。タックル成功率96%という驚異的な数字が、ミスを繰り返しながらも無失点に抑えられた要因だ。
後半に入っても流れは変わらなかった。キックオフから1分も満たないうちにSBWがディフェンスを突破し、最後はWTBリーコ・イオアネにパスを送ってトライ。4分には、NO8キアラン・リードからパスを受けたスコット・バレットが、大事にボールを抱えてインゴールに走り込み、笑顔でバレット3兄弟のトライを締めくくった。
オールブラックスは最終的には9トライをあげ、63-0という快勝。プレーヤー・オブ・ザ・マッチは、正確なプレースキックで16点をあげたリッチー・モウンガが受賞した。ペナルティートライはゴールキックが不要のため、8本中8本という100%の成功率だった。オールブラックスのスティーブ・ハンセンヘッドコーチは、ミスの多い展開にも選手を称賛した。「とてもいいゲームだった。特に後半の前半はよく組織し、難しいコンディションでゲームをコントロールしてくれた。母国の皆さんはなぜ何回もボールを落とす場面があったのかといぶかるかもしれないが、湿気は信じられないくらいのひどさだった。それを考えると選手らはよくやってくれた」。
大差の中でも観客は大いに試合を楽しんでいるように見えた。オールブラックスの多彩な攻撃に加えて、カナダのあきらめない姿勢、激しいタックルが胸を打ったからだろう。カナダのキングズリー・ジョーンズヘッドコーチはこうコメントした。「選手たちとその頑張りを誇りに思う。前半16分から36分までの20分間はチャンスがあったのに我々の圧力をうまく使えなかった。でも最後の20分間、みんなよくやってくれて、真のカナダ人スピリットを示してくれた。オールブラックスの正確さ、スキル、スピードには感服する」
日本の環境に適応しながら向上心を失わないオールブラックス。その姿は、なぜ彼らがRWCを連覇したのかを世界に知らしめているようでもあった。
文:村上 晃一
【ハイライト】ラグビーワールドカップ2019 プールB ニュージーランド vs. カナダ
(c) Rugby World Cup Limited 2019
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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