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8月12日に発表されたワールドラグビーの世界ランキングで日本代表が史上最高位タイの9位に浮上した。2016年2月以来のことだ。7月27日から始まったパシフィックネーションズカップ(PNC)では、フィジー、トンガ、アメリカに3連勝。奇しくも、2015年のラグビーワールドカップ(RWC)前のPNCで敗れた3チームに勝っての優勝である。
日本代表が強くなったことは誰もが認めるところだろう。初戦のフィジーに対しては、立ち上がりから主導権を握ってボールを動かし、ディフェンスを揺さぶってスペースを作り、WTB福岡堅樹、松島幸太朗らが胸のすくトライを決めて見せた。抜群の攻撃力を誇るフィジーの特長を出させなかった点は高く評価できる。ラインアウトからのモールでトライされたが、この点は、8月3日のトンガ戦では修正。序盤のピンチを防いだ。
トンガ戦ではNO8アマナキ・レレイ・マフィ、PRヴァル アサエリ愛がパワフルにトライし、愛とFL徳永祥尭がダブルタックルで相手を押し戻すなど、コンタクト局面でのレベルアップも感じさせた。ただし、トンガ戦ではボールを持った選手が簡単に倒されてボールを奪われるシーンもあり、トンガの激しいプレッシャーの前にブレイクダウン(ボール争奪局面)には課題があった。
それを修正したのが8月10日のアメリカ戦だ。ボールキャリアーに対しての分厚いサポートでトライを奪っている。1試合ごとに課題は修正されたが、アメリカ戦では攻撃時のハンドリングエラーが目立った。3試合を通して、ミス、反則で相手にボールを渡すことが多く、ここが改善されない限り、RWCでアイルランド、スコットランドという強豪に勝利して決勝トーナメントに進むことはできない。
前向きに考えれば、勝って自信をつけながら多くの課題が見つかった。「変な自信をつけないほうがいい」というリーチ マイケルキャプテンの冷静なコメントもいい。RWC日本大会を前に収穫の多いPNC優勝だった。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチは「3試合で毎試合、数名の選手を代えて起用してきた。決勝戦にもかかわらずメンバーを代えたのはこの先を見据えてのもので、PNCの3試合をじっくり検証して、スコッドの構想に入りたい」と語った。最終登録メンバーの発表が楽しみだ。
パシフィック・ネーションズカップ2019 日本 vs. アメリカ ハイライト
日本がアメリカ代表に勝利した数時間後、オーストラリアのパースで、ザ・ラグビーチャンピオンシップ(TRC)の最終節が始まった。世界ランキング6位のオーストラリア代表ワラビーズが、1位のニュージーランド代表オールブラックスにチャレンジしたが、結果は47-26というワラビーズの勝利。これは両国の対戦でワラビーズ側があげた最多得点だった。2015年のRWCで準優勝して以降低迷していたワラビーズにとって、この勝利は計り知れない価値がある。RWC日本大会のプールDでは、ウェールズ、ジョージア、フィジーといった実力者がひしめき、決勝トーナメント進出すら危ぶむ声があったが、そんな不安を払拭できただろう。一方のオールブラックスは前半終了間際に仕事量の多いLOスコット・バレットがレッドカードを受けて退場になり、後半は14人で戦った。その中で2トライを奪うところに底力を感じる。2011年、2015年のRWCイヤーは今大会で優勝せず、RWCでは優勝している。本番には調整してくるだろうし、優勝候補の筆頭であることは間違いない。
TRC2019でもっとも輝いたのは、南アフリカ代表スプリングボクスだ。第1節でワラビーズを35-17で下し、第2節ではオールブラックスと16-16の引き分け。第3節はアルゼンチン代表プーマスを46-13で圧倒。TRCで初優勝を果たした。2012年にプーマスが加わる前のトライネーションズから数えれば、2009年以来の優勝だ。
プーマス戦のエベン・エツベス、フランコ・モスタートという長身LOコンビ、2mのFLピーター=ステフ・デュトイの活躍は出色だった。大きくて運動量豊富な選手が相手に圧力をかけ、俊足バックスリーがタッチライン際を駆け抜ける。RWCプール戦でのオールブラックスとの激突が待ち遠しい。その前に9月6日、このスプリングボクスと日本代表が対戦するというのは、多くの日本代表ファンにとって、期待と不安が入り混じる複雑な心境だろう。今大会では振るわなかったプーマスは、スクラムで苦しむ場面が多かった。多彩な攻撃力を持つだけに、セットプレーの安定がRWCでの躍進のカギになりそうだ。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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