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クルセイダーズが3連覇。参戦4年目にして決勝進出を果たしたジャガーズ(アルゼンチン)に今後も注目。スーパーラグビー2019 総括
村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一スーパーラグビー2019は、ニュージーランド(NZ)のクルセイダーズの3年連続10回目の優勝で幕を閉じた。レギュラーシーズンを独走で駆け抜け、精度の高いプレーで接戦をものにする安定感は抜群だった。プレーオフでも順当に決勝戦に進出したが、7月6日、本拠地のクライストチャーチで行われた決勝戦では、初めて決勝に進出してきたジャガーズ(アルゼンチン)相手に序盤にミスを連発。準決勝まで81トライをあげてきた決定力をもってしても、ジャガーズの好ディフェンスを崩せず、55%のボール支配を相手に許す我慢の戦いだった。
ジョージ・ブリッジと、トライを決めるコーディー・テイラー
クルセイダーズの真骨頂は前半25分のHOコーディー・テイラーのトライに集約されていた。相手陣10mライン付近にハイパントを蹴り上げ、キャッチしたジャガーズの選手からFLマット・トッドがボールをもぎとり、すかさず左ショートサイドを攻める。走り込んできたのは、203cmのLOサム・ホワイトロックだ。オールブラックスで108キャップを誇るベテランLOが大きなストライドで前進し、タックルされる直前に右側に走り込んできたテイラーに正確なパスを放つ。テイラーは前傾姿勢のまま一気にインゴール左中間に躍りこんだ。全員がチャンスに機敏に反応するクルセイダーズらしいトライである。しかし、トライはこの一本のみ。再三、トライチャンスを作るジャガーズの攻撃を分厚いカバーディフェンスで防ぎきっての勝利だった。試合後は、スコット・ロバートソンヘッドコーチが、恒例のブレイクダンスのパフォーマンスで笑顔を見せたが、ジャガーズの成長に危機感あるV3だった。
2月15日に開幕した今季のスーパーラグビーは、クルセイダーズとライオンズ(南アフリカ)という2年連続のファイナリストが白星スタートを切って幕を開けた。チーフス(NZ)では、2018年度の東海大学キャプテン、WTBアタアタ・モエラキオラが後半出場し、スーパーラグビーデビューを飾った。
クルセイダーズ、ブルズ(南アフリカ)ら実力者が白星を重ね、オーストラリアでは悲願のプレーオフ進出を目指すレベルズが開幕3連勝で気を吐いた。また、ブランビーズのHOフォラウ・ファインガは、スーパーラグビー2年目で才能がさらに開花。5試合連続でトライをあげるなど際立つ活躍でチームを勢いづけた。
クルセイダーズは前年から連勝を続けていたが、第5節、クライストチャーチで起きたテロ事件のためにハイランダーズ戦が中止になるアクシデント。これが、0-0の引き分け扱いになったことで連勝が19で途切れた。翌週の第6節、ワラターズ(オーストラリア)に初黒星を喫する。そのワラターズは、4月11日、スター選手のFBイズラエル・フォラウが同性愛者などへの暴言でチームから契約解除を言い渡されるというショッキングな出来事が起きた。サンウルブズも2020年を限りでスーパーラグビーから除外されることになるなど、何かと話題の多い中盤戦だった。一方で、サンウルブズでは、WTBセミシ・マシレワがお笑い芸人・江頭2:50のパフォーマンスを真似たトライ後の「エガちゃんポーズ」で客席を盛り上げ、さらなる人気者になっていく。
決勝 クルセイダーズ vs. ジャガーズ ハイライト
シーズンを通して混戦だったのが南アフリカカンファレンス。第9節を終えた時点で、ブルズが5勝3敗で首位に立ち、他の4チームが4勝4敗で並ぶという拮抗した展開が続いた。第12節、総合首位を走っていたクルセイダーズがシャークス(南アフリカ)に21-21で、まさかの引き分け。レベルズは今季初の3連敗。そして、第13節、ブランビーズがサンウルブズを33-0で下し、オーストラリアカンファレンス首位に躍り出る。フォラウ・ファインガはブルーズ(NZ)戦で3トライのハットトリックを達成し、ブランビーズは首位を守り、オーストラリアで1チームだけプレーオフに進出することになった。
プレーオフ進出枠の8チームは最終節まで確定しなかったが、最終的にはNZが前年と同じく5チーム中4チームが進出。南アフリカでは、最終節でシャークスがCTBルカンヨ・アムの劇的トライでストーマーズを下して、3位に滑り込み、ジャガーズ、ブルズとともにプレーオフへ進み、2年連続で決勝に進出したライオンズは南アフリカ4位に沈んだ。トライ王はクルセイダーズの新鋭WTBセヴ・リース(15トライ)、得点王はブルズのSOハンドレ・ポラード(194点)。クルセイダーズのSOリッチー・モウンガが最後に追い込んだが、182点で届かなかった。
クルセイダーズの3連覇も印象的だが、今季の主役はジャガーズだった。参戦4年目にして初めて南アフリカカンファレンス首位に立ち、初の決勝進出。主力をアルゼンチン代表で固めての継続強化が実った。決勝戦ではアウェイの環境をものともせず、課題のスクラムもクルセイダーズに対抗し、強固な組織ディフェンス、個々のタックルの的確さは勝るとも劣らなかった。プロリーグであるスーパーラグビーと、国と国が威信をかけて戦うRWCは別とはいえ、この経験はアルゼンチン代表に必ず生かされるだろう。
スーパーラグビーで活躍した選手たちが、各国代表でRWC日本大会にやってくる。ニュージーランド代表オールブラックスの10番は、ボーデン・バレットかリッチー・モウンガか。トライ王セヴ・リースはRWCメンバーに残れるか。7月20日開幕する「ザ・ラグビーチャンピオンシップ2019」でのニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンの戦いからも目が離せない。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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