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2トライを決めたマティアス・オルランド(ジャガーズ)
スーパーラグビー2019のファイナルを戦うのは、ニュージーランド(NZ)のクルセイダーズと、アルゼンチンのジャガーズということになった。試合は7月6日(日本時間16:35)、レギュラーシーズン総合首位のアドバンテージで、クルセイダーズの本拠地クライストチャーチで開催される。
6月29日に行われた準決勝を振り返っておこう。ジャガーズは、地元ブエノスアイレスでオーストラリアのブランビーズを迎え撃った。スクラムに不安のあるジャガーズに対して、ブランビーズがプレッシャーをかけ、反則を誘ってタッチキック、ゴール前のラインアウトから得意のラインアウトモールでトライを奪う。そうなればブランビーズのペースになると思われていたのだが、ジャガーズは賢く戦った。前半4分、防御背後への短いキックを上げ、ブランビーズがキャッチミスしたところを、SHトマス・クベッリがボールを拾い上げてトライ。8分、13分、SOホアキン・ディアス・ボニージャがPGを2本追加し、13-0とリードする。
ジャガーズは自陣にブランビーズを入れないように、キックを多用し、攻めてはミスなくボールをつないだ。スクラムを少なくすることにも成功。初めてのスクラムは前半16分だった。前半19分、ゴール前のラインアウトからモールを押し込み、続いて両LOが連続して突進。トマス・ラバニニがトライをあげ、20-0と大量リードを奪った。これでやや気が緩んだのか、22分、初めて自陣で反則を犯し、攻め込まれた位置でブランビーズボールのラインアウトとなる。しかし、ボールを奪ったのはジャガーズだった。スチールはこの日3本目で、直後、4本目のスチール。ラインアウトでもブランビーズに得意の形を作らせなかった。
ブランビーズも前半40分、ようやくラインアウトのモールからFWが連続的に突進し、HOフォラウ・ファインガがトライを返したが、結局、得点したのはこれのみ。ディフェンスのラインスピードの速さ、的確なタックルでもジャガーズが上回った。最終スコアは、39-7。2016年のスーパーラグビー参戦以来、4年目で初の決勝進出である。継続的な強化で選手個々のスキル、組織力ともに向上しており、この流れは同国代表プーマスにも引き継がれるだろう。ジャガーズの強さにスタンドは試合中から大変な盛り上がりだったが、プレースキックの際には静まり返るなど、ラグビー本来の観戦マナーは守られていた。選手と観客が規律正しく一体となった勝利だった。
スーパーラグビー2019 準決勝 ジャガーズ vs. ブランビーズ ハイライト
スーパーラグビー2019 準決勝-2 クルセイダーズ vs. ハリケーンズ ハイライト
同日、行われたもう一つの準決勝は、NZラグビーのエキスの詰まったハイレベルの攻防になった。前半2分、クルセイダーズはSOリッチー・モウンガのPGで先制。13分には、ハリケーンズ陣へのハイパントを追ったWTBジョージ・ブリッジが相手と競り合いながらクリーンキャッチし、すぐにボールを動かして、CTBライアン・クロッティが右タッチライン奥のスペースに正確にキック。これをWTBセヴ・リースが俊足を飛ばして追い、拾い上げてトライ。10-0とリードを広げた。
ハリケーンズも前半終了間際、CTBンガニ・ラウマペがトライし、後半開始早々にもWTBベン・ラムのトライで、13-12と追い上げる。NZラグビーが得意とするのは、相手のミスなどで起きたアンストラクチャー(組織化されていない状況)からトライを奪うスタイルだ。アンストラクチャーが起きるまでは辛抱強くディフェンスする。その息詰まる攻防が、この試合では80分続いた。
後半18分、クルセイダーズがリースのトライで27-19とすると、その直後、ハリケーンズがペレナラのトライで27-26とする。モウンガのPGで30-26となった残り8分も、ハリケーンズが攻め続け、クルセイダーズが辛抱強くディフェンスするシーンが続いた。トライ数はハリケーンズが「4」で勝ったが、クルセイダーズはモウンガが3トライ後の3ゴール、3PGを完璧に決めた。ハリケーンズは1ゴール、1PGを外しており、キックの正確さが明暗を分けたことになる。
最後はハリケーンズがペレナラのノックオンでチャンスを逸し、その後、ノーサイドとなった。ゴール前に攻め込んだブレイクダウン(ボール争奪戦)からボールを出そうとしたペレナラ。そのボールを奪おうとしたクルセイダーズLOサム・ホワイトロックの手がボールに触れていたからこそのノックオン。反則すれすれにも見えた。しかし、ペレナラは何も言わず天を仰いだ。その表情に、ぎりぎりの攻防を繰り広げた者同士の尊敬や誇りを感じる好勝負だった。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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