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●第2試合「桐蔭学園×京都成章」(12:20キックオフ)
関東1位のセンバツ2連覇王者・桐蔭学園と、近畿1位の京都成章が激突。ラストワンプレーが勝敗を分ける激闘となった。
京都成章が多くの時間帯で優勢だった。前半5分、敵陣でのターンオーバーからWTB西川彪馬(3年)が左隅で突破、フォローのFL延原秀飛(3年)が速攻を仕留めた。万能な2年生SO辻野隼大がコンバージョン成功。京都成章が7点を先取した。
桐蔭学園もSH亀井健人(3年)が間隙をすり抜けて独走トライ。1トライ1ゴールを返して同点とした。しかし大会随一のサイズ、タレントを誇る京都成章は強力だった。PR西野拓真(3年)、NO8村田陣悟(3年)はボールを持てば確実に前進。LO本橋拓馬(2年)は防御も激しく、LO山本嶺二郎(3年)はラインアウトで抜群の存在感。
俊足ハーフ団・SH宮尾昌典、SO辻野は強気にチームをリードし、先月まで1年生だったと思えない安定感でチームを前進させた。すると前半18分、京都成章は大型FWに目がいった相手防御のスキを突き、SH亀井が抜け目なくトライ。さらに前半23分のPG加点により、京都成章の10点リード(7-17)で前半を折り返した。
桐蔭学園が反則を重ねたこともあり、後半も序盤は京都成章ペース。後半5分にもPGを追加して、京都成章のリードはこの日最大の13点(7-20)に。密集戦ではFL三木皓正キャプテンのジャッカルなどでインゴールを割らせなかった。
しかし京都成章は次第に防御ラインの整備、接点でのリアクションで後手に回ってしまった。桐蔭学園はそんな相手のスキを突いた。後半15分にはキックカウンターから敵陣へ入ると、ループを交えて右サイドを攻略。フルバックの適性もあるWTB秋濱悠太(2年)が、外にもう一人余らせた状態でフィニッシュ。ゴール成功で6点差(14-20)に。
1トライ1ゴールで逆転の桐蔭学園。
一方の京都成章は後半22分ごろ、敵陣でペナルティを獲得し、PGチャンスがあった。そのときベンチにいた指揮官の湯浅泰正監督はPGを指示。しかしピッチ上のメンバーは、左ゴール前ラインアウトを選択。この直前にキッカーのSO辻野も怪我により途中交代していた。トライを狙った京都成章。しかしラインアウトで競られてボールが乱れ、捕球はしたがカウンターラックに遭い、ボールを奪われた。
「(ゴール前ラインアウトの選択は)最終的に僕が判断しました。モールも押せていたので。今回は勉強になりました」(京都成章・FL三木キャプテン)
ここから桐蔭学園は相手ペナルティから速攻するなど、相手を休ませない戦い方で攻勢に出る。しかしラストパスがスローフォワードになるなど、再三のチャンスを活かせず、ついに後半ロスタイムへ。
京都成章が桐蔭学園の3連覇を阻止――。そんな見出しもよぎった後半ロスタイム、時間を使おうとした京都成章がラックで反則。
桐蔭学園に攻撃権が渡り、後半ロスタイム、敵陣10mスクラムを選択する。ここで驚異的なラン能力を持つ桐蔭学園のSO伊藤大スケ(示右)キャプテンは、相手の防御裏が無人であることに気がついた。
「最初は一発サインをやる予定でしたが、相手のフルバックが上がっていたので、自分の判断でセンターに(プレーを)伝えました」(桐蔭学園SO伊藤)
選んだプレーは、防御背後の無人エリアへのチップキック。キックの瞬間、熊谷ラグビー場がどよめいた。
「ベンチは予測してましたけど『まさか蹴らへんやろな』と言っていました」(京都成章・湯浅監督)
転がったキックをチェイスする桐蔭学園。SO伊藤がボールをドリブルし、デッドゴールライン手前で押さえたのは、FL久松春陽大(3年)だった。
トライの笛が鳴り響く。電光掲示板のスコアは19-20に。そしてゴール正面のコンバージョンが成功。桐蔭学園サイドに雄叫びが響いた。チップキックという勝負手による劇的な逆転勝利だった。
京都成章の湯浅監督は、選手が指示したPGを選ばなかった場面について「監督の指示を無視して、ベンチで『南アフリカ戦になるかな』と言っていたんですけどね。でもそれも彼らの選択だし、それを含めて良き経験をしてくれたと思います。最後のギャンブル(チップキック)は流石です」
「チームを束ねていた10番(SO辻野)が怪我をしたのが痛かったですね。3連覇を阻止したかったですけど、残念でした」と激闘を振り返った。
センバツ3連覇まで、あと1勝となった桐蔭学園の藤原秀之監督。
「後半10分くらいしかウチのラグビーをしていなかったです。相手が大きかったので。勝ちを拾ったような試合でした。今日はほぼ京都成章さんのゲームでした」
「最後も何をやるかなと思っていたら、フルバックが上がっていたのを見ていたんでしょう。あれ(チップキック)はイチかバチかのプレーですね」
センバツ3連覇が懸かる御所実業との決勝戦については「(御所実業には)勝ったことが一度もないです。花園も選抜も。モールもディフェンスが強いですね」と警戒していた。
この大会6日目の激闘により、決勝戦のカードは「桐蔭学園×御所実業」となった。
平成最後のセンバツ王者の栄冠に輝くのはどちらか。運命の選抜ファイナルは4月7日、熊谷ラグビー場で午前11時に火蓋が切って落とされる。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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