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「ポジティブな負けだと思っています」と、試合後の記者会見でリーチ マイケルキャプテンは話し始めた。「80分間の中で良いところはいっぱいありました。ディシプリン(規律)、セットプレーのところがもっと良くなれば、展開は変わっていたと思います」。キャプテンが端的に語った通りの試合だった。
10月26日、午後7時キックオフ。新装された東大阪市花園ラグビー場には、16,846人の観衆が集った。LEDライドによる照明設備は日本代表の登場直前に照明を落とし、ピッチに現れた瞬間に明るくなるという演出を可能にし、観客席を大いに沸かせた。
立ち上がりから素早く仕掛けてゴールに迫った日本代表だったが、世界選抜の激しいタックルの連発にトライまでは持って行けず、逆に前半10分、俊足WTBテヴィタ・リーにタッチライン際を抜け出され、SOライオネル・クロニエに先制トライを許した。15分、クロニエのアクロバティックなパスからWTBトニ・プルがトライ。日本の猛攻をはねのけた堅実なタックル、リーの爆発的なスピード、クロニエの難しい体勢からのパスなど、この2トライだけで、個人スキルの差は明らかだった。
2015、2017年に続いて3度目の世界選抜の対戦は、体格も大きく、個人技に優れた相手に、いかにチームとして立ち向かうかという、いつも通りの課題を感じる試合になった。21分、日本代表もWTB福岡堅樹がトライを返す。SO田村優のキックパスはやや後方にずれたが、それがかえって福岡のスピードを生かす結果になり、オールブラックスのFBネヘ・ミルナースカッダーをステップでかわすという、胸のすくトライにつながった。福岡はこのプレー以外でもボールを持てば必ずゲインして気を吐いた。しかし、日本国内であれば次々にタックルをかわして突進するレメキ ロマノ ラヴァ、リーチ マイケルらですら、なかなか前進できなかった。それが世界のトップレベルの選手のディフェンス能力の高さだし、それを実感できるからこそ、この試合をやる価値はあった。それは、ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチが望んだことでもあった。
ポジティブな面を書けば、ディフェンスライン全体で前に出るスピードは試合の終盤にも落ちなかったし、世界選抜に疲れが見えた後半は何度もディフェンスを破ることができた。昨年の対戦時に比べれば、チームとしてレベルアップしたのは間違いない。後半34分、SO松田力也のインゴールへのキックを追ったCTB中村亮土のトライで、28-31という3点差に迫ったところで勝利は目前だったが、最後は連続攻撃の中でのハンドリングエラーが出てしまいノーサイドとなった。
チャンスでミスや反則が起こるのは、判断ミスが要因になっていることが多かった気がする。ディフェンスのいないスペースを作り出して的確に攻める。その判断、遂行するスキルは引き続き向上させなくてはいけない。ディフェンスについても世界選抜の選手に比べて個々のタックルの精度は低かった。しかし、一番の問題点は、スクラム、ラインアウトが不安定だったことだろう。ここを安定させない限り、来年のラグビーワールドカップでの決勝トーナメント進出は達成できない。
世界選抜は、後半開始早々にワイアット・クロケット(元ニュージーランド代表、193cm、118kg)、ベン・アレクサンダー(元オーストラリア代表、189cm、120kg)というベテランPRが出てきて日本代表に圧力をかけた。ラインアウトも、203cmのジェイソン・ジェンキンス、201cmのサム・カーターの長身LOの存在で日本代表は苦しめられた。しかし、逆に言えば、11月3日のニュージーランド代表戦、17日のイングランド代表戦に向けて良いレッスンを受けたということだ。セットプレーの早急な修正が求められる。
「結束するのに時間がかかると思っていた」と、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ。10月中旬まで続いたトップリーグの激闘を休止してメンバーが集合したこともあり、今秋の国際試合のスタートとしては悪くない内容というのが、コーチ、選手の一致した見解だろう。しかし、ここから、ニュージーランド、イングランド、ロシアと続く3連戦に向け、急ピッチでチーム力を上げていなくては良い結果は得られない。振り返れば、あの世界選抜戦がきっかけだったと言えるようなレベルアップを見せてほしい。
日本代表対世界選抜結果
10月26日、東大阪市花園ラグビー場
日本代表●28-31◯世界選抜(前半7-24)
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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