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ラグビー コラム 2018年3月27日

3年目の挑戦は試練の日々が続いている ヒトコム サンウルブズの序盤戦を総括

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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田村優

ヒトコム サンウルブズは開幕から5連敗で序盤戦を終えた

スーパーラグビー3年目の挑戦は試練の日々が続いている。3月24日(土)のチーフス(ニュージーランド)戦が終了した時点で5連敗。チーフス戦は61失点という今季のワースト記録の大敗だった。

ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチ(HC)が兼務し、日本代表との連携を密にしながらの船出は期待感を抱かせるものだった。2月24日(土)の初戦では、オーストラリアの強豪ブランビーズと僅差勝負を繰り広げ、秩父宮ラグビー場に集ったファンを大いに沸かせた。前半8分のWTBホセア・サウマキ、SOロビー・ロビンソンらBK陣も参加してのモールのトライ、28分、サイマキの左コーナーへのトライは勝利の可能性を感じさせた。攻撃面でもHO堀江翔太、NO8ヴィリー・ブリッツらがSH流大のフラットなパスに走り込み、サンウルブズ・スタイルのボールの動かし方を披露できていた。

ホセア・サウマキ

ホセア・サウマキはチーム・オブ・ザ・ウィークに選ばれるなど活躍を見せた

スーパーラグビーの公式サイトで発表されたこの節の「チーム・オブ・ザ・ウィーク」(週間ベスト15)には、サンウルブズから4名が選出されている。FL姫野和樹、ピーター・ラブスガフニ、CTBラファエレ ティモシー、WTBホセア・サウマキである。姫野は16回、ラブスカフニは22回、ラファエレも17回のタックルを決めた。すさまじかったのは、WTBホセア・サウマキの活躍で、BK最高の16キャリー、111mのゲイン、5回のクリーンブレイク、7人のディフェンダーをかわしの2トライという数字をたたき出した。

しかし、この試合で負傷者が多く出たこともあり、その後のサンウルブズは組織だった攻撃が継続できず、守っても連携を欠いてあっさりトライを獲られるシーンが増えた。2戦目のレベルズ(オーストラリア)には、17-37で完敗。南アフリカに渡ってのシャークス戦は、22-50と点差も広がった。明るい兆しが見えたのは、4戦目のライオンズ戦。2年連続準優勝のチームに対し、激しく前に出るディフェンスでミスを誘い、LO姫野和樹のインターセプトからの独走トライなどで、38-40と追い詰めたのだ。だが、その上り調子を維持することはできなかった。負傷や疲れなどで11名のメンバー変更をしたチーフス戦は、スピード、パワー、あらゆる面で後手をふみ、10-61という大敗を喫する。

堀江翔太

ラインアウトは今後修正しなくてはいけない喫緊の課題だ

スタッツ(統計数値)で5試合を見ると、ボールキャリー(ボールを持って突進する回数)は「554回」で全体の4位も、トライ数は「15」で10位。チャンスを生かせない歯がゆさが表れている。セットプレーでは、スクラムの成功率が93%で3位と健闘しているが、ラインアウトは76.8%で最下位。ラインアウトは深刻だが、スクラムでもライオンズ戦で唯一ボールを奪われたスクラムからトライを奪われるなど勝負所で踏ん張れないシーンがあった。スクラムの成功率の高さを勝利に結びつけられていないのだ。タックルの成功率は83.8%で6位。悪い数字ではないが、15チーム中最多の33失トライ、220失点を考えれば、タックルすることもできず、組織防御が崩壊していることが多いということでもある。ラインアウト、ディフェンスは今後修正しなくてはいけない喫緊の課題だ。

チーフス戦を見て明らかなように、個々のパワー、スピード、スキルとあらゆる面で上回る相手と互角以上に戦うのは組織プレーを磨き上げるしかない。試合後、堀江翔太が「チームとしてかみ合わなかった。お互いがあうんの呼吸というところまで、やらないといけないと思った」とコメントした通り、メンバーを固めて試合を重ねる必要がある。負傷者が多いためにメンバーを固定できない事情は理解できるが、なぜ多くの負傷者が出るのかも検証しなければいけないだろう。トレーニング、戦術に問題があるのか、相手の個々のレベルが高いために無理なプレーで対抗しているのか。前に出る防御ラインのスピードを上げようとするあまり、タックル時に体勢が崩れていることもある。それらを検証し、細かなスキルを磨き上げる余地があるということだろう。

マイケル・リトル

マイケル・リトルらスーパーラグビーで十分に戦える資質を証明している選手もいる

もちろん、課題ばかりではなく、個々には明るい材料も多い。第2節の週間ベスト15に選出された4名の他にも、昨年の怪我から復帰して以前と変わらない低いタックルを繰り出すHO庭井祐輔、控えが多いものの出場すれば必ず好パフォーマンスを見せるFL徳永祥尭、ボールを持てば必ず前に出るCTBマイケル・リトルらスーパーラグビーで十分に戦える資質を証明している選手もいる。チーフス戦後、ジョセフHCは言った。「スーパーラグビーは容赦ないリーグ。今後は、ベスト8に行けるグループと、行けないグループに二極化する。残念なのは、サンウルブズが行けないグループにいることです」。だとすれば、残りの11試合をどう戦うか。2019年の日本代表強化という存在意義を考えれば、現状の戦力で、できる戦術、できない戦術を見極め、削ぎ落とす作業を着実に進めてもらいたい。日本代表につながっていることが、もっと分かりやすい形で見えてくれば観客も増やせるはずだ。

今季6戦目は、4月7日(土)、秩父宮ラグビー場にオーストラリアのワラターズを迎える。同国代表を多数擁する相手に、5連敗で得た教訓を生かした戦いを見せてもらいたい。

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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