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モータースポーツ コラム 2026年2月20日

1分に31億円を投じる価値、F1とNFLがクロスオーバーする巨大経済圏

F1コラム by J SPORTS 編集部
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史上最高のQBの一人と称されるペイトン・マニングと話すハミルトン

近年のアメリカにおけるF1人気の高まりは、もはや一時的なブームの枠を超えた。『Netflix』のドキュメンタリーシリーズ『Drive to Survive(栄光のグランプリ)』の成功や、マイアミ、ラスベガスでのグランプリ開催を背景に、F1は北米のスポーツマーケットに深く根を下ろしている。

その象徴とも言えるのが、今季から11番目のチームとしてグリッドに並ぶ、米国大手ゼネラルモーターズ傘下のキャデラックの存在だ。セルジオ・ペレスとバルテリ・ボッタスという、経験豊富なベテランコンビを擁して参戦する彼らの動向には、世界中から熱い視線が注がれている。

1億人超の視線を狙った1分の勝負

2026年2月8日、全米が熱狂する第60回スーパーボウルが開催された。シアトル・シーホークスがニューイングランド・ペイトリオッツを下したこの一戦は、NFL公式サイトによると、平均視聴者数が1億2,490万人を記録したという。キャデラックはこの「全米がスクリーンに釘付けになる瞬間」を、ブランド発信の勝負所に選んだ。

彼らが仕掛けたのは、スーパーボウル中のCM枠でのマシンのリバリー初披露だ。映像には、1962年にジョン・F・ケネディ大統領が行った伝説の「ムーン・スピーチ」を引用。「我々は月に行くことを選ぶ」という力強いメッセージをF1という頂点への挑戦に重ね合わせ、全米に鮮烈な印象を植え付けた。

『USA TODAY』によれば、キャデラックF1のダン・タウリスCEOは、1分の広告枠を確保するために2,000万ドル(約31億円)を投じたと明かしている。

競技の枠を超えたファンの争奪戦

これほどの巨額投資に踏み切った意図について、タウリスCEOはF1参戦の第一歩として、明確なメッセージを示したかったと述べたと『BBC』は報じている。

彼が見据えているのは、サーキット内でのライバル対決だけではない。スポーツ界全体を俯瞰すれば、スーパーボウルを筆頭に、野球、プレミアリーグ、そして今年開催されるFIFAワールドカップなど、あらゆるスポーツエンターテインメントがファンや資本、視聴時間を奪い合うライバルになる。

「常に関心を集めるための新しい方法を見つけ続け、ストーリーテリングを通じてファンに届ける必要がある」とタウリスCEOが強調するように、現代のF1チームには、単なるレーシング集団を超えたメディア戦略が求められている。

ハミルトンとNFLスターが示す新たな関係性

この戦略的な動きは、ドライバー側にも波及している。スーパーボウルのVIPスイートには、ルイス・ハミルトンの姿があった。キム・カーダシアンとの同席がセレブリティメディアを騒がせたが、モータースポーツの文脈で注目すべきは、彼とNFLのビジネス的な繋がりだ。

ハミルトンは2022年からデンバー・ブロンコスの共同オーナーを務めており、もはやNFLは彼にとって単なる趣味ではない。一方、アルピーヌF1には、カンザスシティ・チーフスのパトリック・マホームズやトラビス・ケルシーといったNFLのスター選手たちが投資家として名を連ねている。トップアスリート同士が互いのフィールドに資本を投じ、価値を高め合う「クロスオーバー」は、今やスタンダードになりつつある。

さらに、ハミルトンはハーフタイムショーを盛り上げたプエルトリコ出身のラッパー、バッド・バニーのパフォーマンスにも触れている。『ESPN F1』の公式Instagramによれば、ハミルトンは全編スペイン語で行われたステージに対し、自身のカリブ系のルーツを重ねながら「歴史上、最も重要なショーの一つ」と絶賛。社会の分断が叫ばれる時代において、スポーツと音楽が掲げる「団結」や「愛」のメッセージに共感を表明している。

両者に通じる本質

F1とNFL。競技の性質は違えど、その本質には驚くほどの共通点がある。どちらも主役の背後には膨大なスタッフと最先端テクノロジーが控え、1秒、1センチを争うために緻密な準備が積み重ねられている。華やかな表舞台の裏で、冷徹なまでの戦略が張り巡らされている点も同じだ。

2017年にF1の商業権を取得したリバティ・メディアの下、F1はエンターテインメント色を強化し、NFL型の演出とも親和性を高めてきた。キャデラックによるスーパーボウルCMは、まさにその象徴だ。

拡がる二つの巨大市場

2026年シーズン、この二つの巨大マーケットのクロスオーバーはどこまで進むのか。サーキットとフィールドという異なる舞台で繰り広げられるエンターテインメントとビジネスの融合に、引き続き注目していきたい。

文:J SPORTS編集部

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