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マクラーレンのランド・ノリス
本番で最高のパフォーマンスを発揮するため、トップアスリートは競技に特化したワークアウトに取り組み、食事や睡眠を管理し、メンタル面のケアにも気を配る。それは彼らにとって日常であり、F1ドライバーも例外ではない。
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極限の負荷に耐えるための準備
中でもF1ドライバーは、他競技と比べても特異な身体的負荷にさらされる。強いブレーキング時にはペダルに約160kgもの力を加え、高速コーナーでは常時4〜5G程度の負荷が身体にかかる。これは、ロケット発射時に宇宙飛行士が受ける加速度を上回るとも言われている。
しかも、備えるべきなのは通常の走行時だけではない。命に関わるアクシデントへの耐性も求められる。F1公式サイトによれば、2007年カナダGP決勝でのクラッシュでは、ロバート・クビサの身体に最大75Gもの衝撃が加わっていたという。結果的に足首の捻挫で済んだとはいえ、その数字が示す過酷さは想像に難くない。
こうした極限状態に対応するため、ドライバーはシーズン前から綿密な評価と準備を重ねる。マクラーレンのランド・ノリスは、2025年にチャンピオンに輝いたシーズン開幕前、自身のYouTubeチャンネルで“アセスメントデー(評価の日)”の様子を公開した。ノリス自身が「一年で最悪の日」と語るこの日は、さまざまなメニューを通じて身体の状態を数値化する重要な一日だ。パフォーマンスコーチのジョン・マルヴァーンは、ここで得られた膨大なデータをもとに、「ラップタイムを失う可能性がある要素を洗い出す」と説明している。
ランド・ノリスが公開した動画
How I prepare for an F1 season
最優先で鍛えられる首
F1ドライバーが特に重点を置く部位が、首だ。頭部にレジスタンスバンドを装着してGフォースを再現したり、ウエイト入りヘルメットや専用のネックデバイスを使って、高速コーナーでの負荷をシミュレートする。
『Men’s Health』によれば、映画『F1/エフワン』で主演を務めた61歳のブラッド・ピットも、専属トレーナーの指導のもとで首のトレーニングに取り組んだという。
セバスチャン・ベッテルの元コーチであるアンティ・コンツァスは、首を強化し頭部の揺れを最小限に抑えることで、ドライバーは進行方向を正確に捉え続けることができるという。そのわずかな精度の差が、コンマ1秒を争うF1の世界では結果を左右する。
鍛えすぎないことも戦略の一つ
もちろん、首だけでなく全身のトレーニングは欠かせない。ただしドライバーたちは、筋肉量を過度に増やさないことも強く意識している。ドライバーとマシンの総重量が、そのままレースタイムに影響するからだ。そのためトレーニングの目的は、筋肥大ではない。機能性や効率性、そして柔軟性を重視し、必要な強さだけを確保する。無駄な重量をいかに増やさずに済ませるか。そのバランスこそが、F1ドライバーの身体づくりの要と言える。
心肺機能を支える有酸素トレーニング
高い集中力を長時間維持するためには、心肺機能の強化も不可欠だ。ランニングやサイクリングといった基本的なメニューに加え、メルセデスのアンドレア・キミ・アントネッリはプールでのトレーニングを自身のSNSで紹介している。フェラーリのシャルル・ルクレールはクロスカントリースキーを取り入れ、高地で心肺機能を鍛えるなど、その方法はさまざまだ。アプローチは異なるが、いずれもレース距離を戦い抜くための土台づくりという点では共通している。
心と身体を整えるパデルという新たな選択
もっとも、長いシーズンを戦い抜くために必要なのは、ハードなトレーニングだけではない。心身をリセットする適度な気分転換も重要だ。そこで近年、多くのF1ドライバーが取り入れているのが、ヨーロッパを中心に競技人口が急増しているラケットスポーツ、パデルである。
フェルスタッペンは10本以上のラケットを所有し、レースウイークにはノリスやアストンマーティンのフェルナンド・アロンソ、元チームメイトの角田裕毅らとプレーしてきた。また、マクラーレンのオスカー・ピアストリはウイリアムズのアレクサンダー・アルボンとプレーするなど、チームの垣根を越えて親しまれている。
パデル専門サイト『Trust Padel』によれば、アルピーヌのピエール・ガスリーはプロのパデルチームを共同創設するほど、この競技に魅了されているという。
F1ドライバーの間でパデルが支持される理由は明快だ。心肺機能、反射神経、体幹持久力を同時に鍛えられるうえ、四方の壁を使った予測不能なラリーは、レース中の瞬時の判断力にも通じる。
そして何より、精神面での効果が大きい。相手との接触がなくケガのリスクは低く、ルールはシンプル。それでいて競争心を刺激する。ダブルスが基本のため自然とコミュニケーションが生まれ、適度に身体を動かしながら張り詰めた神経を解きほぐすことができる。欧米を中心にアスリートのメンタルヘルスが取り沙汰されている昨今、F1ドライバーたちが実践するコンディション管理のあり方は、他競技にとっても一つのヒントになるかもしれない。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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