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元フェラーリF1ドライバーのフェリペ・マッサ(写真中央)
現地11月20日(木)、元フェラーリF1ドライバーのフェリペ・マッサが、2008年シーズンの“Crashgate(クラッシュゲート)”事件をめぐって起こした訴訟について、審理が正式に進められることが決定した。
クラッシュゲートの全容と2008年の行方
2008年のシンガポールGP決勝。チャンピオン争いに絡んでいたマッサはポールポジションからレースを開始した。しかし、ルノーのネルソン・ピケJr.がクラッシュし、セーフティカーが導入されたことで一転、レースの流れは大きく変わる。最終的にマッサは13位に沈み、ピケJr.のチームメイトだったフェルナンド・アロンソが勝利を収めた。そしてシーズンを通じてわずか1ポイント届かず、タイトルはルイス・ハミルトンの手に渡った。
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ピケJr.の告白がもたらした波紋
事故が“事件”へと発展したのは翌2009年。シーズン途中にルノーから放出されたピケJr.が、当初は自身のミスとしていたそのクラッシュが、チーム幹部の指示による故意のものだったと告白。契約延長が危ぶまれる中で逆らえなかったと明かし、チーム代表フラビオ・ブリアトーレとエンジニアリングディレクターのパット・シモンズが処分を受ける事態に発展した。
『Motor Sport Magazine』によれば、その後「シンガポールGPの結果は無効とすべきだったのではないか」という声が徐々に広まり、マッサ自身もこの考えを長く主張してきた。当時のマッサは、FIAに再調査を促すだけの確たる証拠も、提訴に踏み切る材料も持ち合わせておらず、フェラーリからも法的措置を控えるよう助言されていたという。
エクレストンの衝撃告白が引き金に
流れを変えたのは、2023年に『F1-Insider』で公開されたバーニー・エクレストンのインタビューだった。当時F1の最高責任者だったエクレストンは、FIA会長のマックス・モズレーとともに、クラッシュの意図性を裏付ける十分な証拠を把握していながら調査を行わなかったと発言。『The Race』によれば、エクレストンは「当面は何もしないと決めた」「スポーツを守り、大スキャンダルを避けたかった」「シンガポールのレースは無効にせざるを得なかっただろう」などと語っていたという。
これを受けてマッサは、故意のクラッシュとその隠蔽が、自身のチャンピオンシップ獲得を妨げたとして動き出す。数カ月後には6,400万ポンド(約131億円)もの損害賠償を請求し、FIA、フォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)、そしてエクレストンを相手取り正式提訴の手続きを開始した。
被告側の反論と訴訟の争点
被告側は、提訴の時期が遅すぎる点、そしてシンガポールGPで敗れた要因はマッサ自身とフェラーリのミスにあると反論し、訴訟棄却を申し立てた。しかし2年に及ぶヒアリングと手続きを経て、今月ついにロンドン高等法院でロバート・ジェイ判事が審理続行を認めた。
ジェイ判事は、2023年のインタビューが公開されるまでマッサには隠蔽行為を知る手段がなかったとして、時効を理由とした被告側の主張を却下。一方で、2008年のチャンピオンシップは本来自分のものだったと裁判所に認めさせるよう求めたマッサ側の主張については、FIAの統治権を侵害する恐れがあるとして退けている。
17年越しの真相究明に向けて
ロイター通信など複数のメディアによれば、マッサは声明で「これは私にとって、正義にとって、そしてF1を愛するすべての人々にとって記念すべき日だ」と喜びを語ったという。さらに「真実は裁判で明らかになる。私たちは一切の妥協を許さない。被告らのどんな共謀であれ、あらゆる文書、やり取り、証拠を提示していく」と意気込みを示し、2008年のタイトルは「奪われたものだ」と改めて主張した。
今回の決定を機に、クラッシュゲートをめぐる論争は新たな局面へと進む。法廷の場で真実がどのような形で語られるのか、今後の展開から目が離せない。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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