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モータースポーツ コラム 2025年10月30日

シビックTYPER R-GTラストラン前に、オートポリスで魅せた逆転劇

SUPER GT by 吉田 知弘
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No.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GT

2025年のSUPER GT第7戦オートポリス。今年も3時間レースで争われたシーズン唯一の九州を舞台にした大会は、今年もさまざまなドラマが起きた。

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雨がパラつく難しいコンディションとなった予選では、急にウエット路面となったQ2でニッサンZ陣営が速さを発揮、No.3 Niterra MOTUL Zが今季初のポールポジションを獲得した。ここ数戦は苦しい思いをしていたQ2を担当した佐々木大樹は思わず感極まっていたのが印象的だった。

しかし、決勝レースが始まると、今季どのサーキットでも強さを見せているトヨタGRスープラ勢が強さを発揮。その中でNo.37 Deloitte TOM’S GR Supraがニッサン勢を追い抜いてトップに浮上。リードを築いて第2スティントに入っていった。これに続くかのように1回目のピットストップを終えると、GRスープラ勢が上位を独占。ランキング首位でサクセスウェイトが半減されても61kgで燃料リストリクター制限対象のNo.1 au TOM’S GR Supraも4番手に浮上。トップに追いつく勢いをみせた。

今回もGRスープラ勢がレースを支配するかと思われたが、残り1時間を迎えるところで状況が変わっていく。それまで順調に走っていた1号車と37号車のペースが落ち始め、残り1時間を切ったところで2台が緊急ピットイン。フロントのエアインテーク部分に付いたタイヤカスやゴミなどを取り除く作業が行われた。十分に空気が当たらず、エンジンのパワーが落ちる症状に見舞われていたようだ。

37号車は症状が改善せず、翌周にリタイア。ポイント圏外に後退した1号車も最終戦のことを考えて、戦線離脱を選んだ。

そして、トップ争いは、それまで流れから一変し、トップにNo.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GT、2番手にNo.16 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16、3番手にNo.64 Modulo CIVIC TYPE R-GTが進出。特に予選ではQ1敗退で12番手スタートだった100号車は、タイヤと燃費を労わる作戦で、2回目のピットストップ時間を短縮させることに成功。その結果、最終スティントで逆転。最終的に25.9秒もの大差をつけて、今シーズン初優勝を飾った。

Honda勢にとっての今季初優勝を逆転で掴んだ100号車

「戦略としては、最初と2回目のスティントを最大でなるべく引っ張って2回目のピットストップの時間を短くすることをチームとして考えていました。燃費とタイヤの空気圧を意識しながらできることをやったという形です」(山本尚貴)

「ホッとしたという気持ちが強いです。今シーズンでCIVICがラストイヤーということですが、クルマが変わってから1勝しかしてなくて、僕たちも優勝できてない状況だったので、本当に勝ててよかったと思います」(牧野任祐)

10月頭にHRCが2026年から投入するGT500車両としてプレリュードGTプロトタイプをお披露目。CIVIC TYPE R-GTの参戦は今季限りとなる。しかし、今シーズンは速さを見せながらも決勝で勝つことができず、オートポリスの予選でも5台中4台がQ1敗退となった。

通常、予選後にはHRCの佐伯昌浩ラージプロジェクトリーダーらが出席する囲み取材が設けられるが、この日は緊急ミーティングにより囲み取材が中止になるほど、陣営内の危機感が感じられた。

そこから1日……見事な逆転劇を披露し、これまでライバルの後塵を拝してきたCIVIC TYPE R-GTが表彰台を独占した。

優勝した100号車は、中盤戦でなかなか結果が出ず、一見苦しそうな様子もあったが、この優勝でランキング3番手に浮上し、逆転チャンピオンに望みをつなげた。

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さらに最終盤に2位浮上を果たした64号車にとっても、特別な結果に。前戦の第6戦SUGOで複数台が絡むアクシデントに巻き込まれ、マシンが大破。オートポリス大会まで時間がないなか、メカニックの懸命な修復作業で間に合い、SUGOのリベンジを果たすかのような結果を果たした。そして、64号車の伊沢拓也は、今年限りでGT500引退を表明しており、最終レースを前に好結果を掴んだ。

3位の16号車も、第5戦鈴鹿、第6戦SUGOとポールポジションを獲得していたが、決勝ではライバルの先行を許し2戦とも表彰台を逃す結果に。レースが終わると予選までの笑顔から一変して険しい表情をしていたドライバーたちがいた。

今回も最後の最後で64号車に抜かれたため、満足いく結果ではなかったかもしれないが、表彰台では大津弘樹と佐藤蓮が笑顔を見せていた。

この流れのまま、次は今週末の最終戦モビリティリゾートもてぎへ。先述の通り、CIVIC TYPE R-GTのラストランとなる。チャンピオン争いでは100号車が可能性を残しているが、全車がノーウェイトとなるため、1号車の強さを経過しているが、2人も“可能性はある”と考えているようだ。

「冬になってきたほうが僕たちホンダ勢としては調子がいいのかなと思いますし、例年もてぎは比較的相性がいいサーキットだと思うので、うまくいってくれたらいいなと思いますが、(チャンピオンのことは)あまり意識はしていません。とにかく目の前のレースでもう1勝を飾れるようにがんばりたいと思います」(牧野)

「ノーウェイトでの1号車の強さは僕たちもみんなも知っています。一筋縄ではいかないのはしっかりと理解していますが、(最終戦では)ふたりでやるべきことをやるだけだなと思っています」(山本)

ここまでの流れを踏まえると、1号車が有利であることは変わりなさそうだが、SUPER GTというレースは最後まで何が起きてもおかしくないというのが最大の特徴。過去にもチェッカー目前にトップが入れ替わり、チャンピオンの行方が変わったこともある。

そういう意味で、100号車をはじめとするホンダ陣営が、意外と最終戦でのカギを握る存在になるかもしれない。

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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