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小暮卓史(No.0 VENTENY Lamborghini GT3)
今シーズンのSUPER GTも早や終盤戦に突入。第7戦オートポリスでは、天候含めなかなか先行きが読めないレース展開となった。そのなかで、GT300クラスのディフェンディングチャンピオンであるNo. 0 VENTENY Lamborghini GT3が、ようやく今シーズン初めての表彰台を獲得した。ただ、手にしたのは優勝ではなく、3位。ベテランの小暮卓史は肩を落とし、いつになく口も重かった。
J SPORTS オンデマンド番組情報
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配信期間 : 2025年10月31日午後9:20 ~
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SUPER GT 2025 ダイジェスト 第7戦 オートポリス
配信期間 : 2025年10月31日午後10:05 ~
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SUPER GT 2025 第8戦(最終戦) モビリティリゾートもてぎ 予選
配信期間 : 2025年11月1日午後1:50 ~
昨シーズンはシーズン8戦中4勝という驚異の勝率でGT300クラスの王座を手にしたVENTENY Lamborghini GT3。今シーズンはクラスチャンピオンの”証”ともいえるゼッケン「0番」を付けて戦いに挑んできたが、表彰台までの道のりは長く、第7戦を前にシーズンベストは第3戦セパンでの予選3位&決勝4位。ランキング争いでも15位とライバルの後塵を拝していたが、昨年勝利したオートポリスで一矢報いようと、周到に用意を進めてきた。
土曜日の公式練習では、コンビを組む元嶋佑弥がトップタイムをマーク。雨がちらついた午後の予選でも、元嶋がQ1・B組をトップで通過する。一方、小暮が担当するQ2を前に心配していた雨が降り始め、さらに難しいコンディションへと変化。「オートポリスの路面はタイヤに厳しいので、少し硬めのタイヤを選択していました。気温が下がり、かつ雨が降ってきたので、走りはじめはタイヤがすごくピーキーでしたね。ある程度タイヤが温まっても、気を抜くと持っていかれるような場面もいくつかありました」。それでも、神経を使うコースコンディションを見極め、2周連続で最速タイムをマーク。「ポール(ポジション)、獲れましたか?」と無線でチームに確認すると、「獲れたぞ!」と弾んだ声が返ってきたという。ところが……。チェッカーフラッグが降られるなか、No. 7 CARGUY Ferrari 296 GT3の小林利徠斗がトップタイムを塗り替えてポールポジションを奪取。すぐさま「やられたっ!」と無情の無線が入り、小暮の渾身のアタックは悔しい2位に終わった。
余談だが、45歳の小暮に対し、小林は7月にハタチになったばかり。第5戦鈴鹿で初優勝して勢いに乗る小林は、やや控えめな口調ながら、独特のコメントと個性的なキャラクターで注目されるようになっている。そんな小林との接点があるのかと問うと、「トークショーや表彰台で挨拶する程度。なんだか不思議な感じのドライバーですよね」と思わぬ答が返ってきた。小暮自身、『うしろから正面衝突』などという”迷言”を生んだ天然キャラで知られるだけに、こちらとしても意表を突かれた形だ。小暮は小林のことを「ものすごい才能の持ち主」と褒めていたが、決勝ではその強くて速い7号車を出し抜こうと、攻めた戦略をもって挑むことになった。
スタートドライバーの元嶋がダブルスティントを担当。レース序盤にGT500車両同士が絡むアクシデントを機に、FCY(フルコースイエロー)からSC(セーフティカー)導入と変わったことで、前を走る7号車とのギャップを最小限に縮める。さらに1回目のピット作業ではリヤタイヤのみの交換に留め、7号車より前でコース復帰を決めて見せた。中盤以降は背後から7号車が1秒を切って迫るなか、2回目のFCYが導入される直前にピットイン。ようやく元嶋から小暮へとバトンが渡される。結果としてこのタイミングでのルーティンワークがチームにとっての”追い風”となり、FCY後にピットインを行なった7号車がコースに復帰すると、2台の差は15秒まで広がっていた。
だが、”好事魔多し”とでも言うのだろうか。このあと、コース上の小暮には『FCY解除時の速度超過』のペナルティが課される。「無線で”解除”と言われ、それに反応しちゃったんです」と苦笑いして小暮が振り返る。本来ならば、解除宣言のあとにコース上に提示されている黄旗が緑旗へと変わり、これをもって解除となるのだが、”解除”の声で再びレーススピードに戻してしまったのだ。「もうこれは完全に僕のミス。身体が反応しちゃいました」。すぐにドライブスルーペナルティを消化したものの、逆に7号車と15秒強の差がついてしまう。ところが、負の連鎖はこれだけでは終わらず。計時モニターに『黄旗追い越し車両検証中』としてGT500の1台とともに、0号車そして7号車の3台が記されたのだ。
「リザルトには僕の名前が出てるんですが、実のところこれはドライバー交代前のことなんですよね」。FCY導入前、トラブルに見舞われてピットロード先に停止した車両に対し、メインストレート上には黄旗が提示されるなか、折しもピットロード出口から1台の車両がコースに復帰。これとほぼ同時のタイミングで3台がパックになった状態ですり抜けており、この追い越しに対してペナルティが提示された。一方、小暮がステアリングを握るのはこのあと0号車がピットインしてからとなる。「あのときは7号車とバトルの真っ最中だったから、ペナルティが出ても仕方ない」と納得しているものの、裁定が下されたタイミングでドライブしていた自分がペナルティを消化したこととは別に、自身にペナルティが課されたように記されたことを憂いていた。小暮のドライブ中にペナルティ履行が指示され、結果的にリザルトには小暮の名前が記されたが、これは、あくまでも「0号車」に対して課されたものだ。レースから数日が経ち、「僕と元嶋は”運命共同体”なんで、受け止めようとは思いますけど」と笑っていたが、表彰式を待つ間の小暮の表情に戸惑いがあったのは、そのせいだったようだ。
「非常に悔しいレースだったので、相当へこみましたね。去年はすごく運が味方して勝てたレースもありましたが、今年は苦労続きのなか、今回は勝てるんじゃないかと思っていただけに、いろいろ考えるところがたくさんありますし、反省もしています」。今シーズンはより増えた車両重量に苦戦し、思うようなレース展開に持ち込めない戦いが長く続いた。だからこそ、オートポリスは勝ちたかった。いや、勝たねばならなかった。「最終戦のもてぎは、僕らに有利な部分も出てくるので行けるんじゃないかなと思っています。気温が下がればパフォーマンスが上がりますしね。今回、手応えがあったのでチームのモチベーションも高いですよ! なので、またおもしろいレースができるんじゃないかなと期待しています」。観る者をワクワクさせてくれる小暮の走りが、シーズン最後の一戦を盛り上げてくれそうだ。
文:島村元子
島村 元子
日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。
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