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モーター スポーツ コラム 2025年10月16日

ラズガットリオグルがチャンピオンに王手!ジョナサン・レイも引退レースへ | FIM スーパーバイク世界選手権 第12戦 へレス プレビュー

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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FIM スーパーバイク世界選手権 2025 第12戦 へレス

FIM スーパーバイク世界選手権 第12戦 へレス

排気量約1000ccのスポーツバイクによる世界選手権「FIMスーパーバイク世界選手権(WSBK)」の2025年シーズンはいよいよ最終戦を迎えました。前戦のエストリルですでにチャンピオン候補は2人に絞られていましたが、ニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)が粘り、チャンピオン争いは最終ラウンドにもつれ込む形となりました。今回はシーズン最終戦としてスペイン・ヘレスで2025年10月17日〜19日に開催される第12戦のレースプレビューをお届けしましょう。

さて、前述のようにエストリル(ポルトガル)ではチャンピオンが決定しませんでした。今季も13連勝をマークするなど圧倒的な速さを見せてきたトプラク・ラズガットリオグル(BMW)、そしてWSBKのキャリア2年目ながら現役ワールドチャンピオンに戦いを挑んでいくニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)の一騎打ちは39点差の闘いとなります。1ラウンドの最大獲得ポイントは62点。大きくリードをしているラズガットリオグルが有利な状況は変わりませんが、ブレガはしぶとくラズガットリオグルを追い詰め、レース2ではラズガットリオグルの3連勝を阻みました。

昨年はルーキーイヤーでありながらWSBK最強ライダーともいえるトプラク・ラズガットリオグル(BMW)にチャンピオン争いを挑まざるをえない状況となったニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)。ラズガットリオグルが欠場するレースもあり、俄然有利な展開で逆転できるかもしれない状況も生まれましたが、経験不足とプレッシャーからか大事なレースを勝てずに終わることもありました。しかし、今年のブレガは全く違います。

今季、トプラク・ラズガットリオグル(BMW)とニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)が1位、2位を分け合ったレースは、すでに終了した33レースの中で26レースもあります。第8戦バラトンパーク(ハンガリー)以来、10レース連続で2人の1−2フィニッシュが継続中。これまでも特定のライダーによる一騎討ち、あるいは三つ巴の対決構図となることが多かったWSBKですが、やはりWSBKはバイクというよりも、飛び抜けた速さを持ったライダーの闘いであることがよく分かりますね。

トプラク・ラズガットリオグル(BMW)はこのレースをもってWSBKを卒業。来季からはMotoGPに転向します。一方のニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)は来季もドゥカティに残留。自力での王座はありませんが、最終戦・ヘレスで3連勝を飾ることができれば、将来はラズガットリオグルのようにMotoGPへの道も開けてくるかもしれません。何よりまず、ブレガはラズガットリオグルの居るうちに彼に勝ったという事実を一つでも多く残しておきたいはずです。ラズガットリオグルが無得点レースを作ってしまえば、大逆転のドラマが起こる可能性もあります。

そして、WSBKが産んだ大スター、トプラク・ラズガットリオグル(BMW)の卒業はシリーズとしては残念なことでもあります。トルコ出身のスーパースポーツ世界選手権チャンピオンライダーであるケナン・ソフォーグルに見出されたラズガットリオグル。一時、グランプリの方向を目指し「Red Bull Rookies Cup」に参戦した時期もありましたが、彼が光り輝いたのは大排気量のスーパーバイクカテゴリーのレースでした。

2018年にカワサキのプライベーターからWSBKデビュー。初年度から表彰台をマークし、将来はカワサキワークスでジョナサン・レイのチームメイトになると誰もが期待していました。しかし、そのチャンスは訪れず、意を決しヤマハに移籍。2021年に初のWSBKワールドチャンピオンに輝きました。そしてヤマハでMotoGP転向の話が消えると今度はBMWに移籍。チャンピオンを争った実績のないBMW M1000RRを一気にトップクラスへと押し上げ、2024年のチャンピオンに輝きました。

その時代のナンバーワンとは言い切れないバイクで、ポテンシャル以上の結果を残すラズガットリオグルのスキルは誰もが認めるところ。彼の走りをMotoGPで見てみたいというのは全世界のバイクレースファンの大きな関心事といえるでしょう。

【ハイライト

FIM スーパーバイク世界選手権 2025 第11戦 エストリル(ポルトガル)(10月12日)#sbk

ラズガットリオグルと同じく、ポテンシャル以上を引き出すスキルを持っているライダーといえば、ジョナサン・レイ(ヤマハ)はまさにその代表格でした。英国スーパーバイク選手権で注目を集め、2008年からWSBKに参戦。当時はホンダのライダーとして特に雨のレースでいくつもの名勝負を作ってきました。

そして2015年にはカワサキワークスに移籍。当時の最強マシンを得たレイは6年連続でWSBKチャンピオンを獲得。シリーズの8割以上のレースを表彰台でフィニッシュするという大躍進ぶりでした。鋭い刃物のような切れ味ある走りだった若い時代と違って、スムーズすぎて逆に速そうに見えないライディングスタイルは世界中の誰もが感嘆した「芸術」と呼べるものがありました。

そんなレイも2024年にヤマハに移籍してからは苦戦。今季は開幕戦から怪我による欠場が続き、今季はフル参戦のキャリアで初めて表彰台に登れていないシーズンとなっています。6度もチャンピオンを取った彼も時の流れには勝てませんでした。そんなレイのWSBKでの最後のレース。最後のチェッカーを受けた時、彼は全世界からその功績を讃えられることになるでしょう。まさにミスター・スーパーバイクでした。

チャンピオン争いに加えて、WSBKの一つの時代の終わりを象徴するレースになりそうなヘレス。例年とは違うエモーショナルな展開となった最終戦で、それぞれのライダーの最後まで諦めない姿をぜひ楽しんでいきましょう。

文:辻野ヒロシ

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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