人気ランキング

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム一覧

モーター スポーツ コラム 2025年10月9日

岩佐歩夢がようやく掴んだ1勝目とSUGOで見つけた富士ラウンドへの光明

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
  • Line

スーパーフォーミュラ初勝利をあげた岩佐歩夢

2025年の全日本スーパーフォーミュラ選手権も、いよいよ終盤戦に突入。今週末の10月10日(金)~12日(日)は富士スピードウェイで第9戦・第10戦、11月21日(金)~23日(日)には鈴鹿サーキットで第11戦・第12戦が行われる。

今季のシリーズチャンピオン争いも、いよいよ終盤戦に差し掛かるのだが、その中で注目の存在となりそうなのが、岩佐歩夢(TEAM MUGEN)だろう。

毎回、0.001秒単位の接戦になるSUGOで、予選では2番手のサッシャ・フェネストラズ(VANTELIN TEAM TOM’S)に対して0.249秒もの差をつけてポールポジションを獲得。パルクフェルメでは、今まで彼がスーパーフォーミュラに参戦してきたなかでは初めてと言っていいほど嬉しさが込み上げてきているような表情をみせていた。同時に、いつもは比較的冷静な印象があるが、15号車を担当する小池智彦エンジニアも、この時は思い切りガッツポーズをしていた瞬間が、公式映像にも映し出されていた。それだけ、このポールポジション獲得が持つ意味は大きかったのだろう。

PPを獲得した岩佐歩夢

翌日の決勝は雨模様となり、途中に何度もセーフティカーが導入される展開となったが、岩佐は冷静にタイヤを労わりながら後続を抑え続け、そのままトップチェッカー。待望のスーパーフォーミュラ初勝利となった。

振り返ると、今季の岩佐は安定した速さを見せており、予選では全戦でトップ10圏内に入り、決勝もチェッカーを受けたレースでは全て表彰台を獲得している。しかし、開幕戦では太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)とのバトルに屈し2位。第3戦もてぎでは表彰台争いをしている最中、マシントラブルに見舞われて悔しいリタイアを喫した。気を取り直して臨んだ第5戦オートポリスも、トップを走行している最中に左フロントタイヤのナットが外れるトラブルでリタイア。昨シーズンから目標に掲げている1勝目を達成できていないままでいた。

「オートポリスでの事もそうですし、その前(昨年)もスタートができないというトラブルがありました。特にオートポリスの時での悔しさが大きかった。その後、みんなが想いをぶつけあって、それに対してどう改善していくかということはチーム全員と話をしました」

「うまくいっていた時は良いんですけど、うまくいかなかった時にどうするべきかが大事だなと思っていて……その時にドライバーも遠慮せずに言葉に出してくれて、それに応えていく。全て出来ているかどうかは分からないですけど、ひとつずつ改善していくのが必要。今回はドライバーが頑張ってくれましたけど、改めてそういうふうにしていくのが大事だなと感じました」

そう語るのはTEAM MUGENの田中洋克監督。シーズン序盤から“どこか歯車が噛み合っていない”雰囲気が少なからず感じられていたが、夏場にかけてチーム全体で修正できたことが、大きな要因の一つだったようだ。

それは岩佐自身も実感している様子。SUGOでの初優勝後、記者会見でこのように語った。

J SPORTS オンデマンド番組情報

岩佐歩夢

「確かにオートポリスは痛いレースでしたし、今までに何回か(結果を残せたはずのレースを)落としてきました。でも、そういうことがあるのがモータースポーツだと思います。それが自分に対して起こっているというところは、フラストレーションも溜まりましたし悔しい気持ちでした」

「それを修正して、こうやって結果を出すところまで持って来ることができているというのは、すごくポジティブなことだと思っています。そうなれずに終わるパターンもあると思うので。そうではなくて、自分たちのパフォーマンスを結果として示すことができるようになったというのは、すごく大きなことだと思います」

「TEAM MUGENは速くて強いというのが当たり前だと思っていました。ただ、その1人1人の力をサーキットで出しきれずに終わっていたのが、結果が出せていなかった原因だと思うので、それをこのように出せるようになったというところは大きいと思います」

過去にも、なかなか結果が出ずにもがき苦しんでいたものが、いざ1勝すると一気に流れが良くなり2勝目、3勝目と続いていくことがある。SUGOでの1勝目で、岩佐だけでなくTEAM MUGENも自信を深めたことは間違いないだろう。その勢いのままやってくる富士の2連戦は、かなり手強い存在になりそうだ。

そして、SUGOでは岩佐にとって、もうひとつポジティブな発見があったという。

「富士テストから(第6戦・第7戦の)レースの終わりまで、問題を抱えたまま走っていました。それに気づくことができずに、富士のレース後に問題を見つけて、それを改善してSUGOに持ってきました。問題が改善されたことで、パフォーマンスが戻ったので、そういったところで細かい詰めができました」

予選後の会見でそう語っていた岩佐。確かに、夏場の富士では調子は悪くはないが何かしっくりきていない様子がうかがえた。それが解決されたとなれば、今週末の富士2連戦では、さらに力強いパフォーマンスが発揮されるかもしれない。

もちろん、夏の富士とはコンディションも異なるため、実際にどうなるかは未知数ではあるが、今までとは違う手応えを得ているのも確か。そして、ここまで苦しい場面がありながらも、表彰台フィニッシュを続けてきたことが功を奏し、SUGOでポール・トゥ・ウィンを果たしたことで90ポイントに伸ばし、首位の坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)に対して5ポイント差に接近。一気にチャンピオン争いに食い込んできた。

今回の富士大会次第では、形成も一気に逆転するため、岩佐にとっては勢いに乗って連勝したいところ。ますます目が離せない富士大会となりそうだ。

J SPORTS オンデマンド番組情報

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

人気ランキング(オンデマンド番組)

J SPORTSで
モーター スポーツを応援しよう!

モーター スポーツの放送・配信ページへ