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モーター スポーツ コラム 2025年9月29日

リスタートの201戦目。手にしたSUGO初勝利

SUPER GT by 島村 元子
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松田次生(No.24 リアライズコーポレーション ADVAN Z)

度重なるFCY(フルコースイエロー)やSC(セーフティカー)、果ては赤旗中断に至ったSUPER GT第6戦「SUGO GT 300km RACE」。そのなかで最後の最後まで攻めの走りを貫いたNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN Zが、ついに待望のシーズン初優勝を遂げた。チームが味わった9年ぶりの勝利は、ベテラン松田次生にとっても2023年開幕戦以来であり、大きなプレッシャーを跳ね除けて手にした勝ち星でもあった。

2006年にホンダから日産のワークスチームであるNISMOに移籍した松田。2008年からの6シーズンはTEAM IMPULで、そして2014年から再びNISMOのエースナンバーである23号車で10シーズンを戦った。2024年、KONDO RACINGへの移籍はそれまで培われてきた豊富なキャリアからのフィードバックは当然のこと、同年にGT300クラスからステップアップを果たしたばかりの名取鉄平をチームとともに育てていく役目を期待されてのことだったろう。重責を担っての戦いが始まった。

車名を見てわかることだが、チームはヨコハマタイヤからサポートを受けている。松田にとってGTでは初のタイヤメーカーだった。「最初は(優勝まで)何年越しになるかと思ったのですが、昨シーズンが終わったときには基盤が作れたと感じました。今年の開幕戦(岡山)でも予選3番手になれたし、うまくハマれば今シーズンどこかで1回は勝てるんじゃないか、という気になったんです」。2014年からはミシュランタイヤで毎シーズン優勝、あるいは表彰台に上がる活躍を見せ、シリーズチャンピオンにも2度輝いた。

そして現在──。僚友だったロニー・クインタレッリは昨シーズンをもってGT500クラスから”卒業”し、自身は日産系ドライバーとして最年長の46歳に。複数の年下の選手が今シーズンをもってGT500から退くことを明言しているが、松田は新境地での挑戦に注力し、経験値を存分に活かすことでヨコハマタイヤでの初勝利に挑んだ。

岡山での決勝は雨となり、トラブルも重なって結果を残せなかった。「以後厳しいレースが続きましたが、夏の暑い時期にヒントが見つかって。それを活かして選んだタイヤがSUGOに”ドンピシャ”だったんです」。タイヤに関する情報には多くの”機密事項”があるため、具体的な内容を口にするのは難しい。ただ、昨シーズンからのヨコハマタイヤの特徴を踏まえ、今回のレースにふさわしいタイヤを選択することができた。「タイヤの選択とクルマのセッティングもうまく合いました。また、僕と名取選手はドライビングスタイルが似ているので仕事がしやすい。走れば走るほど速くなる名取選手となら、いい結果を出せるんじゃないかと感じましたね」。

公式練習では松田がチームベストタイムをマーク。だが、予選でふたりが装着したタイヤは、まったくキャラクターが異なるものだった。「決勝に強いタイヤを選びました。ぶっつけでQ1(予選)に行ったのでタイムが出るか不安でしたが、無事通過できました」。ちなみに、SUGOは今シーズン直前に路面を全面改修。GTカーによる実走行はレースウィークが初めてだったが、なぜ、その”未知数”にうまく対応できたのか。「8月上旬にスーパーフォーミュラが開催されたので、そのときにタイムの出方や路面のミュー(タイヤと路面における摩擦係数)の上がり方を把握していました」。スーパーフォーミュラでは、Kids com Team KCMGのチームアンバサダーを担う松田。乗らずとも路面の最新状況を収集するという”裏ワザ”で、Q1を通過したのだ。続くQ2に向け、グリップ不足で曲がりづらかったことをチームに伝えてセッティングを微調整。そのクルマで名取は5番手のタイムを叩き出した。

振り返れば、前回の鈴鹿戦からチームには勢いがあった。予選は今回よりも上の4番手。だが、決勝で松田自らがコースアウトや接触を招き、13位と精彩を欠いた。折しも、ホームコースである鈴鹿戦でGT参戦200戦を迎えたばかり。その偉業を称え、関係者やファンから祝福を受けた記念レースにも関わらず、上位入賞の好機を自ら逃していた。「さすがにヘコみましたよ。そのあとトレーニングを兼ねてカートレースをやって、ようやく気持ちを切り替えることができました。一方で鈴鹿で選んだタイヤには自信があったんです。実際、後半担当した名取選手の走りにも反映され、データも取れた。仮に僕がミスでクルマを止めていたらその成果もわからないままだったし、SUGOでのタイヤ選択にも反映できなかったと思うと、結果としては不幸中の幸いだったかもしれませんね」。

苦い結果を伴った記念の200戦。深く落ち込んだ末に迎えた今回のSUGOは「初心に戻って戦った」という。決勝ではタイヤが本領を発揮すると、積極的な走りを重ねた。「久々に燃えましたね。序盤から”勝てるんじゃないか”と思うほど調子が良かった」と、一時はトップ争いも披露した。レース自体はFCYやSCが続き、また松田から名取へと交代後、ほどなくして赤旗中断と荒れ模様になった。だが、リスタート後の名取も力走。表彰台争いが優勝争いへと変わり、最終ラップで劇的な逆転を果たした。「トップで名取選手にバトンを渡せなかったことは悔しいけれど、路面温度はじめ、今回は色んなことが味方してくれた。”いい風”が吹きました」。名取の大逆転に関しては「若い彼だからできたこと。僕ならもうちょっと手前(のコーナー)で仕掛けたと思う」と笑い、後輩の成長を喜んだ。チーム加入2年目で達成した優勝で自身は通算25勝目となり、GT500クラス最多勝記録も更新。意外にもSUGO初勝利だった。NISMO時代は搭載するウェイトが重い状態が多く、勝つのは容易ではなかったのだ。結果として、今回はサクセスウェイトが軽いことも”追い風”になった。移籍後の第一目標を達成した松田が次に目指すのは、ドライバー、チームがそれぞれの役目をしっかりと果たして強いレースをすること。百戦錬磨のベテランが、この先も辣腕ぶりを見せてくれることだろう。

文:島村元子

島村元子

島村 元子

日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。

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