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第5戦鈴鹿で優勝を遂げたNo.23 MOTUL AUTECH Z
9月も中旬に入り、ようやく厳しい暑さから解放されたようで、気温が35度超の猛暑日もほぼなくなった。8月開催の富士、鈴鹿戦ともタフなコンディションでのレースとなったが、果たして第6戦はどうだろうか? その舞台となるのは、宮城県に位置する「スポーツランドSUGO」。SUPER GTを開催する本州最北端のサーキットとなる。サクセスウェイトの影響を受けるランキング上位陣は手堅いレースを、そしてまだ好成績を残せていないチームは表彰台を目指すという、それぞれの目標に向かって熱い戦いを展開することになりそうだ。
・求む! 秋晴れのSUGO
暦の上で秋とはいえ、今年はまだまだ平年に比べ日中の気温が高く、少し動いただけでも汗ばむほど。SUGO大会の間も、状況次第で熱中症の心配も残る。その一方で、先週の日本列島は秋雨前線の影響を受けて局地的に猛烈に雨が降るなど、一部の地方で不安定な天気となった。今週もまた気圧の変化が激しくなると言われており、週末にかけて秋の空気が流れ込みそうだ。現時点でレースウィークの天気を予測するには気が早いのだが、天気予報では一部”傘マーク”がついており、気温も低めと何やら不安定な感じ。昨シーズンのSUGO戦は予選、決勝ともに雨に翻弄されただけに、現地観戦予定のファンの皆さんには今回こそ秋晴れの下でレースウィークを過ごしていただきたいのだが、果たしてこの思いは届くのだろうか。
さて、SUGOにおけるSUPER GTだが、これまでのレースを振り返っても、波乱含みのレースが数多く見られてきた。その背景には、SUGOならではの特徴的なコースレイアウトにある。他のサーキットに比べショートコース、かつアップダウンに富み、最終コーナーからホームストレートにかけての急な上り坂も”名物”のひとつ。テール・トゥ・ノーズから一気にスリーワイドになったGT車両が1コーナーを我先にと目指す様子は迫力そのものだ。また、コースには中高速コーナーがあちこち散りばめられており、事前のセットアップはもちろんのこと、ドライバーの度胸とテクニックによっても差がつきやすい。チャレンジングなコース、かつ抜きどころも決して多いとは言えない。それゆえ、まず予選で好位置につけることが大事になる。また、決勝になるとGT500クラスはバックマーカーとなるGT300クラスをうまく利用することがライバルとの勝負に欠かせない。コース上には気を緩める場所などひとつもなく、タフな戦いが続く。
300kmで競う決勝は、天候等の外的要因に加えてレース状況によって不確定要素も生まれやすい。スタート直後のポジション争いで生じるトラフィックとは異なり、中盤ともなればGT300、GT500両クラスが入り乱れ、それぞれ違ったマシンコンディションで走行するなか、思わぬ方向へ展開することも珍しくない。GT300クラス同士のトップ争いにGT500クラスの優勝争いが絡むことにでもなれば、誰もが一歩も譲れない状況ゆえに、手に汗握る状況と化すだろう。よく、”SUGOには魔物が棲む”と言われるのだが、これは、他のサーキットよりも思いもしない出来事が起こりやすい条件が揃っていることがその所以とされる。多かれ少なかれ、ハプニングが生まれやすい環境にあることには間違いないのだが、予測不能なドラマになったとしても、後世語り継がれるような”名勝負”になることを期待したい。
・サクセスウェイト&燃料流量リストリクターの影響
GT500クラスにおける搭載サクセスウェイトの上限は100kg。だが、安全面を考慮し、実際の車載ウェイトは上限50kgまで。以後は、燃料流量リストリクター、いわゆる”燃リス”調整を併用したサクセスウェイトを課している。また、この燃リスは課されたサクセスウェイトによって3段階に分けられ、パワーを制限されている。ランキングトップのNo.1 au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)はサクセスウェイトが100kgのため、実搭載50kgと3段階絞られた燃リスを用いる。このほか、1号車同様に"3リスダウン"となるのは、ランキング2、3位のNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺)とNo.38 KeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹)。アップダウンが大きいSUGOでは、この燃リス調整によるパワーダウンがボディブローのようにジワジワと効いてくるため、速さあるパフォーマンスを披露することは難しくなる。なお、燃リス調整対象車両は、参加車両全15台のうち8台。過半数の車両がそれぞれ条件の異なる”足かせ”つき車両でガマンの戦いに挑むというわけだ。その一方で昨シーズンのチャンピオンである1号車は、緻密な戦術を駆使して粘りを見せ、キチンとポイントを獲得する猛者としても知られる。レースでは、予選順位に惑わされることなく各チームのアプローチにも注目してほしい。
当然ながら、サクセスウェイトが軽く、燃リスの影響が少ないチームにとっては好機到来となる。鈴鹿で優勝を遂げたNo.23 MOTUL AUTECH Z(千代勝正/高星明誠)とともに3位表彰台に立ったNo. 3 Niterra MOTUL Z(佐々木大樹/三宅淳詞)、その鈴鹿でポールポジションを獲得したものの4位に終わったNo.16 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16(大津弘樹/佐藤蓮)はもとより、不完全燃料の戦いが続いているチームも、SUGOの戦いをステップにして勢いに乗りたいと願っているはずだ。
・GT300クラスはランキング争い含め、混戦模様!?
昨年のSUGOでGT300クラス優勝を遂げたのは、No.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟)。上限いっぱいのサクセスウェイト50kgを搭載するなか、怒涛の追い上げを見せて優勝を飾った。今大会では上限50kgのサクセスウェイトで参戦する車両が14台と多いため、コース上ではこれまで同様に激しい攻防戦になると思われる。ちなみに、現在ランキングトップの65号車と7.5点差で2位につけるNo.777 D'station Vantage GT3(藤井誠暢/チャーリー・ファグ)も昨年のSUGOで3位表彰台に上がっており、ランキング争いがそのままレースでのポジション争いに転化しそうな感じだ。
一方、コース上の争いとは別に、レースの行方に大きな影響を与えるのが「給油流量リストリクター」ではないだろうか。GT300クラスに今シーズンから採用された規則で、リストリクター径を調整し、ピットでの給油時間を強制的に延ばす仕組みになっているのだが、”サクセス給油リストリクター”と呼ばれるように、GT500クラスの”燃リス”同様、課されたサクセスウェイトに合わせてこちらも3つに区分されている。SUGOで3段階絞ったリストリクター径が適用されるのは、上位7台。どれだけドライバーがコース上で速さを見せ、ピットで待ち構えるメカニックたちが迅速にタイヤ交換を行なったとしても、最終的に給油時間が通常よりも長引くことになる。時間にして10〜15秒超の加算だと言われているが、強制的にピットで”束縛”された時間をコース上で取り戻すのは決して容易くはないだけに、トラブルやミスのない戦いに徹し、1ポイントでも多く獲得することに尽力することだろう。
SUGOの戦いが終わると、シーズンも残り2戦に。各車、参戦7戦目からは性能引き下げ措置が変更され、課されるサクセスウェイトが半減する。上限いっぱいの状態で戦う最後の戦いだけに、どのチームにとっても正念場の戦いになりそうだ。
文:島村元子
島村 元子
日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。
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