人気ランキング
コラム一覧
福住仁嶺(No.14 ENEOS X PRIME GR Supra)
連日、酷暑のなかで戦いを繰り広げたSUPER GT第5戦「SUZUKA GT 300km RACE」。シーズン後半戦を迎え、シリーズランキング上位陣は、これまでの戦績に合わせたサクセスウェイトや燃料流量リストリクターの調整など、さまざまな”足かせ”に苦しみながらタフなレースウィークを過ごした。そのなかで、2位表彰台に立ったのがNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra。予選7位からスタートし、ルーティンのピット作業を終えると表彰台圏内へとポジションアップ。総合力にものを言わせ、ライバルたちの意表を突く躍進を見せた。前半を担当した福住仁嶺は「燃費走行した成果が出た」と決勝後にコメントしたが、まさにチームの総合力が活きた戦いだった。
14号車での2シーズン目に突入した福住。開幕戦の岡山でポールポジションを獲得、決勝は2位に。また、第4戦富士のスプリントレースでは、レース2でポール・トゥ・ウィンを達成。今回も決勝で2位となり、シーズン3度目の表彰台という好成績を残している。一方、今回の舞台である鈴鹿は、昨年の第3戦でほろ苦い経験をした場所でもあった。この時、決勝で優勝が手に届く走りを見せるも、ピット作業違反によるペナルティを受けて2位に。レース後に「あんなに喜べない表彰台はない」と肩を落とした福住のことは、今もよく覚えている。
あのとき、勝てるレースを取りこぼしたことが、なにか端緒となったのか。今シーズンのチームは序盤から安定した成績を残し、ランキング争いを展開する位置で鈴鹿に臨むと、レースでは、緻密な戦略を味方にして2位表彰台を掴んでみせた。「スプリントレースではありますが、チームとして久しぶりに優勝できたことが、今回の流れを作ったように思います。鈴鹿でのSupra勢はほぼサクセスウェイトの重いクルマが多かったんですが、そのなかで14号車は公式練習から悪くないパフォーマンスを見せることができていたし、予選もQ2まで行けたことが結果に繋がったと思います。また、決勝に向けて高田(剛)エンジニアがすごく悩みながらもいいクルマを用意してくれ、こういう結果に結びつきました」。その名前を聞いて、ピンとしたレースファンも少なくないはず。今シーズンからチームに加わった高田エンジニアは、業界関係者から”天才エンジニア”と呼ばれ、選手権でのタイトル獲得経験もある。その凄腕エンジニア、そしてクルマを仕上げたメカニック──みんなの思いが詰まったクルマのステアリングを握ってスタートした福住は、燃費走行を意識しつつ5番手までポジションアップ。トップ争いを繰り広げていた車両の多くが18周終了時にピットインするなか、14号車は20周終わりに帰還。ピットロード出口からコース復帰を果たすと、作業を終えた車両として実質2番手へとジャンプアップをしてみせた。「”気がついたら前のポジションにいる”みたいなレースって、今まであまり経験がなかったんです。結構気持ちいい瞬間でしたね。あぁ、強いチームってこういう感じで(逆転して)前に出てるんだなと思いました(笑)。そういうチームに一歩近づけたのかなと感じましたね」。
昨シーズンは、チームだけでなくメーカーも移籍した福住。とにかく早く結果を残したい気持ちが大きかっただろう。しかし序盤はレース内容が空回りすることもあり、なかなか結果が残せなかった。だが、そこからチームとともに学び、進化し、”レースに強い”戦いができるようになってきた。「今年からチーム体制が変わって不安要素はいろいろあったんですが、基本的なメンバーはほぼ同じです。昨年すごく悔しい思いをしたという気持ちを共有しながら戦っているし、しっかりコミュニケーションをとろうという意識が強くなっています。だからこそ、チームの雰囲気も良くなってきているし、みんなの意識がよりよい方向を向いていると感じますね。僕は以前からチームをリスペクトすることを心がけていますが、今年は、チームスタッフのみんながドライバーのことをリスペクトしてくれているのがよくわかります。信頼関係がより強固になっていると感じます。そのなかでいい変化が生まれているんじゃないかな」。
レースに懸ける思いをひとつに束ね、”うれしい”2位を手にした鈴鹿。シリーズランキングは2位へと浮上した。ますます意気盛んに残り3戦に臨むことになるが、福住は「まだ5戦終わっただけ」と至って冷静に話す。「最後までこういう戦いを続けるには、もっともっと努力が必要。トップ(No.1 au TOM’S GR Supra)とは10ポイントの差があって、一気にこのポイントを詰めることは難しいと思うので、少しでもギャップを詰められるように強い戦いをしていきたいですね。それを続けることでチャンピオンシップの可能性も出てくると思います」。この先、福住がチームとともに見せる”ワンチーム”の底力が、シーズン後半戦の勢力図をどのような影響を与えていくのか、楽しみでもある。
文:島村元子
島村 元子
日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。
あわせて読みたい
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
ジャンル一覧
人気ランキング(オンデマンド番組)
-
WRC世界ラリー選手権 2025 第14戦(最終戦) ラリー・サウジアラビア パワーステージ【SS17】
11月29日 午後7:00〜
-
WRC世界ラリー選手権 2025 第14戦(最終戦) ラリー・サウジアラビア ライブステージ【SS14】
11月28日 午後10:00〜
-
スーパーフォーミュラ 2025 第12戦(最終戦) 鈴鹿サーキット 決勝
11月23日 午後1:45〜
-
WRC世界ラリー選手権 2025 第14戦(最終戦) ラリー・サウジアラビア ライブステージ【SS1】
11月26日 深夜2:20〜
-
FIA 世界耐久選手権(WEC) 2025 第8戦(最終戦) バーレーン8時間レース(バーレーン) 決勝
11月8日 午後7:30〜
-
スーパーフォーミュラ 2025 第10戦 鈴鹿サーキット 決勝
11月23日 午前9:15〜
-
スーパーフォーミュラ 2025 第11戦 鈴鹿サーキット 決勝
11月22日 午後1:55〜
-
WRC世界ラリー選手権 2025 第13戦 フォーラムエイト・ラリージャパン2025 SS2~SS7
11月7日 午前7:00〜
J SPORTSで
モーター スポーツを応援しよう!
