突然やってきた…GT500鈴鹿でのラストレース

2018年第3戦鈴鹿でポール・トゥ・ウインで飾った伊沢選手

早くもシーズン後半戦に突入する2025年のSUPER GT。今週末は鈴鹿サーキットで第5戦が開催されるが、その前に大きなニュースが飛び込んできた。

『伊沢拓也、今シーズンいっぱいでのSUPER GT GT500クラスの活動終了』

2002年にSRS-F（現ホンダ・レーシング・スクール鈴鹿）を主席で卒業し、デビューは2007年の鈴鹿1000kmに第3ドライバーとしてスポット参戦。翌年からレギュラー参戦を果たし、これまで合計19シーズンにわたって国内最高峰クラスで走り続け、通算7勝をマークしている。

並行してフォーミュラ・ニッポン（現スーパーフォーミュラ）にも参戦し、2014年にはF1直下のGP2（現FIA-F2）にも挑戦した。

2012年フォーミュラ・ニッポン 第6戦で優勝

ずっとホンダ一筋で走り続け、SUPER GTでは初代NSX-GT、HSV-010 GT、NSX CONCEPT-GT、NSX-GT(FR仕様)、そして現行のCIVIC TYPE R-GTと、5世代の車両をドライブ。車両やタイヤの開発という重要な役割も担ってきた。そして、若いホンダドライバーたちも彼を慕うなど、陣営にとっては欠かすことができない存在だ。

お知らせです

今シーズンで、GT500クラスへの参戦を最後とさせていただく決断をしました。
鈴鹿のレーシングスクールで四輪のキャリアをスタートし、2007年に鈴鹿1000kmでデビューしたSUPER GT。最後の鈴鹿を前に、皆さまへご報告させていただきます。… pic.twitter.com/QQuiUnLfA4

— 伊沢拓也 (@TakuyaIzawa) August 21, 2025

ここ数年を振り返ると、特に2000年以降に活躍してきたGT500ドライバーの引退が続いている。2023年の立川祐路、2024年のロニー・クインタレッリ、さらには前回の第4戦富士大会の前に石浦宏明が今季限りでGT500を降りることを発表した。

“世代交代”というのは、いつの時代もあることだが、こうして長年にわたり第一線で活躍し、多くのファンを魅了してきたドライバーが立て続けに退いていくと、こういう発表には、寂しさを感じる。

そんな伊沢だが、今季は一度きりの開催となる鈴鹿ラウンドを前にした発表について、HRCのプレスリリースで、このようにコメントしている。

「SUPER GT GT500クラスでのレース活動を今シーズン限りと決断しました。レーシングスクール時代、そしてレーシングドライバーとしてのキャリアを通して特に思い出深い場所、鈴鹿でのレースを前にファンの皆さまに伝えたいという想いがあり、このタイミングで発表させていただきました。残り4戦、チームと大草選手とともに最後まで一番のリザルトを目指して全力で戦います」

伊沢にとっては嬉しい思い出も、悔しい思いでも詰まった鈴鹿サーキット。特にNAKAJIMA RACINGに加入して以降は、ポールポジションも獲得するなど相性の良い。今回はサクセスウェイトが復活し、ランキング上位陣は燃料リストリクター制限が入ることと、暑いコンディションに自信を持っているダンロップタイヤを考えると、今回も好結果に期待がかかる。

伊沢選手にとって初ポールを奪取した2020年の第3戦

思い出深い鈴鹿サーキットを、どんな走りで締めくくるのか。SUPER GTファンにとっては何としても目に焼き付けておきたい週末になるだろう。

そして、先述でも触れた通り、KeePer CERUMO GR Supraの石浦宏明にとっても、GT500で走る鈴鹿は最後。今回は74kgのサクセスウェイトを背負っており、上位に来るのは難しい条件ではあるが、こちらも最後まで目が離せない。

今年の8月は異常なまでに気温が上昇している日本列島。今週末も気温35℃を超えるような予報も出ており、例年以上に灼熱のコンディションになる可能性は高そうだ。それがレースにどのように影響するかも気になるところだが、現地で観戦予定の方は、いつも以上に熱中症対策を念入りにしていただければと思う。

文：吉田 知弘