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2人を偲ぶピエール・ガスリー(写真中央)
2019年、FIA F2スパラウンドの予選で命を落としたアントワーヌ・ユベール。彼と同い年で、カート時代からの親友だったピエール・ガスリーが、今年もその死を悼むイベントを主催した。
若き2人を偲ぶ、スパのランイベント
F1ベルギーGPが開催された7月最後の週末。舞台は、ユベールが最期を迎えたスパ・フランコルシャン。恒例となったランイベント「ラン・フォー・アントワーヌ」では、角田裕毅、ルイス・ハミルトン、シャルル・ルクレール、リアム・ローソンら多くのドライバー、関係者がトラックを走り、祈りを捧げた。事故が起きたラディオンではガスリーを含め、花を手向け、静かに手を合わせる姿も見られた。
このイベントが始まったのは2023年。初開催の数週間前、同じスパでフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ by アルピーヌに出場していた当時18歳のディラーノ・ファン・ト・ホフが事故死するという悲劇が重なったことで、「ラン・フォー・アントワーヌ」は2人を追悼するイベントとなっている。
ガスリーの人生を変えた日
ガスリーは2021年に『The Players’ Tribune』に寄せた寄稿の中で、ユベールが亡くなった日のことをこう振り返っている。サーキットでの分刻みの予定をこなす合間、事故の瞬間をテレビ越しに目撃し、「大惨事が起きた」と直感したという。デブリーフィングを終えた直後、ユベールの死を知らされた彼は、「完全に打ちのめされた。涙が枯れるまで泣き続けた。あれほどつらい感情を人生で味わったことは、一度もない」と記した。
その後の1年間は「バイザーを下ろしたまま」のような心の闇の中にいたというガスリー。だが、2020年のベルギーGP前週、事故現場のラディオンを訪れ、ユベールに祈りを捧げたとき、「事故以来はじめてバイザーを上げて、本当に世界が見えるような気がした。見えなかったものが、ようやく見えた気がした」と語っている。
そしてその翌週、モンツァで行われたイタリアGPでガスリーはキャリア初優勝を成し遂げた。コロナ禍のため、表彰式は無観客だったが、彼はしばらく1人でその場に残った。カート時代からF1ドライバーを夢見て切磋琢磨してきたユベールとともに、「2人の優勝」を噛みしめていたのだという。
複雑な感情を力に
ガスリーにとってスパは、F4時代に初優勝を飾った思い出の地であると同時に、親友を失った場所でもある。今年、『Racing News365』の取材に応じたガスリーは「ここに来ることで、より強くなれる」と語った。
今シーズン、アルピーヌはコンストラクターズランキング最下位に沈んでいる。そんな中でも唯一ポイントを重ねているのが、ガスリーだ。ベルギーGPの直後には『Sky Sports F1』のインタビューに対して「アントワーヌの母親や家族が応援してくれる中でトップ10に入れて良かった」とコメントしている。
『Motorsport.com』によれば、ガスリーはユベールやランイベントについて語った後、「僕たちはこのスポーツを心から愛している。でも、どれだけ愛していても、危険なスポーツであることには変わりない」と強調したという。このランイベントは、単なる追悼にとどまらず、モータースポーツがより安全な未来へと進むための、静かで確かなメッセージでもある。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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