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激しいバトルが繰り広げられたスーパーフォーミュラ2025 第7戦
3日間で延べ5万3400人を動員したスーパーフォーミュラ2025 第6戦・第7戦 富士。今年も「スーパーフォーミュラ夏祭り 2025」と称して、イベント広場は夏祭りのような雰囲気となり、アフターグリッドパーティも昨年よりパワーアップした内容で開催され、レースだけではない部分でも盛り上がりをみせた。
今年は夏の富士大会もダブルヘッダー開催となり、土曜日の第6戦、日曜日の第7戦ともに熱戦が繰り広げられた。特に話題となったのが、第7戦決勝の後半。セーフティカー導入が解除されてからの、岩佐歩夢(TEAM MUGEN)、坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)、太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)による超白熱のトップ争いだ。
接触しないように相手のラインには配慮しながらも、相手の前に出ようと限界まで攻めていくというバトルは、会場に観戦していたファンや関係者だけでなく、自宅などで中継映像をご覧になっていた方も手に汗を握ったことだろう。
なかでも、岩佐と坪井が並んだままコカ・コーラコーナーに飛び込んでいき、2台が並んだままADVANコーナーを目指していくところは、なかなか見られないシーンで筆者も驚いた。
この三つ巴バトルを制したのが、残り11周の時点では3番手にいた太田。前の2人のバトルがひと段落してオーバーテイクシステム(OTS)がほとんど残っていな勝ったのに対し、彼は残り80秒を大事に温存していた。まずは31周目に坪井を抜くために28秒を使用。コカ・コーラコーナーで前に出ると、OTSインターバルに要する120秒間で岩佐との間隔を縮め、33周目のメインストレートでOTSを発動させて岩佐をオーバーテイク。その勢いで後続を引き離して今季3勝目を飾った。
太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
「絶対にどこかのタイミングで、坪井選手は岩佐選手の前に出るためにOTSを使うだろうなと思っていました。(相手が)使った時に自分は使わない。その次の周で確実に仕留めるというタイミングを待っていました。それまでは、タイヤの温度管理に集中しました」
バトルに関しては自分からきっかけを作って、勢いで攻め込んでいくことが多い印象的な太田。しかし、今回は“勝つために待つ”という選択をした。確実に前に出られるチャンスが来るまで耐え続け、まずは坪井攻略に全神経を集中させる。
「(OTSの使用状況は)チームから無線で言われますけど、相手の加速感を見れば使っているのが分かるので『ここで使ったから、次の周だ』と思っていきました。坪井選手もブレーキがうまくて、1コーナーの立ち上がりとかはめちゃくちゃギリギリでした。だけど……ここでいかないと勝てないと思ったので、アクセルを緩めずにギリギリでしたけど、前に出られました。坪井選手もクリーンなバトルをしてくれて感謝しています」
前日の第6戦では10位と不本意な結果に終わった太田。その一方で、富士を得意とする坪井は第6戦で優勝を飾り“富士のレースでポイントを稼いでダンディライアン勢を逆転し連覇に向かっていく”という流れが始まり出していた。
「気持ち的には、ここで(坪井選手の勢いを)止めておかないと、(富士での)残り2戦もそのままいかれるだろうなと思っていました。チャンピオン争いをする上で非常に大事な1戦になるだろうと思っていました。それはチームにも伝えていて(第6戦終了の段階で)『明日は絶対勝つ!』と言って帰りました。自信もありましたが、自分に言い聞かせていたところがありましたね」
今年はIMSAに参戦するなど海外の舞台に挑戦する機会も増え、走りに対する自信もより深まっている雰囲気があった分、太田の第7戦にかけた想いの強さは、印象的だった。
もうひとつ印象に残ったのが、勝つために攻める選択をした坪井。第6戦の優勝は“守りから攻めに転じた一手”がキーポイントとなった。
坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)
予選では僅差で野尻智紀(TEAM MUGEN)に敗れ、2番グリッドを得た坪井。スタートでは3番手の福住仁嶺(Kids com Team KCMG)が横に並びかけてきたことで、ディフェンスのためにOTSを発動させた。
「スタートでは加速が若干遅くて、どちらかというと防戦一方な感じでした。防戦するのにOTSを使ってしまったので、(OTSを)切るか切らないか迷いました。ただ、福住選手が使っていなさそうだったので『ここか行くしかない!』と腹を括って発動させたまま行きました」
「その結果、1周目で(野尻選手を)抜くことができたので、今日のレースのターニングポイントはあそこだったかなと思います」
第7戦での岩佐とのバトルもそうだが、坪井はいつもピット戦略やレースペースを武器にして、レース後半で有利な状態に持ち込んでトップに立つイメージが強い。今回は周りの状況に応じた判断だったとはいえ、自らがきっかけを作って攻めていくという走りをするのは珍しい。
ここも、太田や岩佐といったライバルたちを攻略していくためには、これまでやってきた自身のスタイルだけでは十分ではないということなのかもしれない。手強いライバルの勢いを止めるべく、お互いがいつも以上に策を練っているのが垣間見えた夏の富士2連戦だったような気がする。
今大会を終えて坪井が87ポイントで首位、太田は3ポイント差でランキング2番手。接近した状態で、スポーツランドSUGOでの第8戦を迎える。真夏の東北決戦も、さらに白熱したバトルが待っていそうだ。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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