【鈴鹿8耐特集 | 決勝まであと5日】灼熱の耐久ではライダー3人のトータルパフォーマンスが重要

鈴鹿8時間耐久ロードレース 決勝レーススタートまであと5日

真夏の鈴鹿サーキットが舞台となる「鈴鹿8時間耐久ロードレース（鈴鹿8耐）」の開催がいよいよ2025年8月1日（金）〜3日（日）に迫ってきました。「第46回鈴鹿8耐」は「J SPORTS」で生中継。このレースをより楽しんでいただくために、決勝レースがスタートするまでの間に8個のトピックスを取り上げ、今年の鈴鹿8耐の見どころをご紹介。第4弾はレースの結果を左右する「ライダーラインナップ」についてご紹介しましょう。

年に1度の鈴鹿8耐にはFIM EWCのレギュラーチームだけでなく、国内メーカーのワークスチームや全日本ロードレースが主戦場の国内チームが多数参戦します。灼熱の鈴鹿8耐では各チーム最大で3人のライダーを登録して走らせることができるのですが、1人で走ることは不可能です。2人登録のチームは1人が欠場となればその場で出走不可となってしまうため、多くのチームが３人編成の体制を選んでいます。

普段は一人のライダーでスプリントレースを戦っている国内チームがどんなライダーを起用するかは「鈴鹿8耐」の楽しみの一つであり、それぞれのライダーのパフォーマンスはレース結果を左右する重要な要素です。昨年のトップ10トライアル予選進出を果たした10チームを見ても、今年のライダーラインナップが全く同じというチームはありません。今までなかった意外な組み合わせのチーム、未経験の新人を大胆起用するチーム、初顔合わせばかりのチームなど多種多様で、レースウィークに入ってから明らかになってくる総合力が最終的な勢力図を形づくります。予想外の化学反応を起こすチームが毎年現れるのも面白さの一つと言えます。

耐久レースでは3人のライダーが同じバイクをシェアすることになります。バイクのセッティングやライディングポジションをエースライダーの好みに合わせるか、3人の間を取ったものにするかはチーム次第。一人のライダーのために特化しすぎて他の2人にとって乗りにくいバイクになってしまっては結局トータルでは良くないレースペースになってしまい、苦戦することもしばしば。４輪の耐久レースなどでは最近はあまり見られませんが、２輪ではライダー間でラップタイムに大きな差異が生まれることがよくあります。

今年のラインナップで実力が読みやすいのはホンダワークス「Honda HRC」です。高橋巧とヨハン・ザルコの組み合わせは昨年と同じ。この２人のラインナップが継続したということは良い組み合わせだったということです。そこに加わるWSBKライダーのイケル・レクオーナも2022年の優勝経験者ですし、テストでは2分6秒台の連続ラップを刻んでいましたから、3人のレベルがとても高いことは容易に想像がつきます。

一方で実力未知数なのはヤマハワークス「YAMAHA RACING TEAM」です。6年ぶりの鈴鹿8耐ではありますが、エースの中須賀克行の速さはJSB1000でも安定しています。しかし、ヤマハ初乗りのジャック・ミラー、鈴鹿のレースは初挑戦というアンドレア・ロカテッリの組み合わせは実力未知数。それぞれの速さがあるのは当然ですが、3人の組み合わせが2019年の中須賀、ロウズ、ファン・デル・マークのような実力値を持っているのかはレースウィークになってみないと分かりません。

昨年、決勝で2位になった「YART YAMAHA」はカレル・ハニカとマーヴィン・フリッツが昨年と同じで、こちらは決勝でも安定したハイペースを刻むはずです。新加入のジェイソン・オハローランは随分前ですがホンダ時代に鈴鹿のレース経験があるので心配ないでしょう。

昨年3位の「YOSHIMURA SERT MOTUL」は渥美心とダン・リンフットが昨年と同様のラインナップです。昨年はグレッグ・ブラックが欠場しましたが、多くのパートを渥美とリンフットが担当して表彰台でしたから、エースのブラックが走る今年は決勝でのパフォーマンスという意味ではかなり期待が持てるラインナップです。

一方4位の「SDG DUCATI Team KAGAYAMA」は怪我から復帰の水野涼に加えて、すでに40代になっているベテランのレオン・ハスラム、そして今季パニガーレV2でレースをしているマルセル・シュロッターという新しい外国人ライダー２人です。こちらも戦力が未知数ですが、ライダーの実力、鈴鹿8耐の経験値という意味では手堅いラインナップと言えるでしょう。

BMWでテスト走行のトップタイムを記録した「オートレース宇部 Racing Team」は完全に新しい３人組、浦本修充、ロリス・バズ、ハンネス・スーマーとなりました。バズは初の鈴鹿ですが、スーマーは昨年SSTクラスで優勝しています。組み合わせという意味では未知数すぎるため、レースウィークにあっと驚く確変を起こしそうなチームになるかもしれません。

チームの規模やスピードで大体こんな勢力図になるだろうという予測は立ちつつありますが、チームメイトが良いタイムを出せばそれに刺激されて他のライダーもペースアップし、驚きのパフォーマンスを見せるチームが出てくるのは毎年のこと。蓋を開けてみないと分からないのが鈴鹿8耐の面白さです。

文：辻野ヒロシ