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モーター スポーツ コラム 2025年7月27日

【鈴鹿8耐特集 | 決勝まであと7日】ワークスとプライベーター、格差を乗り越えた闘い

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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鈴鹿8時間耐久ロードレース 決勝レーススタートまであと7日

鈴鹿8時間耐久ロードレース 決勝レーススタートまであと7日

今年はどんなドラマが待っているのか?「鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)」が2025年8月1日(金)〜3日(日)に開催。「第46回鈴鹿8耐」は「J SPORTS」で生中継。このレースをより楽しんでいただくために、決勝レースがスタートするまでの間に8個のトピックスを取り上げ、今年の鈴鹿8耐の見どころをご紹介。第2弾は鈴鹿8耐を楽しむ上での重要なキーワード「ワークスvsプライベーター」についてご紹介しましょう。

2輪ロードレースの業界ではメーカー直属のトップチーム体制のことを「ファクトリーチーム」と表現します。4輪のモータースポーツでは主に「ワークスチーム」と言われることが多いですが、2輪でもワークスと表現して問題ありません。

定義としてはバイクメーカー企業本体で参戦するチームです。市販ロードゴーイングバイクをモディファイして争うFIM EWC(世界耐久選手権)では、バイクそのものを製作しているメーカーが強いのは当然です。メーカーワークスチームは全てのことを知っており、最適化された独自のパーツを投入することができるからです。

また予算規模もバイクを購入してレースをする「プライベートチーム(プライベーター)」とは雲泥の差があります。メーカーとしてのプロモーション・宣伝も兼ねて参戦するケースがほとんどですから、巨大な予算によって用意された予備パーツ数、集められたスタッフ人員数、ライダーやスタッフの待遇面を含めた総合力でワークスは圧倒的に勝ります。

メーカー本体のワークスチームとしてはホンダワークス「#30 Honda HRC」、ヤマハワークス「#21 YAMAHA RACING TEAM」が二大巨頭。スズキワークスは「#0 Team SUZUKI CN CHALLENGE」として実験車クラス(エクスペリメンタルクラス)に参戦します。そしてドイツのBMWも「#37 BMW Motorrad World Endurance Team」というワークスチームを参戦させていますが、彼らはFIM EWCの年間タイトル獲得が主目的であり、鈴鹿8耐は遠征となるため規模は国内ワークスに比べると小さめの体制になっています。

一方で、今年55チームがエントリーする鈴鹿8耐でその他大勢がいわゆる「プライベーター」に該当します。彼らは自分たちでバイクを購入し、独自のモディファイを行って参戦しているのですが、予算はスポンサーから集めた資金が元手。プライベーター体制ではスタッフを集めるのもひと苦労ですし、鈴鹿8耐の時だけ手伝いに来るスタッフのマンパワーに頼らないといけないのが現実です。

規模の大きさで負けるに決まっている闘いに、なぜ彼らは挑むのでしょう。そこにはロマンがあるからです。ざっくり言うとそんな感じかもしれません。灼熱の耐久レースではワークスチームがどんなに予算を投じても、転倒やトラブルなどで順位を落としてしまうことが多々あります。有力ワークスチームがみんな転んで街のバイク屋さんチームが優勝したというケースも過去にはありました。ですから、何が起こるか予測不可能な「耐久レース」ではちょっとした夢を抱くことができるのです。だからこそ彼らはそんなチャンスを信じて巨大な規模のワークスチームに闘いを挑んでいくわけです。

プライベーターは起用するライダーのパフォーマンス、メカニックたちの努力次第で例え予算がワークスの1/5でも1/10でも彼らとバトルできる可能性もあります。そのためにパーツをブラッシュアップして差を削っていくという細かい努力を日々行なっています。その努力が結果として出てくるのが鈴鹿8耐という舞台なのです。

とはいえ、鈴鹿8耐におけるワークスの強さは歴史が証明しています。2015年以降は全てヤマハ、カワサキ、ホンダのフルワークスチームによる優勝が続いています。ワークスチームのバイクが速いのは当然ですが、プライベーターがそう簡単に太刀打ちできないのは「燃費」の部分でしょう。ワークスの強みはバックグラウンドで携わる人材の多さによるデータ解析力です。

ひとたび決勝レースが始まると1回のフルタンク状態で尚且つハイペースで走行できる周回数には差ができ、それが明らかになってきます。ワークスは7回ピット8スティントを理想としており、ライダーたちがその作戦を遂行できるバイクを作ってきます。

とはいえ、ワークスも小さなミスを犯すことがあります。昨年も首位独走のホンダワークスがピット作業時の違反で30秒加算のペナルティを受けました。十分なマージンを築いていたのでそのまま優勝しましたが、緩いペースで走っていたり、セーフティカーが入ったりして差が少なくなっていたら逆転されていたかもしれません。ワークスはワークスで高い緊張感を持ってレースをしているのです。

特に今年はホンダワークスとヤマハワークスが優勝争いを展開することになるでしょう。その闘いが激化するタイミングでどんなドラマが生まれるのか、それを含めて誰も予想できないのが鈴鹿8耐というレースの魅力です。

文:辻野ヒロシ

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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