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12年ぶりにSUPER GTの公式戦が開催されたセパン・インターナショナル・サーキット
近年はコロナ禍の影響で開催が見送られ続けてきたSUPER GTの海外ラウンドが、ようやく再開された。6月27日(金)・28日(土)にセパン・インターナショナル・サーキットで2025年シーズンの第3戦が開催され、2日間合わせて75,977人を動員した。
舞台となったセパン・インターナショナル・サーキットは冬のGT500メーカーテストで使用されるコースとしては知られているが、SUPER GT公式戦の開催は12年ぶりということもあり、大半はここでレースをしたことがないドライバーたちばかりだった。その中でも、GT300クラスでは将来有望なドライバー2人が活躍を見せた。
まずは、今回のGT300で優勝を飾ったNo.18 UPGARAGE AMG GT3の第2ドライバーを務める野村勇斗。金曜日の予選ではポールポジションがかかる予選Q2で、しっかりと速さをみせてポールポジションを奪取。彼にとってはGT300初ポールとなった。
「公式練習ではコースの習熟を目的に走っていて、自信はありましたけど、すごく緊張しながら走って……ポールが獲れてよかったです」と野村。
この週末は公式練習から18号車の調子がよかったことは確かで、チームのエースである小林崇志は12年前のセパン大会でGT300優勝を飾ったドライバー。いろいろと好条件が揃っていた感はあるが、野村もきっちり走らなければポールポジションは獲れないという状況下で、その役割を見事に果たした。
翌日の決勝レースでスタートを担当した野村は、2周目にNo.52 Green Brave GR Supra GTの先行を許したが、途中のピットストップで52号車が作業に手間取った間に逆転。後半スティントは小林が逃げ切って今季初のトップチェッカーを受けた。もちろん、野村にとっては嬉しいGT300初優勝だ。
No.18 UPGARAGE AMG GT3
「3戦目で優勝できて、ちょっと自分でも驚いているんですが、それを達成できたのはチームのおかげでもありますし、小林選手のアドバイスのおかげでもあるので、本当に感謝しています」と記者会見で語った野村。
今回のポール・トゥ・ウィンはチームのエースである小林の経験と、走り出しから好調だった18号車のパッケージも大きな要因ではあるが、野村も“良い流れ”でセパン大会に乗り込むことができていたことも無視できない。
この大会の前週に行われた全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権で野村は同シリーズ初優勝を飾り、その週末に行われた3戦全てで優勝。ポイントランキングでも、先行していた佐野雄城に追いついた。
昨年、FIA-F4でチャンピオンを獲得し、ステップアップを果たして今季に臨んでいるが、スーパーフォーミュラ・ライツに関しては鈴鹿サーキットでの開幕ラウンドで3戦とも2位に終わり、5月のオートポリス大会では少々空回りするような場面も見られ、2戦ともノーポイントだった。
思うようなシーズン序盤にならないなかで、ひとつ勝ち星を掴めたことが、彼の中で自信を深めるきっかけになったのかもしれない。実際、セパンで見る野村の表情も、今までの彼とはどこか違って落ち着いている感があった。
こうしてGT300でも1勝目を挙げたことで、またひとつ殻を破ることができたはず。スプリント勝負となる第4戦富士ラウンドを含め、今後の活躍から目が離せない。
そして、このセパン大会で大きな注目を集めたのが、グッドスマイル初音ミクAMGから参戦した奥本隼士だ。
スポット参戦のチャンスで結果を出した奥本隼士(左)
もともとラジコンの世界で活躍し、20歳を過ぎてから4輪レースデビュー。ある意味で異色の経歴ではあるが、スーパー耐久で活躍するなど、彼の名前を聞く機会は増えてきている。そんななか、スパ24時間耐久レースに出場する谷口信輝/片岡龍也の代役として、今大会のグッドスマイルレーシングは中山友貴と奥本を起用。このスポット参戦のチャンスを見事にものにする走りをみせた。
前半スティントを務めた中山から4番手でステアリングを引き継いだ奥本は、前年チャンピオンのNo.0 VENTENY Lamborghini GT3に対して果敢に攻めていった。ペース的には奥本が駆る4号車が有利な感じではあったが、相手は百戦錬磨の小暮卓史。コース幅いっぱいを使ってチャンスを作ろうとする奥本に対して、冷静にラインを防いでポジションを死守した。
何度もサイドバイサイドに持ち込むが小暮が堪えるという展開が続いたが、奥本は諦めずにトライし続け、残り5周の2コーナーでオーバーテイク。ちょうどGT500車両が目の前にいる混走状態のなかで生まれた一瞬の隙を逃さなかった。
そのままリードを広げてGT300クラス3位でフィニッシュ。奥本はチームメイトの中山と表彰台に立ち、満面の笑みでトロフィーを掲げた。
まさに限られたチャンスで自身のポテンシャルを存分に発揮したことで、今後また新たなチャンスが巡ってきそうだ。
かつてのセパン大会もそうだったが、さまざまなドラマがあり、そこで新たな主役が誕生するSUPER GTのセパン大会。12年ぶりの開催となった今回も“今後の活躍が楽しみ”に感じるドライバーをたくさん見つけることができた1戦だった。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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