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熱狂する女性ファンと接するハミルトン
近年のF1グランプリでは、スタンドに並ぶファンの風景が大きく変わりつつある。手作りの応援ボードやカラフルなうちわ、お気に入りドライバーのネーム入りTシャツーーそんな“推し活”の象徴ともいえるアイテムを手にした若い女性たちが、サーキットに熱気を持ち込んでいる。これまで「モータースポーツ=男性中心」とされてきたF1の世界に、まったく新しいファン層が流入している。その原動力となっているのが、“推し”を応援するというカルチャーだ。
この動きを後押しした大きな要因のひとつが、NetflixのF1ドキュメンタリー番組「Drive to Survive(邦題:栄光のグランプリ)」だ。2019年に配信開始され、特にコロナ禍中に新規ファンを呼び込んだ。『Forbes』によれば、F1は過去3年間で5,000万人の新たなファンを獲得し、2024年末には年間視聴者数が7億5,000万人に到達。そのうち女性ファンは全体の41%を占め、16〜24歳の若年層の伸びが顕著だ。
ファンの関心は、もはやレースそのものにとどまらない。『Teen Vogue』は、F1が推し文化に染まっているとし、K-POPファン文化との共通点に注目する。ファンはSNSを駆使してドライバーを推し、サーキットの内外で熱狂と一体感を育んでいる。
たとえば、マクラーレンのランド・ノリスやフェラーリのシャルル・ルクレールは、速さだけでなく素朴で親しみやすいキャラクターで支持を集め、TikTokやInstagramでも絶大な人気を誇る。また、『tubefilter』によれば、女性のF1系コンテンツクリエイターが増えており、個人の視点から魅力を発信することで、多様で開かれたファンダムの土壌が育ちつつあるという。
このような流れを受け、F1は「観戦するスポーツ」から「物語を楽しむ体験」へと変貌している。ドライバーの個性や人間関係、舞台裏のエピソードまでが推しの対象になり、ボーイズグループのようなキャラクター設定さえ自然に受け入れられている。
その最たる例が、メルセデスのユニークなブランディングだ。『Teen Vogue』によれば、同チームはドライバーや関係者を家族に見立てたキャラクター設定を積極的に展開。ジョージ・ラッセルは「温厚な兄貴」、アンドレア・キミ・アントネッリは「元気な弟」。さらに、F1アカデミー所属のドリアーヌ・ピンは「真面目な姉」、リザーブドライバーのバルテリ・ボッタスは「自由奔放なおじさん」。そして代表のトト・ウルフは「頼れる父」として物語に組み込まれており、チーム全体がファミリードラマの登場人物のような親しみやすさを生んでいるという。
さらには、Netflixとの共同制作によるアントネッリのドキュメンタリー「The Seat(ザ・シート: アントネッリ、新たな伝説を創る者)」も始動。プロモーションではチームスポンサーのWhatsAppと連携し、アントネッリから直接電話がかかってくるという企画を展開し、ファンとの距離を縮めている。
とはいえ、この新たなファンダム文化に対して否定的な声も少なくない。とくにテクニカルな視点からF1を楽しんできた従来のファンの中には、SNS主体の熱狂を表面的と見る向きもある。
また、女性ファンの増加と同時に、現地観戦における安全面の課題も浮き彫りになっている。嫌がらせの報告や、安心して観戦できる環境が整っていないケースもあり、経済的なハードルだけではない心理的障壁が残っているのが現実だ。
そうした問題に向き合おうとする動きもある。スペイン・バルセロナに拠点を置く旅行会社「Off to the Races」は、女性ファン向けに特化した団体観戦パッケージを展開。航空券・ホテル・サーキット送迎に加え、ミシュランレストランでの食事やヨガ、文化体験などを組み込み、安心してF1の世界を楽しむための環境づくりに力を注いでいると『Motorsport.com』は紹介している。
新たな女性ファン層を取り込み、文化的な幅を広げつつあるF1。その熱狂は単なるスポーツ観戦を超え、ファンとドライバー、さらにはファン同士を繋ぐ特別な体験へと進化している。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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