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FIM スーパーバイク世界選手権 2025 第6戦 ミサノ(イタリア)
プロダクションスポーツバイクの世界選手権「FIMスーパーバイク世界選手権(WSBK)」は約1ヶ月のインターバルを経て、前半戦のラストとなる第6戦を迎えます。その舞台はミサノ・ワールドサーキット・マルコシモンチェリ。イタリアのエミリア=ロマーニャ県にあるMotoGPサンマリノGPの舞台としても知られる1周4.2kmのサーキットでの開催です。今回は2025年6月13日(金)〜15日(日)にミサノ(イタリア)で開催される第6戦のレースプレビューをお届けしましょう。
さて、前戦のモスト(チェコ)はトプラク・ラズガットリオグル(BMW)が得意とするサーキットだと前回のプレビューでも触れましたが、やはりその強さはランキング首位のニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)を脅かしました。トプラク・ラズガットリオグル(BMW)はレース1、スーパーポールレースで優勝。レース2は今シーズンの毎度のパターンとなっている大接戦を0.027秒差で制したニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)に軍配が上がりましたが、3レースともにポールスタートもファステストラップもトプラク・ラズガットリオグル(BMW)が奪取。ポイント差は10点縮まって31点差。王者の脅威が首位のブレガに迫っています。
トプラク・ラズガットリオグル(BMW)のシーズン立ち上がりがスロースタートなのは毎年のことですが、今季は第2戦のポルティマオで3連勝を飾るなどサーキットによっては王者としての強さを序盤から披露しています。特に今季はBMW M1000RRが大型のウイングを装着した新モデルに移行した初年度になるので、スロースタートになる要素はありました。しかし、開幕戦・フィリップアイランドこそ新型マシンは苦戦しましたが、ヨーロッパラウンドになってからは常にニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)と接戦を演じています。もはや今季の主役はこの2人で、誰も彼らのバトルに割って入ることは不可能なのではと感じるくらいに2人の力が突き抜けていたモストのレースでした。
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【第5戦 ハイライト】FIM スーパーバイク世界選手権 2025 モスト(チェコ) (5月17日)
前半戦のラストとなるミサノ(イタリア)は「ドゥカティ」にとっても地元です。本社のあるボローニャから高速道路一本で1時間30分ほどのロケーションにあるミサノでの勝利はドゥカティ勢にとって必須となるでしょう。ミサノではアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)復帰後の2022年に3レース中2勝、2023年は3レースとも優勝を果たしていますが、昨年はトプラク・ラズガットリオグル(BMW)が全てのレースでの勝利を持っていくという悔しい地元レースになりました。
イタリア人ライダーであるニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)には強烈なプレッシャーがかかります。昨年はルーキーイヤーだったたけにBMW初年度のラズガットリオグルの3連勝に次ぐ、3レースともに2位という結果は頑張ったと評価されるものでしたが、ランキング首位で迎える今季は全然違うシチュエーションです。特に第4戦・クレモナ(イタリア)で地元3連勝を達成した後だけに地元イタリアからの期待は非常に大きくなっていますから。ブレガにとってはチャンピオン獲得に向けて絶対に乗り越えなければいけない大一番といえるでしょう。
今季、イタリアでのレースが2イベント設定されているのは「ドゥカティ」への期待とイタリア人ライダーが多数参戦している近年のWSBKの状況が後押しになっています。ランキング3位のダニロ・ペトルッチ(ドゥカティ)、ヤマハのエースとなりアッセンのレース2でWSBK初優勝を達成したアンドレア・ロカテリ(ヤマハ)、開幕戦で2位表彰台に登ったアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)、スーパースポーツ世界選手権からステップアップしたヤリ・モンテラ(ドゥカティ)、そしてビモータのライダーとして活躍するアクセル・バサーニ(ビモータ)と有力ライダーが多数参戦しています。
WSBKの歴代イタリア人ライダーでチャンピオン経験があるのは2010年、12年の王者マックス・ビアッジ(当時アプリリア)だけ。今季はイタリア車に乗るイタリア人ライダーのチャンピオン誕生が実現するか、ニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)に大きな期待が掛かったシーズンになっているのです。
また、メーカーとしてはカワサキの傘下ではありますが「ビモータ」もイタリア国籍のバイクメーカーですし、近年のドゥカティ勢の増加もあり、実はチームもイタリア国籍のチームがパドックの大半を締めているのです。
地元チーム、地元ライダーにとっては今年2回目のイタリアのレースは負けられない戦いであり、同時に好成績を残さなければならないレースでもあります。というのも、2026年の契約が今まさに動いているからです。ビモータの2人、アレックス・ロウズ、アクセル・バサーニは来季も契約があり、ヤマハのアンドレア・ロカテリも来季の契約を結んでいます。それ以外のライダーの来季の去就はまだ不透明なのです。
キーマンとなるのはトプラク・ラズガットリオグル(BMW)。彼のマネージャー、ケナン・ソフォーグルはMotoGP転向に向けて様々な交渉を行なっていると認めていますし、ラズガットリオグルがBMWに残り、WSBKを走り続けるのかどうなのか、その答えをどの陣営も待っている部分はあるでしょう。その次のレースはまた1ヶ月後となり、ライダーたちが結果でアピールできるラストチャンスです。それだけにトップ2人の優勝争いはもちろん、各所で激しいレース展開になりそうな気がします。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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