【ル・マン特集 | 決勝まであと12日】バリチェロの息子が参戦、2世ドライバーたちが競演

決勝レーススタートまであと12日

今年で第93回目の大会を迎えた伝統の「ル・マン24時間レース」が2025年6月14日（土）〜15日（日）に開催されます。「J SPORTS」ではFIA WEC（世界耐久選手権）の中で最も重要なこのレースを今年も24時間完全生中継。このレースをより楽しんでいただくために、決勝レースがスタートするまでの間に24個のトピックスを取り上げ、今年のル・マンの見どころをご紹介しています。第13弾は「ル・マンに参戦する2世ドライバーたち」についてです。

今年のFIA WECにはあのビッグネームを苗字に持つドライバーがエントリーしています。そう「バリチェロ」です。「LMGT3」のアストンマーティン・ヴァンテージAMR GT3を走らせる「Racing Spirit of Lemon」からFIA WECにフル参戦を始めたのがエドアルド・バリチェロ。そう、あの元F1ドライバーのルーベンス・バリチェロの息子なのです。

「レースをやっている息子がいたんだ！？」と驚く方もいらっしゃると思いますが、23歳のエドアルド・バリチェロは欧州のフォーミュラリージョナルへの参戦経験はありますが、ヨーロッパでは目立った成績を残していませんでした。元々は北米でレースキャリアをスタートさせ、インディカー傘下のU.S.F2000でランキング2位を獲得。その後ヨーロッパに渡りますが、あまり大きな成功をおさめられず、南米の「Stock Car Pro Series」に参戦しました。

このシリーズはDTM（ドイツツーリングカー選手権）のかつての車両に近い規定で作られたマシンで闘うシリーズで（今年マシンは新型へ移行）、昨年は父親のルーベンス・バリチェロ、フェリペ・マッサ、リカルド・ゾンタ、ネルソン・ピケJr.など元F1ドライバーたちも参戦したツーリングカーレースシリーズです。

エドアルド・バリチェロは2024年の「Stock Car Pro Series」で2勝を飾りランキング3位を獲得。今シーズンはFIA WECに転向し、ル・マン出場を目指すことになりました。FIAのドライバーグレードはまだシルバーなのに、若いこと、ハコ車のレースで結果を残したこと、そして何よりグローバルに通用する名選手の息子であることなど様々な要因が重なり、世界選手権シリーズへのデビューとなりました。

アルピーヌで参戦するミック・シューマッハ

FIA WECには昨年からミック・シューマッハがHYPERCARクラスの「アルピーヌ」で参戦。フェラーリF1の黄金時代を築いたミハエル・シューマッハとルーベンス・バリチェロの名コンビの息子たちが参戦クラスこそ違いますが、ル・マンで競演することになります。

近年はF1に数多くの有名ドライバーの2世が参戦しましたが、マックス・フェルスタッペンのように偉大な父を超える存在になれたドライバーは決して多くはありません。中にはF1に辿り着けなかった2世ドライバーも数多くいますが、昔からル・マンではそういった2世ドライバーが存在を示す場所でもありました。

今季からBMWのHYPERCARを駆るケビン・マグヌッセンも2世ドライバーですし、LMP2で出場するピエトロ・フィッティパルディは元F1王者のエマーソン・フィッティパルディの孫です。またLMGT3ではGT World Challengeのドライバーとして活躍するエディ・チーバー3世が久しぶりにル・マン出場となりますが、彼も元F1ドライバーでインディ500ウイナーのエディ・チーバーの息子です。ル・マンのレース中継に登場するビッグネームの名前を見て、ぜひモータースポーツが紡ぐ歴史を感じてみてください。

文：辻野ヒロシ