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ヤマハが初表彰台を獲得。日産は東京に首位で凱旋できるか?/FIA フォーミュラE世界選手権 2024/25 第6/7戦 モナコ プレビュー
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシストリートコースの聖地、モンテカルロ市街地コース
電気自動車の世界選手権フォーミュラカーレース「フォーミュラE世界選手権」のシーズン11(2024年〜25年)。東京大会「Tokyo ePrix」は5月17日(土)、18日(日)の2日間、お台場の特設コースで開催されます。それを前に見ておきたいのがストリートコースの聖地、モンテカルロ市街地コース(モナコ)で開催される「Monaco ePrix」です。東京大会の前哨戦となるレースはJ SPORTSでぜひお楽しみください。今回は2025年5月3日(土)4日(日)に開催の第6戦、第7戦「Monaco ePrix」のプレビューをお届けしましょう。
F1モナコグランプリ、WRCラリーモンテカルロの舞台としてもお馴染みのモナコ公国。この国の名前を聞いてモータースポーツを連想する方は多いはずです。「フォーミュラE世界選手権」も2015年からこの聖地でレースを開催してきました。2022年のシーズン8からはF1モナコGPとほぼ同じコースレイアウトとなり、ドライバーたちにとっては絶対に勝ちたい1戦です。
そんな「Monaco ePrix」が今年は初の2レース制で開催されることになりました。F1モナコGPは順位変動の少ない、いわゆる「トレインレース」として近年はファンからの評判が良くないですが、フォーミュラEではアタックモードを使用するため、どのタイミングでアタックモードを使用するかの駆け引きで順位変動が増えるのです。
予測不能な展開になることも多く、2022年の現レイアウトになって以降は、22年のストフェル・バンドーン(当時メルセデス/4番手スタート)、23年のニック・キャシディ(当時エンビジョン/9番手スタート)、そして24年のミッチ・エヴァンス(ジャガー/4番手スタート)とポールトゥウインが一度もありません。レース中にはクラッシュも発生しやすく、セーフティカー導入もあるため、それだけに現状はコントロールが難しいレースになっていますが、そんなモナコでのレース今年は2レースイベントに。これはシーズンの流れを混沌としたものにしていく可能性が高くなると言っていいでしょう。
前回大会ハイライト
FIA フォーミュラE世界選手権 2024/25 第5戦 マイアミ(アメリカ)(4月12日)
そうなる流れはすでに前戦のホームステッド・マイアミで開催された第5戦「Miami ePrix」でも表れました。初開催のコースで波乱は予想されていたのですが、予選では今季それまでノーポイントの苦戦を強いられていたノーマン・ナト(ニッサン)がポールポジションを獲得。決勝レースではレース終盤の赤旗中断により、アタックモードの使用義務をレース再開後に消化できなかったドライバーが多数発生。
トップチェッカーを受けたノーマン・ナト(ニッサン)、シリーズランキング首位のオリバー・ローランド(ニッサン)を含む5人のドライバーが10秒加算のペナルティを受けて降格。アタックモードを使い切っていたパスカル・ヴェアライン(ポルシェ)が今季初優勝。2位にルーカス・ディグラッシ(ローラ・ヤマハ)が繰り上がりました。ディグラッシは残り2周でアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(ポルシェ)を抜いたことで6位フィニッシュながら2位表彰台を獲得することになったのです。見た目の順位とは大幅に違う結果になった大波乱のマイアミでした。
上位を狙える可能性があっただけにアタックモードの消化タイミングを逃した「ニッサン」はノーマン・ナト(ニッサン)が6位、オリバー・ローランド(ニッサン)が10位という結果に。初開催コースで見せたナトの速さ、ローランドのレースメイクの上手さを結果に活かすことができませんでした。
ランキング上位にいたドライバーたちの多くが下位に沈む結果となり、今季絶不調だったロビン・フラインス(エンビジョン)もシーズン初ポイントを獲得。運も味方して2位となったルーカス・ディグラッシ(ローラ・ヤマハ)も今季初ポイントでした。
今季、鳴り物入りで電気自動車レースに参戦してきたヤマハ発動機が初表彰台を獲得したのは驚きでした。「ローラ・ヤマハABT」というチームはシーズン4のチャンピオンに輝いた「アウディ」のワークスチームが源流です。昨年までは2シーズンに渡り「ABTクプラ」としてマヒンドラのパワートレインチームとして活動してきましたが、表彰台は1度もなく、現在の勢力図では決して優勢とは言えないチームでした。そこにヤマハとローラの技術が加わり、資金面でも体制がしっかりと整えられたわけですが、上位に食い込むにはまだまだ時間が必要だと見られていました。フォーミュラE王者の大ベテランであるルーカス・ディグラッシ(ローラ・ヤマハ)、そしてFIA-F2でランキング4位を獲得したゼイン・マローニ(ローラ・ヤマハ)という申し分ないドライバーラインナップでしたから期待も大きかったのですが、やはり苦戦を強いられていました。
マイアミ大会で勝利したヴェアライン
2位まで上昇は運が味方した部分があるとはいえ、ルーカス・ディグラッシ(ローラ・ヤマハ)がマイアミで初のデュエル予選進出となり、ポテンシャルは急上昇してきていると見て良いでしょう。マローニに関してはルーキーシーズンであるため、今後もっとフォーミュラEにアジャストしていく必要がありますが、今回のモナコは経験のあるコースです。彼はフォーミュラリージョナル欧州時代に優勝、さらにF2時代に表彰台の経験があります。フォーミュラEでの起用もそういった強みも考慮されているはずですし、マローニも含めて東京大会を前に上昇気流に乗ることを期待しましょう。
そして、東京大会での優勝が期待されるのは「ニッサン」です。昨年は惜しくも敗れましたが、モナコを前にオリバー・ローランド(ニッサン)がランキング首位を維持しています。ランキング2位に上昇したアントニオ・フェリックス・ダコスタ(ポルシェ)との間には15点のリードがありますが、チームランキングでは首位の「ポルシェ」が2人のドライバーともに安定してポイントを稼いでいますし、モナコのレースウィークの流れ次第では一気に詰め寄られる可能性もあります。チームランキングでは逆にナトの序盤戦の苦戦により25点差をつけられていますから、なお今回のモナコは重要な2レースになります。
オリバー・ローランド(ニッサン)は旧レイアウト時代にポールポジション、2位表彰台、そしてF2時代にはモナコでの優勝経験もあります。予選から持ち前の一発の速さを見せつけられれば、リードを保ったまま東京に凱旋ということも充分にあり得るでしょう。そうなれば東京大会は盛り上がること間違いなしです。
伝統のストリートコース、モナコ。現レイアウトになってから、毎年ポールポジションもウイナーも異なる面々になっているコースです。ガードレールに囲まれたタイトなコースを制圧するのは日本勢か、果たして次なる勢力か。シリーズの流れを占う重要な2日間になりそうです。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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