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No.19 平良響/ITOCHU ENEX TEAM IMPUL「来年以降も出たいという気持ちが強くなった」 | 全日本スーパーフォーミュラ 第8戦・第9戦 第23回JAF鈴鹿グランプリ
モータースポーツコラム by 島村 元子No.19 平良響/ITOCHU ENEX TEAM IMPUL
11月9、10日に鈴鹿サーキットで開催された全日本スーパーフォーミュラ選手権最終大会。シリーズチャンピオンが決定する重要なイベントとして、第8戦、第9戦がワンデーフォーマットで展開された。そのなかでスポット参戦に奮闘したのが平良 響選手。第3戦SUGOでデビューレースを果たし、以後、第4戦富士、そして今回の鈴鹿2レースに挑んだ。この先のレギュラーシート獲得を目標に、どのようなレースウィークを過ごしたのか。戦いを振り返ってもらった。
── 今年6月の第3戦スポーツランドSUGOでスーパーフォーミュラ初参戦を迎えました。今回が3大会目でしたが、ドライバー人生の中でも大きなターニングポイントだったと思います。日本のトップフォーミュラへの挑戦を終えた今、どんな気持ちですか?
平良 響(以下、平良):まず、昨年末の時点で来季のフォーミュラ(レースの)シートがないという知らせを聞き、非常にショックというか悔しかったんです。なので、シーズンに入ってからスーパーフォーミュラに出られるという話をもらったときは本当にうれしかったですし、また再チャレンジできるなという感覚でした。SUGO(での参戦)が始まってから3大会に出させてもらい、特に(第4戦)富士ではいい成績(予選15位から9位入賞)が出せたと思うのですごい自信に繋がりましたし、また来年以降も出たいという気持ちが強くなりました。
── 参戦が決まり、出身地である沖縄での反響も大きかったと聞きます。
平良:はい、地元の沖縄でも非常に盛り上げてくれて、特にメディアは新聞やテレビのニュースにも出させてもらって。沖縄のモータースポーツのためにがんばれてるなっていう感じが僕にも伝わってくるものでした。
── 前回の富士大会からはほぼ4ヶ月ぶりの参戦。しかも今回は、“ワンデイフォーマット”でのレースが2戦でした。どんな準備をしましたか?
平良:SUGOのときは出場までに3週間しか準備期間がなかったので、非常にタイトだったんですが、今回の鈴鹿は富士から4ヶ月開いての大会だったので、ゆっくり準備をすることができました。特に準備に時間をかけたのは、僕のドライビング。(オンラインレーシング )シミュレータに行ってきました。シミュレーターでは、オンラインで対戦できるので、仲間同士……特にSUPER GTのチームメイトの堤優威選手だったり、仲良くしている大草りき選手とかとiRacing(アイレーシング)のシミュレータで、SF(スーパーフォーミュラ)に乗りました。
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No.19 平良響/ITOCHU ENEX TEAM IMPUL「来年以降も出たいという気持ちが強くなった」
── さらに、参戦しないときもチームには帯同していたとか?
平良:はい。自分が出場しない、(第5戦)もてぎと(第6&7戦)富士でも帯同させてほしいとチームの方にもお願いしました。ニック(デ・フリース)選手の走りを横から見ていたんですが、僕も一緒にチームの雰囲気に慣れるとことができました。元F1ドライバーのニック選手は、そのコメント力だったりレースにかける思いが“こんな感じなんだ!”というくらい、すごくインパクトがありました。例えば、彼が走ったことのないもてぎでコースウォークしているとき、走ったことのある僕だったり(チームメイトの)国本(雄資)選手に、かなりしつこく聞いてくるという印象でした。SFで走ったことのない僕にも聞いてくるなんて……っていう感じでしたね。
── 富士は事前の公式テストを含めてのレース参戦で、周回数を重ねることができました。一方、期間が開いた鈴鹿では、勝手知ったるコースとはいえ、初のSF走行。金曜日の専有走行はどんな手応えでしたか?
平良:まず、スピード感に慣れるのにちょっと時間がかかりました。特にS字区間は非常にスピードが速くて。ひとつ前の鈴鹿のレースが(10月5、6日開催の)86ワンメイク(GR86/BRZ Cup)だったので、1周あたり多分1分弱ぐらい速いのかな?(笑) そのタイム差もあって、前に走った鈴鹿と全然違うと思いました。でも周回を重ねるごとにすぐ慣れることができて、それ以降はスピード感に慣れるっていう(ことに気を遣う)ことはなかったです。
── 今大会では、予選、決勝を1日で行なうため、慌ただしく時間が過ぎたと思います。エンジニアとのコミュニケーションはうまく取れましたか?
平良:はい。大駅(俊臣)エンジニアとはもう常にコミュニケーションを取ってたんですが、やっぱりクルマを良くしていくなかで、“これぞ”というものが見つからなくて……。予選はちょっと下位に沈んでしまいました。方向性は見つかったものの、これぞというポイントを見つけられてなかったことが、ちょっと苦戦した原因かなと思います。
── その初戦_第8戦の予選ですが、終盤に赤旗が出ました。ちょうどニュータイヤでアタック中だったと思います。どんな状況でしたか?
平良:僕がセクター3に差し掛かったぐらいで赤旗が出ました。スプーン(カーブ)を立ち上がってからの赤旗でした。そこはみんなもアタックしていたということで、不利に動いたわけではなかったです。とはいうものの、このときに(ニュー)タイヤを使ったので、赤旗(再開)後の3分(のセッションを)ニュータイヤで行くか、ユーズドタイヤで行くかという話になって。タイムもいまいちだったので、ニュータイヤに懸けようとなって、アウトプッシュでがんばって温めてアタックしました。
── しかしながら、予選ポジションは思いどおりではなかったと思います。そのなかで迎えた決勝のスタートはいかがでしたか?
平良:スタートは、“やってしまい”ました。残念ながら、アンチストールに入ってしまった(エンジンストールを回避する制御システムが作動した)んです。SFのスタートって難しくて、スターティンググリッドにつく前にスタート練習を行なうんですけど、そこでクラッチのミートする感覚だったり、クラッチのバイトポイントを何%にしようか、みたいな話をエンジニアに伝えるんですが、練習時と(コース上のスターティング)グリッドでの違いがすごくあるんです。経験がないので、その練習時でのフィーリングをうまく伝えることができなくて、グリッドでの失敗に繋がったと思います。
── 悔しい失敗から追い上げ開始となりました。一方、ルーティンのピットインはどのようなプランを立てていたんですか?
平良:もともとピットに入るのは少し遅らせようっていうところでした。とはいうものの、(タイミングを遅らせることで)ピットに入る前に、(ピットインを済ませた)たくさんの選手がに引っかかる状況が多くなるため、そこはちょっとリスクがある戦略だったのですが、うまくいけば大きくポジションアップできるということで。展開として一番いいのは、僕がピット(インして)、タイヤ交換を終えたあとにセーフティカーが出て、前とのギャップが詰まり、そこから新しいタイヤで追い上げる……というものだったのですが。
── さぁ追い上げるぞ! と意気込んだと思いますが、まさか自身のピット作業が原因で、セーフティカーが出るとは思っていなかったはず。あのとき、いったい何が起こったのですか?
平良:ピットアウトしたあとにすぐSC(セーフティカー)が入ればいいよね、っと話してたんですが、まさか自分がセーフティカーを出すとは思わなかったです。原因としては、タイヤが外れたんですが。タイヤ交換をしてもらって、ピットアウトする直前にアクセル全開だったんです。一速の全開でピットスイッチを切るのは怖いなと思ってスロットルを真ん中ぐらいにしたのかな? で、ピットスイッチをオフにした瞬間にすごいリヤが空転したんです。ウゥ〜ンってリヤが空転したので、まぁタイヤがめちゃくちゃ冷えてるなと。『このあと、S字とかめっちゃ怖いなぁ』と思った瞬間に、自分のリヤタイヤが自分を追い越したので、『これはタイヤが外れたな』と思いました……残念!
No.19 平良響/ITOCHU ENEX TEAM IMPUL
── フォーミュラレースでは自身、初経験のハプニングですか?
平良:初ですね。(SUPER)GTでは去年の開幕戦に(タイヤが)外れたんですが、あんまり気づかなかったんです。今回のフォーミュラに関しては、(外れた)タイヤがもう自分を超えてたんで。転がっていくタイヤを見てちょっとショックでした。しかも綺麗なライン取りで、しっかりクリップ(クリッピングポイント)にもつけてましたね。僕より(タイヤのほうが)走行距離がありましたよね(苦笑)。
── まさかの戦線離脱で、この日はレースをしたという感じはなかったかと思います。気持ちを切り替え、翌日第9戦に向けて、チームとはどういう話をしましたか?
平良:第8戦の予選で苦戦してたので、クルマのセットに関して、第9戦はちょっと良くなるように大きくクルマのほうもドライビングのほうも、ちょっと大きく見直そうって。ちょっとチャレンジした方向に振りました。
── そのチャレンジ……翌日の予選内容はいかがでしたか?
平良:セッティング、ドライビングともにちょっと大きな変更点を加えた予選だったんですけど、うーん。やっぱりダメで。あまりいい結果を出すことができなくて、なんでタイムが出せなかったんだろうって、その直後は全然わからない状況で。本当に悔しかったです。
── 短期決戦ならではの難しさかもしれません。前日よりポジションをひとつ下げて19番手からのスタートとなった第9戦はどのような戦いでしたか?
平良:基本的には土曜日と同じく(周回を)引っ張って、最後に(ピットに)入れようっていうところでした。土曜日は、前の木村(偉織/San-Ei Gen with B-Max)選手に引っかかりそう……という間隔だったので、早めにちょっとピット入りましたが、日曜日はもう前がガラガラだったので、クリーンエアで走ることができて、引っ張ることができました。とはいうものの、引っ張ってる最中のタイムが非常に悪くて。土曜日のようなスペースがなく、結構苦しいなかでのレースという感じでした。タイヤを替えてもらってピットアウト、そのあとどこまで順位が下がっているんだろうと思ったら、コース上で結構S字で抜かれてしまって。『これは最下位に落ちたかな』っていう感覚がありました。
── そこから、懸命の追い上げが始まりました。
平良:タイヤが新しいので抜いてかなきゃいけない状況でしたが、抜くところでOTS(オーバーテイクシステム)を上手に使わないと抜けない。そこに関しては、エンジニアさんに前の選手のOTSの状況を聞きながら冷静にOTSを使ったという感じです。そのなかでの“見どころ”は、やっぱりシケインのブレイキングですかね。そこでは、野田(Juju/TGM Grand Prix)選手と小高(一斗/KONDO RACING)選手をうまく一発でオーバーテイクができました。シケインの飛び込みに関しては、クルマも僕のドライビングも良かったかなと思います。
── スポット参戦で3大会4レースを戦いました。参戦が決まり、自身で立てた目標にどこまでアプローチできたと思いますか?
平良:スーパーフォーミュラデビューイヤーと言うんですかね、こうやってスポットで出させてもらいましたが、最初は本当に不安がいっぱいで。体力的にも持つのかとか、予選一発しっかりアタックできるのかとか、今思えば簡単なことなんですが、心配事がいっぱいありました。ですが、チームの皆さんのご協力や先輩たちのアドバイスのおかげで、体力的なところだったり走りの面も先輩ドライバーたちと遜色なく走ることができて本当に良かったと思います。
── 今後に向けて、参戦実現も含め、スーパーフォミュラにおける今後の意気込みを改めて聞かせてください。
平良:まだ来季の話はわからないですが、絶対に(話が)来ると思って、今回のレースの反省会もします。次に走るのであれば、鈴鹿のオフシーズンのテストなんですが、その準備もしながら(来季以降の)シートがあればいいなと思います。がんばります!
── では、最後に。今一番興味・関心のあることは何か、教えてください。
平良:最近、毎朝家にいるときはアサイーボールを自分で作ってます。果物をたくさん入れて、スムージーみたいなものですが、非常に腸内環境が良くなって、身体の調子も良くなる感じがします。アサイーボールは、もともと昔から好きなんです。兄が毎朝作ってたんですよね。それを見てちょっとずつ食べていたんですが、今またブームが起きてるようですよね。
── お肌の調子も良かったりして?
平良:お肌の面に関しては、堤優威先輩が美容に詳しいので(笑)。いろいろなんか毎日パックしてるのかなぁと思いながら見てます。
文:島村元子
島村 元子
日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。
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