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モーター スポーツ コラム 2024年10月9日

復活のトプラク!ルーキーのブレガは王座争いを最終戦に持ち越せるか? | FIM スーパーバイク世界選手権 2024 第11戦 エストリル プレビュー

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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FIM スーパーバイク世界選手権 2024 第11戦 エストリル

FIM スーパーバイク世界選手権 2024 第11戦 エストリル

で開催されることになった2024年シーズンは9月の3ラウンド開催の超過密スケジュールの後、2週連続のイベリア半島2連戦で決着します。今回は非常に重要なレースとなる第11戦エストリル(ポルトガル)。10月11日(金)〜13日(日)に開催されるレースのプレビューです。

大西洋に隣接するポルトガル有数のリゾートエリアにあるエストリルサーキット。かつてはF1やMotoGPのポルトガルグランプリの開催地として知られた約4.2kmのサーキットが第11戦の舞台となります。WSBKは2020年のコロナ禍のスケジュール調整で開催が復活。昨年は開催が無かったものの、今期予定されていたハンガリーでの開催が消滅したため、その代替開催地としてエストリルがまた復活しました。まさに困った時のエストリルといった感じですが、MotoGPを開催する近代的なサーキットと違い、クラシックな雰囲気漂うコースでの開催です。

この1戦は非常に重要です。まず、チャンピオン争いがここで決まるか、それとも最終戦・ヘレス(スペイン)まで持ち越しになるのか、その条件を確認しましょう。

第10戦を終えてチャンピオンの可能性を残しているのは、ランキング首位のトプラク・ラズガットリオグル(BMW)=414点、2位のニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)=375点、3位のアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)=333点の3人です。

1ラウンドで得られる最大得点は62点ですので、今回のエストリルのレースを終えて首位トプラク・ラズガットリオグル(BMW)からの得点差が62点以上に広がるとチャンピオンはラズガットリオグルで決定となります。第10戦終了時点でブレガは39点差、バウティスタは81点差ですから、両者ともにかなり崖っぷちにいます。

ただ、ラズガットリオグルは第11戦エストリルで全て優勝したとしてもブレガが全て2位に入れば得点差は52点となるため、自力でチャンピオンを決めることはできません。39点差という開きは最大得点が62点と大きいWSBKにおいては安心できるギャップではなく、不運なリタイアがあれば厳しいシチュエーションに転落してもおかしくはない条件です。

今季15勝という圧倒的な強さを見せたトプラク・ラズガットリオグル(BMW)は第8戦マニクールでの転倒による怪我で第8戦、第9戦クレモナと2ラウンド連続で欠場。ここで獲得できるはずの124点を失ってしまいました。怪我がなければ第10戦アラゴンでチャンピオンはすでに決定していたでしょう。ラズガットリオグルの欠場でまさかの展開となりました。

そこでチャンスが広がったのがニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)なのですが、WSBKルーキーでもある彼は強烈なプレッシャーにさらされ、ラズガットリオグルが欠場した6レース中に2勝しかマークすることができませんでした。その内1勝はスーパーポールレースですから、ブレガは勝てるはずのロングレースで1勝3敗となってしまったことになります。彼はルーキーであり、経験不足であることを考えればある意味仕方がないのかもしれませんが、ここで勝ち星をもっと多く重ねていれば流れはブレガに向いたかもしれません。

しかし、そうはいかず。さらにトプラク・ラズガットリオグル(BMW)が復帰した前戦アラゴンでもブレガは予選でポールポジションを獲得できたにも関わらず、レース1はスタート前にエンジントラブルで不運なリタイア、さらにスーパーポールレースでもレース2でもラズガットリオグルの後塵を拝することになり、13点差だった差が39点差に広がってしまったのです。ラズガットリオグル15勝に対してブレガは僅かに3勝。逆に勝利数を伸ばしたのは昨年のチャンピオン、アルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)だったことも、ルーキーのブレガのハートをズタズタにしてしまいました。

エストリルでの成績を見てみましょう。2020年〜22年の3年=9レースでトプラク・ラズガットリオグル(BMW)は2勝をマークし、9レース全てで表彰台を獲得。アルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)は9レース中ドゥカティに復帰した2022年だけ1勝をしています。

一方でニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)は2022年のスーパースポーツ世界選手権デビューイヤーでこのコースで初レース。レース1では3位表彰台を獲得したものの、2023年の開催が無かったため、過去に2レースしか経験していないコースになります。条件的にも経験面でもブレガは圧倒的に不利な立場にいるわけです。

とはいえ、2020年のエストリル初開催時にトプラク・ラズガットリオグル(BMW/当時ヤマハ)はキャリア2年目のシーズンにしてポールと2勝をマークしたという事実があります。ブレガはデータ面でも充分なものが揃った良い環境が与えられているドゥカティワークスマシンに乗っている以上、ラズガットリオグルのようなインパクトを残さなくてはならないのです。

ブレガにとって厄介なのはアラゴンで今季4勝目をマークしたチームメイトのアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)の存在。そしてアラゴンでWSBK初優勝を果たしたアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)にも先行されるとなると、逆転チャンピオンの条件はより狭まります。要するにブレガはここで勝たなくてはならないのです。プレッシャーは凄まじいでしょうね。

そして怪我の影響がどの程度まで残るか分かりませんが、トプラク・ラズガットリオグル(BMW)はしっかりとチャンピオン獲得の条件を整えたいレース。2027年以降のMotoGP参戦を本格的に検討しているとされるBMWにタイトルをもたらすことで、自身の将来も大きく開くことになるはずです。ラズガットリオグルのBMW移籍後初のチャンピオン決定の舞台となるのか、はたまたブレガとバウティスタがドゥカティの逆転3連覇に向けて底力を発揮するレースになるのか、エストリルは今季最も緊張感あふれる戦いになるでしょう。

文:辻野ヒロシ

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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