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モーター スポーツ コラム 2024年10月10日

篠原拓朗選手(No.65 LEON PYRAMID AMG)「本当に全部がうまく噛み合っていた」 | SUPER GT 2024 第6戦 SUGO【SUPERGT あの瞬間】

SUPER GT あの瞬間 by 島村 元子
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篠原拓朗(No.65 LEON PYRAMID AMG)

篠原拓朗(No.65 LEON PYRAMID AMG)

「あのとき、何があったの?」__ レースウィークの出来事、ドライバーに話してもらいたいと思いませんか? タフなレースを終えたドライバーに改めて話を聞く「SUPER GT あの瞬間」。2024年シーズンもレースの舞台裏に着目し、ドライバーの気持ちをコラムでお伝えします!

悪天候に見舞われた第6戦SUGO。スケジュールが幾度も遅延するなか、後方スタートから虎視眈々と表彰台を狙っていたのがNo.65 LEON PYRAMID AMG。ドライアップする路面を完全に味方につけてポジションアップすると、終盤は激しいトップ争いの末に鮮やかな逆転劇を披露。富士大会からの2連勝でランキングもトップに浮上した。タフなレースで奮闘した篠原拓朗選手が戦いを振り返る。

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── 第5戦鈴鹿が天候不良で延期に。結果、チームとしては第4戦富士に続いての2連勝となりました。改めて今お気持ちを聞かせてください。

篠原拓朗(以下、篠原):第4戦の富士は予選もポールポジションでしたし、決勝もレースをリードできていたので優勝はとてもうれしかったのですが、今回の第6戦のSUGOに関しては、予選が行われず(※1)、それも15位スタートだったので、まさか優勝できるとは思っていなくて、本当にびっくりとうれしさとが混ざっていますね。

※1:当日は天候不良により、予選が実施されず。代わって、朝の公式練習で記録したタイムによって、決勝スターティンググリッドが決定した。

── なぜ、今回は15番手からのスタートになってしまったのですか?

篠原:フリー走行(公式練習)で雨量が若干少なくなって、みんなタイムを出し始めたタイミングに、(65号車は)ちょうどピットに入ってしまいまして。もろもろ作業をしてピットを出る、というところで、タイミングが若干外れてしまったことが要因ですね。

── つまり、他車と同じようなタイミングでアタックしていたら、15番手ということはなかったのかも……そんな感じですか?

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篠原拓朗選手「本当に全部がうまく噛み合っていた」 | SUPER GT 2024 第6戦 SUGO【SUPERGT あの瞬間】

篠原:“かもしれない”というぐらいですね。どちらにしても、ブリヂストン勢の最上位が8、9位というところでしたので、どこまで上位を見込めたかというと、難しいところだったと思います。

── 決勝日はウェットコンディションながら、スタート前には雨が上がりました。 チームでは、どのようなレースをしようと話をしましたか?

篠原:SUGOは、もともとバトルというか抜きにくいコースですので、シリーズのことを考えても、「着実なレースをしてポイントを持って帰れるようにがんばりましょう」という話でした。

── 一方、 観客の皆さんが本当に辛抱強く冷たい雨のなかでたくさん待っていてくださいましたよね。

篠原:本当に。特に決勝日ですと、朝は雨量が強かったですしね。予選も、ギリギリまで(中止の)発表があるまでずっと待ってくださったりとか。スタンド席は傘がさせないと思うんですが、合羽を着てる方の姿が結構多く見えていました。感覚としては、“天候が操れたらな”っていうことがパッと思い浮かびました。レースも、決勝スタート時間を遅らせると天候が少しずついい方向に動いていくことを予報で見ていたし、それで決勝ができれば本当にいいなと思っていて、結果的には晴れ間も見えてきたり、どんどん雨も止む方向にだったので、決勝ができて本当に良かったと思いました。何より、皆さんに風邪をひいてほしくなかったし、最後まで見ててくださって本当にありがとうございます、という気持ちでした。

── ファンの皆さんに背中を押されたという感じで、天候も回復。その状況を見て、65号車としていい風が吹くのでは? という感じはしたのでしょうか?

篠原:それはわからなかったです。本当にいい方向に行ったらいいという気持ちはもちろん強くありましたが、それこそ、タイヤメーカーのいいところもそれぞれ分かれてますし、僕たちにとっては今回のレインタイヤが初実戦だったので、レース中は本当にドライアップするのがいいのか雨が降り続けてくれるのがいいのか、正直ずっとわからない状況でした。結果的にいい方向に行ったので良かったという感じですね。

── 不安要素もあるなかでスタートを切ったわけですね。そんななか、いきなり蒲生尚弥選手が1コーナーでコースオフ。あの瞬間はどんな気持ちになりましたか?

No.65 LEON PYRAMID AMG

No.65 LEON PYRAMID AMG

篠原:一瞬びっくりはしましたけど、(コースに)復帰してからのセクタータイムを見て圧倒的な速さだったので。ヒヤッとしたのは、本当にその一瞬だけだったと思います。

── その後、蒲生選手が見事な挽回の走りを続け、ピットイン前に3番手まで浮上しました。篠原選手としては、プレッシャーが大きくなったのではないですか?

篠原:いや、本当にそのとおりです。追い上げを見ててうれしい気持ちと裏腹に、多分僕に交代するときはドライタイヤになるでしょうし、変わる(交代する)ポイントの難しさであったり、ドライ(タイヤ)のペースだったり(を考えると)、多分すごくいいポジションでドライバーチェンジを行なってもらえるのがほぼ確実だと思ったときに、すごく緊張しましたね。ここで自分がミスったらマズいなと思ってました。

── タイミングとしては、もうそろそろピットインと思われるなか、レインボーコーナーでアクシデントが発生。FCYを経てSCになる直前にピットインしました。

篠原:もともとその付近でドライバーチェンジの予定でしたので、もう僕もずっとヘルメットは被ってスタンバイしていました。いつでも(交代可能)っていうタイミングのときでしたね。

── コース復帰後は実質の2位。SCが続くなか、どんなことを考えて周回していたのですか?

篠原:路面的にもやっぱり難しい状況でしたが、その少し前からドライタイヤで走っているクルマはいましたので、そろそろドライタイヤの方が(ペース的に)速くなるなということが感覚的にわかっていました。セーフティカー中は、とにかくタイヤを温めることだけを考えてましたね。で、隊列的にトップが見える位置で走れていましたので、トップを捕らえるためにスタートダッシュを決められるようにと、(タイヤの)温めをがんばっていました。

── リスタート後は、No.45 PONOS FERRARI 296との長いバトルが続きました。前を追うなかで、どう攻略しようと考えていたのでしょうか? 狙いを定めることはできたのですか?

篠原:そうですね。乗ってる僕としては、わりと一瞬だったんですが、あとからバトルをどれぐらいしていたのか周回数を聞いて、「結構長いこと走ってたんだな」あとから実感しましたね。

(路面が)だんだんドライアップしていく一方で、コーナーのクリップ付近ではまだ濡れてるコーナーがありました。チャンピオン争いも含めて着実にポイントを獲って重ねていきたいというなかで、オーバーテイクに関しては、リスクが多すぎるところを選ぶよりも確実に一回で仕留められるところをずっと探していました。もちろん、最初に追いついてすぐには抜きたい気持ちがありましたので、いろんなところで行ってみよう(仕掛けてみよう)としましたが、途中でチームからも「着実に行こう」と無線をもらいました。それで僕も一回リセットできたので、ああいう戦いができたかなと思います。結果的に、本当に一回でオーバーテイクできて良かったです。

── チーム監督はドライバーとしても経験豊富な黒澤治樹さん。今回のような難しい展開のなかでも強い戦いをするにあたり、その存在は大きいですか?

黒澤監督(写真中央)

黒澤監督(写真中央)

篠原:ものすごく心強いですね。何かあったときに、もちろんチームの監督としての重要なポジションもありながら、ドライバーの思いだったりとか意見というのをものすごく理解してくださっています。レースの組み立てもそうですし、いろんなところで支えていただいてます。

── その後、後続とも差がつきました。今回は不確定要素の多いレースでしたが、どのあたりで優勝できると思いましたか?

篠原:実際は、チェッカー受けてからやっと(勝利の)実感が湧いた形でした。コースの濡れてる部分とかそういう不確定要素が完全なドライ(コンディション)よりやっぱり多いので、本当に着実に走り切ることだけを考えていました。途中で一回、本当にトップなのかなと思って、チームにも「トップなんですよね?」と聞いてしまったりしながら(走る)、という部分もありました。一応、目の前にいるクルマは全部抜かなきゃと思って抜きましたが、最終確認じゃないですけど、ちょっと不安になって(苦笑)。

── チェッカーフラッグを受けて、ようやく優勝を感じ取れたということですが、ファイナルラップではどんな気落ちでしたか?

篠原:ファイナルラップでは、ちょうどGT500クラスのトップの車両が来てましたので、そのタイミングを合わせてチェッカーを受けられたらと。もうそれ以外はあんまり……普通に、本当に普通に走り続けてるなかで、チームからも「多分、この周にGT500のトップが来て、多分一緒にファイナルラップになると思うよ」と聞いたので、ただただ普通に走りながら、そのタイミング(チェッカー)を待つという感じでした。

── 振り返ると、今回は15番手からあっという間にトップへと浮上し、いい形でピット作業を終えて、さらにワンチャンスで前のクルマを抜き……と、まるで“絵に描いたような”戦いができたと思います。どこに勝因があったと考えますか?

No.65 LEON PYRAMID AMG

No.65 LEON PYRAMID AMG

篠原:勝因はすべての流れにありますかね。本当に流れがすべてと噛み合ったと言うか……。前半の蒲生選手の走りは皆さんが見てくださってたら絶対わかっていただけると思いますし。また、レインからドライアップするあいだもずっと速かった。ブリヂストンタイヤさん、バッチリのタイミングでドライバーチェンジを判断してくださったチーム、ミスなく出してくれたピットクルーの皆さん、その後のドライタイヤのパフォーマンスもそうです。本当に全部がうまく噛み合っていたと思います。

── 富士に続いての連勝で、ついにシリーズランキングトップへ浮上しました。ランキングNo.2 muta Racing GR86 GTとは15点差です。次戦オートポリスに向けての意気込みを聞かせてください。

篠原:そもそもシリーズチャンピオンを獲るためにレースをやっていますので、ここに来たからと言って、特別意識を変えちゃいけないと思っているんです。もう、今までどおり一戦一戦を着実に、自分たちができる最大限の仕事をすることを目標にがんばります。同じくフルウェイトのライバルもたくさんいるので、がんばらないといけないですが、変に特別感を出さず、普通にがんばりたいですね。今の流れの良さだったら3時間の長いレースでも、何かしらで味方についてくれるんじゃないかなという気持ちも持ちながら、オートポリスに向けて自分ができる準備をしていきたいなと思ってます。

── では、最後に。今一番興味・関心のあることは何か、教えてください。

篠原:カメラですかね。タイミング的には牧野(任祐)選手と一緒のタイミングで始めました。それこそ、ふたり一緒に新幹線乗ってるときに、「カメラ、楽しいからやろうよ」って言って始めたんです。もう、レースもカメラも任祐のほうがすごいとこへ行っちゃってますけど(笑)。

カメラは好きですね。ミラーレス(カメラ)だけじゃなくて、iphoneでも写真を撮っていろいろしたりしています。そういうのが最近は楽しいですね。(スピード)全開で走っているクルマを撮るのはちょっとまだ難しくて、なかなか手が 出せてないですけど、ピットロードだったりピット作業だったりとか。GTエントラントのテストのときにもちょっと撮ってみたりとかしていました。カメラを持って行かないレースウィークなら、iphoneで撮ってちょっとレタッチしてSNSに上げたりしてますね。何が楽しいって言われると難しいけど、なんか楽しいです。

文:島村元子

島村元子

島村 元子

日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。

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