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今季は残り3ラウンド!新人ブレガにとって重要な1戦が始まる | FIM スーパーバイク世界選手権 2024 第10戦 アラゴン プレビュー
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ負傷によりチャンピオン獲得の雲行きが怪しくなったトプラク・ラズガットリオグル(BMW)
世界のスポーツバイクメーカーが市販車のNo.1を争う「FIMスーパーバイク世界選手権(WSBK)」。2024年シーズンも残すところあと3ラウンドとなりました。9月は4週で3ラウンド開催という慌ただしいスケジュールが組まれているのですが、第8戦マニクール(フランス)でランキング首位のトプラク・ラズガットリオグル(BMW)が負傷。第8戦と第9戦クレモナ(イタリア)を欠場したという、大波乱の後半戦になっています。過密スケジュールの9月を締めくくるレースの舞台はモーターランドアラゴン(スペイン)。今回は9月27日(金)〜29日(日)に開催される第10戦のレースプレビューをお届けしましょう。
今季15勝という圧倒的な強さを見せたトプラク・ラズガットリオグル(BMW)のチャンピオンはほぼ確実!?と誰もが思っていたと思いますが、2ラウンド連続の欠場でその雲行きは怪しくなってきました。第9戦クレモナではマーカス・レイテルベルガー(BMW)を代役に立てたBMWですが、さすがに2週連続のレースということもあり、9月24日(火)の執筆時点ではラズガットリオグルの出場に関する情報は入ってきていません。この過密スケジュールの中での大怪我は彼とBMW陣営にとって非常に厳しい状況を生み出しています。
第10戦アラゴンに彼が出場できるかどうか、出場できたとしてもどこまで結果を残せるか次第でチャンピオン争いは大きくストーリーが変わってきます。ただ、風向きはニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)の方向に吹いているのは確かです。
しかしながら、第9戦クレモナではブレガにとっての大波乱が発生。なんとドゥカティのプライベートチームから参戦する元MotoGPライダーのダニロ・ペトルッチ(ドゥカティ)がクレモナで3連勝を果たし、ニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)は欠場のトプラク・ラズガットリオグル(BMW)からランキング首位を奪い取るチャンスを失いました。
若干24歳のライダーに急に転がり込んできたワールドチャンピオン獲得のビッグチャンス。そのプレッシャーは凄まじいものでしょう。昨年スーパースポーツ世界選手権をドゥカティ・パニガーレV2で制し、他の候補生たちを押し除けてドゥカティワークスから最高峰WSBKへの出場を勝ち取ったブレガ。本来ならば最強のチームメイトで王者のアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)から多くを学ぶ1年だったはずでした。
しかし、バウティスタは昨年までの本調子ではなく、優勝は僅か2回。さらに第8戦で負傷し、2レースを欠場。ポイント差は大きく広がった状態の3位につけているため、ブレガはバウティスタを気にする状態ではないはずなのですが、こういう時こそ王者バウティスタに勝つことが重要になります。
そうそう、忘れてはいけません。彼はWSBKのルーキーライダーなのです。MotoGPから転向してきた経験豊富なルーキーとは訳が違うのです。ルーキーながらランキング2位につけ、後半戦はラズガットリオグルとの差を少しでも詰めていくことをテーマに邁進していたはずですし、グリッドの中では最も良い状態にあるライダーの一人だったはずです。しかし、初開催のクレモナ(イタリア)ではまさかの敗北でした。
数年前までブレガ同様にライジングスターと見られていたトプラク・ラズガットリオグル(BMW)は初開催のコースなど多くのライダーが未経験のコースで好結果を残してきましたが、ニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)のクレモナはそう上手くは行かなかったのです。ルーキーとして評価される1年から、チャンピオン争いのプレッシャーに勝てるかどうかを評価される状況に押し上げられた24歳。今回の第10戦アラゴンは彼の大きなターニングポイントになるレースと言えるでしょう。
アラゴンはグランプリ出身のライダーが多いWSBKではほとんどのライダーが経験を積んでいるコースです。そんな中、ここで勝てるかどうかは彼の評価を大きく左右することになるはずです。昨年のスーパースポーツ世界選手権ではパーフェクトな2連勝を達成していますが、過去のグランプリ時代の結果を見ると表彰台はおろかトップ5でのフィニッシュは一度もありません。得意なサーキットではないのかもしれません。
一方チームメイトのアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)は母国レースでもありますし、ドゥカティ在籍の3年間で昨年の2勝を含む7勝をマーク。ホンダ時代にも表彰台に登っています。MotoGP時代にも最高位4位を筆頭に多くのレースでシングルフィニッシュをしているサーキットです。ブレガにとって最大のライバルはチームメイトのバウティスタになるでしょう。
仮にトプラク・ラズガットリオグル(BMW)がアラゴンを欠場すれば、ほぼ確実にブレガはランキング首位に躍り出ることになるでしょう。ただ、アラゴンが終わると残り2ラウンド6レースになりますから、ラズガットリオグルが戻ってくる前にそのポイントマージンを50点近くは持っておきたいでしょう。現状13点差がついていますから、アラゴンでブレガが3連勝して62点を取れば、ラズガットリオグルに対して49点のリードを作ることができます。自分自身にも怪我やリタイアのリスクがあるわけですから、ブレガは3連勝がやはり理想です。
そんな彼のもう一人のビッグライバルになりそうなのはやはり3連勝したベテラン、ダニロ・ペトルッチ(ドゥカティ)、そして今季同じルーキーでありながら元MotoGPライダーのアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)も意気揚々とチャンスを伺うはずです。WSBK上位グリッドのメンツの中で最もトップカテゴリーでの経験が少ないニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)にかかるプレッシャーは想像するだけで恐ろしい。むしろ、トプラク・ラズガットリオグル(BMW)にアラゴンから復帰してもらった方がブレガは気持ちを楽に自分のレースができるのではないでしょうか。
24歳のイタリアンライダーが大きく成長を見せるのか、それともベテランに翻弄されるのか。今回に関しては誰が勝つか以上に、ニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)というライダーを注目すべきレースになるでしょうね。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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