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BMWのラズガットリオグル、破竹の13連勝でもはや誰も止められない? | FIM スーパーバイク世界選手権 2024 第8戦 マニクール プレビュー
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ今季15勝をマークしたトプラク・ラズガットリオグル(BMW)
市販車をベースにしたスポーツバイクレースの最高峰「FIMスーパーバイク世界選手権(WSBK)」は後半戦に入りました。第8戦はフランスのマニクールサーキットで9月6日(金)〜8日(日)に開催。およそ1ヶ月ぶりのレースとなりますが、ここから9月は3戦開催とシーズンのクライマックスに向けて一気に忙しいスケジュールになっていきます。今回は第8戦・マニクールのレースプレビューをお届けしましょう。
後半戦のスタートになった第7戦・ポルティマオ(ポルトガル)でも今季の勢力図はほとんど変わりませんでした。トプラク・ラズガットリオグル(BMW)がまたもや3連勝を飾り、今季すでに15勝目をマーク!アルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)、ジョナサン・レイ(ヤマハ/当時カワサキ)が過去に記録した12連勝を抜いて13連勝という新記録を達成することになりました。後半戦は折り返したばかりなのに、ライバルたちはもはやお手上げムードといった感じです。
MotoGPではドゥカティ、KTM、アプリリアなど欧州メーカーが上位を独占。市販車ベースのWSBKでは昨年までかろうじて日本メーカーがドゥカティに迫っていましたが、今年はBMWとドゥカティが優勝を争う構図に。北米のMotoAmerica(かつてのAMAスーパーバイク)も、オーストラリアスーパーバイク選手権もなどハイレベルな国内選手権でもドゥカティ・パニガーレV4Rがランキング首位に立っていますし、日本の全日本ロードレースJSB1000でもついにドゥカティに乗る水野涼が優勝しました。そしてドイツ選手権ではBMW M1000RRに乗るイリヤ・ミカルキクが1戦を残して年間チャンピオンを獲得。BMWは海外の各選手権でも第2勢力となりつつあります。
一方、イギリスの英国スーパーバイク選手権(BSB)ではホンダとヤマハがチャンピオンシップをリードしている状況です。同選手権ではトラクションコントロールなどの電子制御が制限されていますし、全日本JSB1000ではヤマハがファクトリーチームでの参戦をしていますから、この2例は海外の多くのスーパーバイク選手権とは少し違う事情があると思います。そんな中で市販車ベースのスーパーバイク界隈における欧州勢の躍進はもはや無視できない状況になってきたと言えるのかもしれません。
BMWは国内でも全日本JSB1000や鈴鹿8耐で使うユーザーが増えつつあります。チームに聞いてもライダーに聞いてもBMWのポテンシャルはユーザーからの評判は非常に良いのです。
元々素性が良いベース車両に今年はついにチャンピオン経験があるトプラク・ラズガットリオグル(BMW)が乗りました。そのコンビネーションが開花するタイミングがあるだろうと予想した人は多かったものの、それどころか完全にシリーズを席巻というのは多くの人が予想できなかったことでしょう。去年のメーカーランキング4位(表彰台なし)という結果でしたから。
第8戦の舞台、マニクール(フランス)はこれまたトプラク・ラズガットリオグル(BMW)が大好きなサーキットの一つです。WSBKにステップアップ前のスーパーストック世界選手権時代(2016年)に初表彰台を獲得したのもここでしたし、2019年のWSBK初優勝もマニクールでした。その初優勝から5シーズン15レースで8勝。2020年を除きレース1のポールポジション獲得は4回とデータ上も彼が圧倒的に強いコースなのです。
FIM スーパーバイク世界選手権 2024 第8戦 マニクール
ただ、ドゥカティもこのコースは強いというデータがあります。マニクールでドゥカティは49回の表彰台記録があり、これは全メーカーでも圧倒的にトップの記録なのです。昨年のマニクールでもトプラク・ラズガットリオグル(当時ヤマハ)とアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)が優勝を獲得しました。
今季、ドゥカティワークスからWSBKにデビューしたニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)は昨年スーパースポーツ世界選手権でマニクール2連勝を飾っていますし、ルーキーイヤーでの2勝目が期待されます。一方でチームメイトの後塵を拝しているチャンピオン、アルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)は今季4レースの無得点レースがあるためランキング3位。ただ、前戦モストでは2レースでファステストラップも記録しているのでまだまだ速さは衰えていないと言えるでしょう。バウティスタの来季残留も無事に発表されて、これでメーカートップチームは大型移籍が相次いだ今季のラインナップのまま、来季に繋がっていくことになります。
今季、日本メーカー勢で頑張っているのはアレックス・ロウズ(カワサキ)。絶対的エースのジョナサン・レイが抜け、繰り上がりエース格となったロウズは今季2勝を含む9回の表彰台を獲得。実はカワサキ移籍後の2020年からの5シーズンで最も好成績のシーズンを過ごしています。すでにベテラン格の年齢になったロウズはアッセンから5ラウンド連続で1度は表彰台に乗っています。
一方でなかなか成績が上がってこないのがWSBKのスーパースター、ジョナサン・レイ(ヤマハ)。37歳になり、今季のグリッドではバウティスタに次ぐ2番目の年齢。地元の英国ドニントンパークではなんとか表彰台に乗ったものの、それに続く表彰台が見えてきていない大不振です。今季は前半戦のレース間のインターバルが1ヶ月ごとと長かったのですが、ここからは7週で5ラウンドというレースウィークの連続になりますから、なんとか元王者に浮上のキッカケを見出して欲しいものですね。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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