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モーター スポーツ コラム 2024年7月17日

スズキワークスが23年ぶりに8耐参戦! | 鈴鹿8耐2024 プレビュー

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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Team SUZUKI

Team SUZUKI

今年で45回目の大会を迎える「鈴鹿8時間耐久ロードレース」(通称、鈴鹿8耐)は2024年7月21日(日)に決勝レースを開催。年間でFIM世界耐久選手権を放送する「J SPORTS」はもちろん鈴鹿8耐も生中継します。見どころが満載の鈴鹿8耐をいくつかの話題に絞ってプレビューしていきましょう。第3弾は「23年ぶりとなるスズキワークスチームの参戦」です。

近年、唯一のフルワークスチームとして参戦してきた「Team HRC with 日本郵便」が独走してきた鈴鹿8耐に、今年は新たにメーカーワークスが増えることになりました。そう、スズキワークス「Team SUZUKI」の復活です。

スズキは「Team SUZUKI CN Challenge」というチーム名で、実験車クラスとなる「EXP」(=エクスペリメンタル)クラスにスズキGSX−R1000R CN仕様でワークス参戦します。

ワークスチームの名称である「Team SUZUKI」が鈴鹿8耐に登場したのは2001年が最後でした。当時は鈴鹿8耐のメインクラスだったSB(=スーパーバイク)クラスが750ccから1000ccに移行する過渡期であり、各メーカーが4ストローク1000ccのMotoGPマシンの開発に注力をしていた時期であったため、全日本や鈴鹿8耐の活動は「ヨシムラスズキ」などのプライベートチームに託されることになったのです。

「Team SUZUKI」はMotoGPが主体のレース活動になり、23年間もの長きに渡って鈴鹿8耐にはフルワークスは出てこなかったわけです。ただ、2021年からはFIM EWCをレギュラーチーム「SERT」と日本の「ヨシムラ」が合併して一つのチームとなり、スズキ本体がスズキGSX−R1000Rのワークスマシン開発を担うことになりました。

しかし、スズキは2022年をもってMotoGPからの撤退を発表。FIM EWCからの撤退も表明し、モータースポーツの開発部署は完全に解体されてしまったのです。開発に携わっていた従業員の皆さんも別の部署に移動となってしまい、スズキが本格的にレース活動を再開するのはあり得ない状況になっていたのです。

それが春の東京モーターサイクルショーで鈴鹿8耐に参戦することを突然発表したのは本当に衝撃的でした。そのプロジェクトを企画し、会社の許可を取り付けたのが元MotoGPプロジェクトリーダーの佐原伸一氏。ご自身も熱狂的なバイクレースファンである佐原さんはスズキのレースの灯火を消さないため、未来に繋げていくためにこの企画を遂行したのでした。

ただ、一度撤退してしまったレース活動を再開するには大きなメーカーだけに相応の理由が必要です。そこでテーマとして掲げられたのが「サステナブル燃料」を使用しての鈴鹿8耐参戦でした。

「Team SUZUKI CN Challenge」のCNとはカーボンニュートラルの意味で、40%バイオ由来のFIM公認サステナブル燃料を使用します。フランスのエルフ社の燃料ですでにスーパーバイク世界選手権などで使われているバイオ燃料なのです。FIM世界耐久選手権では規定されていない燃料であるため、クラスは「EXP」(=エクスペリメンタル)クラスでの参戦になり、選手権ポイントはつかない形です。

FIMは2027年を目標に100%カーボンニュートラル燃料の導入を目指しているため、未来のモータースポーツを見据えたスズキとしての挑戦とも捉えることができますね。

ただ、モータースポーツの専門部署は解体してしまっているため、かつてのフルワークスチームのようにはいきません。スタッフは社内の公募などで集められ、かつてモータースポーツ担当だった従業員、社内レーシングクラブチーム「浜松チームタイタン」のメンバーも多く含まれており、レース経験者が多いのは一つの強みと言えます。

マシンはFIM EWCで「YOSHIMURA SERT Motul」が走らせるスズキGSX−R1000Rがベースになっています。実験車の「EXP」クラスであるため、サステナブル素材で作られた新パーツを装着して色々と自由に開発できることになります。6月上旬のテスト走行ではフロントウイングを装着したスズキGSX−R1000Rが登場。EWCクラスやSSTクラスでは市販車と同じフォルムである必要があるためウイングの装着などは不可ですが、EXPクラスなら色々と試すことができます。

EXPクラスはこれまでル・マン24時間レースなどで小規模なコンストラクターがレギュレーションに合致していない車両で参加したことがありますが、メーカーとして参戦するのはレアケース。4輪のスーパー耐久シリーズで実験車クラスに次世代燃料車でメーカーが多数参加し盛り上がっている例もありますから、スズキの挑戦は今後の2輪耐久レースの方向性に一石を投じることになるのかもしれません。

ライダーラインナップはFIM EWCで「YOSHIMURA SERT Motul」のライダーを務めるエティエンヌ・マッソン、2年ぶりの鈴鹿8耐となる濱原颯道、そしてスズキを良く知る生形秀之のトリオ。次世代燃料の実験を兼ねているとはいえ、スズキGSX−R1000Rの耐久レースでのポテンシャルは高いので、参戦するからには順位にもこだわって取り組んでいくとのこと。

メーカー開発チームだけに7回ピット8スティントの燃費走行をトライしてくるかもしれないですし、逆に8回ピット9スティントのハイペース走行でトップ5圏内を狙ってくるのかもしれません。戦略はどうなるのかも含めて、その挑戦を楽しみにしたいと思います。

文:辻野ヒロシ

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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